3.11に奏でた「希望の音色」 コンサートに臨んだ子どもたち/大槌町
<ニュースエコー 2023年3月22日>
東日本大震災の発生から丸12年を迎えた3月11日、岩手県大槌町で開かれたコンサートに3人の子どもたちが出演し、バイオリンの演奏を披露しました。震災発生当時、生後6か月や2歳だった子どもたちが奏でる「希望の音色」を取材しました。
3月11日、大槌町安渡で開かれた「槌音(つちおと)メモリアルコンサート」。地震発生時刻の午後2時46分、慰霊施設の前では町出身のトランペット奏者やサックス奏者らが「ふるさと」を演奏し、犠牲者へ鎮魂の調べを捧げました。この日は町出身の3人の子どもたちも出演していました。本番を前に公民館の控え室でバイオリンを練習するのは大槌学園8年生の山口凛々さんと佐々木悠衣さん、そして6年生の澤舘優里佳さんです。
3人は被災地の子どもたちを音楽で支援しようと2014年に始まった「大槌子どもオーケストラ」に所属しています。
山口さんと佐々木さんは震災が発生した時、2歳でした。山口さんは町の中心部・上町にあった自宅を失いました。
(佐々木悠衣さん)
「震災の時は2歳で何もできない状態で、亡くなった人を弔う日に演奏ができて、自分も役に立てているのかなと思うことができる」
澤舘さんは当時生後6か月で、震災の1週間ほど前に初節句を迎えたばかり。その時の記憶はありません。
(澤舘優里佳さん)
「去年初めてこういう(演奏の)機会に出させていただいた時に、感動を与えられることがすごくうれしかった。今回も頑張りたい」
3人はそれぞれの意気込みを胸に直前まで練習を重ねました。

3月11日のコンサート本番 奏でた希望の音色
そして迎えた本番、3人の演奏が始まると地区の住民らおよそ50人がその音色に耳を傾けました。
演奏が終わると、会場からは3人の演奏に大きな拍手が送られました。
会場には澤舘さんの母・嘉美さんの姿がありました。12年前のあの日、生後6か月だった娘の成長を肌で感じていました。
(澤舘嘉美さん)
「当時は自宅にいて、地震が来たので近所の人たちと裏山に、おんぶして(逃げた)。(12年経過して)不思議な感じがする。町の人たちに元気を与えられたり癒したりできたらいいなと思う」
(澤舘優里佳さん)
「笑顔で見てくれる人もいて、自分たちが弾いた曲をどういう風に受け止めているのかなと思いながら弾いた。3.11は多分辛いことだけど、12年経った今、自分たちの弾いた曲を忘れないでほしい」
当時2歳や生後6か月だった子どもたちは12年経った今、町に未来への希望の音を届けられるようになりました。その音色は、町で育つ子どもたち一人ひとりの姿こそが被災地の未来そのものであり、希望であると感じさせる、優しく前向きな音色でした。