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古民家を文化の拠点に 移り住んだ男性 古本屋 開業へ/陸前高田市

<ニュースエコー 2023年2月8日>

 震災後、岩手県陸前高田市に移り住んだ男性が、古民家を利用した古本屋の開業を目指しています。震災復興で街の再生が進む中、古い物を大切にし、文化に触れる場を作りたいと奮闘中です。
 懐かしさを感じるガラス製のグラスや食器が並んだ木製のテーブルの奥で和やかに歓談するのは、市の内外から集まった6人の若者たちです。1月15日、陸前高田市竹駒町の古民家で「古いものを楽しむ」をテーマにしたイベントが開かれました。
 この古民家にアンティーク感が漂う理由は…

「遺品整理で出てきた物“しばり”で作るっていうのもかなりこだわってやっています。皆さんが使っている椅子とかテーブルとか、いま飲んでいるコップとかポットもそうですね。お菓子を入れているのとかも全部が遺品整理、家財整理で出てきたものです」

 イベントを主催したのは震災後、陸前高田市に移住した越戸浩貴さん(37)です。

(越戸浩貴さん)
「やっぱり古いものって誰かが残さないと打ち捨てられていくだけだなっていうのをいろんなレベルで見てきて。この10年陸前高田っていうまちで。それは物質的なものであれ、物じゃないものであれ、関係性みたいなものとか」

 東日本大震災が発生した2011年、久慈市出身の越戸さんは岩手大学大学院に在学中でした。
 大学の仲間たちとともに陸前高田市を中心に復興支援活動を行った越戸さんは、2013年に陸前高田市に移り住みました。現在は市から空き家バンクの運営や移住定住支援を委託されるNPO法人「高田暮舎」の副理事長として活動しています。

(越戸さん)
「これが今、私たちが使っている空き家バンクに掲載している物件ですね、はい」

 壁に貼られた40を超える空き家の写真。越戸さんたちが管理する空き家の一部です。

(越戸さん)
「空き家問題っていうのは基本的には少子高齢化、都市部への人口の集中っていうのが背景になっていて、戻ってくる人がいないんですよね。生まれ育ったお家だったり、お父さんお母さんのお家っていうのがそのまま誰かが継ぐっていうことのないことが多いんで」

 空き家の管理をする中で越戸さんは、「空き家問題」というネガティブな言葉で空き家をひと括りにされてしまうことへの違和感を持ちました。

(越戸さん)
「一軒一軒のお家に入ってみると丁寧に使われていた家だったり、丁寧に使われている物だったりとかあって、やっぱり誰かが大切にしてきたものなんだなっていうのをすごい感じるわけです。それが空き家って言葉に一緒くたにされて、『問題だ』、『壊せ』みたいな話とかになっているっていうのは、やっぱり切ないなっていうのはすごく感じていますね」
古本屋のオープンへ準備を進める越戸さん

築150年超の古民家を古本屋に
「古いものに目を向ける」


 沿岸の陸前高田市に珍しく雪が積もったこの日、越戸さんは横田町にある1軒の家を訪れました。

(越戸さん)
「こちらのお家も空き家になっていて、いま住む人を探しているお家なんですけども、ぼくらが古物の販売や引き取りみたいなのをしているので、きょうはここにあるもので売ったり使ったりできそうなもの探しに。引き取りの作業になります」

 人が住んでいないとは思えないほどきれいに掃除された家。越戸さんはスタッフの木津谷亜美さんと各部屋を回り、物品の確認をしていきます。

「わー、めっちゃいい!めちゃめちゃいいですよ」
「今までで一番立派なんじゃない?」
「しかもきれいですね」

 家の中からは古いミシンやアンティークな服や家具など、思い出の詰まった様々なものが発見されます。こうして引き取られた物品はある場所へ集められます。

(越戸さん)
「まだ作りかけのところもあるんで本当はもうちょっとかっこ良くなってから見せたいところもあるんですが、ここが玄関ホールで。『山猫堂』は古本屋なんですよ」

 「山猫堂」は築150年を超える古民家を越戸さんが借り上げて作りました。

(越戸さん)
「本に囲まれた空間にしたいなって思っていて、こういうのを作っているんですけども」

 本を手に取ることが減った時代だからこそ、手に取りたくなるような空間を作りたいと越戸さんは考えています。

(越戸さん)
「まず本屋があって、初めてそういう文化活動みたいなこととかそういうのがまちで花開いていくんだろうなと思って」

 陸前高田市に移り住み、復興やまちづくりに携わってきた越戸さんだからこそ感じたことがあります。

(越戸さん)
「震災があって、災害があって、新しいものを作っていかなきゃないっていう特性はあるんだなって思いつつも、意識的に残さないとなくなるなってすごく感じたんですよ。誰かだからまちづくりをする上で残すっていうことに、その古いものに目を向けて軸を置く人間がいてもいいんじゃないかなっていうふうに思っていて」

 越戸さんが思い描くのは、「山猫堂」の本に囲まれた空間に人々が集まって、自由に過ごしたり、アート制作など文化的な活動をしたりして活用してもらうことです。

(越戸さん)
「自分だけの大事なものをこういう文化的なものから摂取して、自分だけの大事なものにしていけるんだっていうような、なんかそういう一助になればっていう感覚があります」

 古い物を大切にし、文化に触れる場所を作り、そこに集う人たちが新しい文化を発信する。越戸さんの夢が詰まった古本屋「山猫堂」は3月初旬にオープンします。
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