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3年ぶりの「大槌まつり」 郷土芸能に打ち込む若者/大槌町

<ニュースエコー 2022年10月5日>

 岩手県大槌町で9月、3年ぶりに「大槌まつり」が開かれました。郷土芸能に彩られたまちに、幼いころから参加を続ける若者の姿がありました。
 9月16日から3日間にわたって開かれた「大槌まつり」。新型コロナの影響で中止が続きましたが、今年、3年ぶりの開催が実現しました。2つの神社の合同例大祭である「大槌まつり」は江戸時代から続くとされる大槌町の秋の一大行事です。神輿とともに町を練り歩くのは郷土芸能。今年は12の団体が参加しました。
 「城山虎舞」は町内に5つある虎舞団体の一つです。メンバーの中に、幼いころから参加を続ける一人の若者がいます。
 小林海嵩さん、24歳。大槌町で生まれ育ちました。

(城山虎舞 小林海嵩さん)
「(虎舞を始めたのは)物心がついた時から。父親が(虎舞を)やっていて。本格的には小学1年生から。15~16年になるのかな」

 本番を10日後に控えたこの日の練習には、小さい子どもから大人までおよそ40人が集まりました。小林さんは子どもたちに踊りを教えます。

(小林さん)
「自分たちが継いでいく中で、『昔のほうがすごかった』ではなく、自分たちがやる虎舞がすごいんだ(と思われるよう取り組んでいる)」

 城山虎舞の坂本信幸会長は小林さんの成長と活躍を見守ってきました。

(坂本信幸会長)
「感慨深い。(成長して)教える立場になった。頼もしい存在。先頭を切ってがんばってくれると思う。人一倍(虎舞が)好きっていうのもあるのだと思う」

 子どもたちの練習が終わると、こんどは大人たちが自分の芸を磨く時間です。
 練習は夜遅くまで続きました。
(小林さん)
「教えているだけでは自分のステップアップにならない。自分より上の世代に見てもらいながら(練習している)」
虎舞など数々の郷土芸能がまちを彩った

祭り本番・活気づくまち 郷土芸能が人々の胸を熱く


 大槌まつり当日、小林さんは久々に活気づいた町を見て胸を弾ませます。

(小林さん)
「小さい子から大人まで全員集まってお祭りができるのは久しぶりで本当にうれしい」

 神輿のほか、虎舞、鹿子踊、神楽に七福神…大槌町自慢の郷土芸能が連なります。秋晴れの下繰り広げられた圧巻の光景。舞い手も見る人も心から祭りを楽しみ、胸を熱くしました。

(見物客)
「涙が出る。若い人から活気をもらえる。(私も)がんばらなくちゃと思う」
「お祭りは最高の楽しみ。にぎやかになってみんな元気が出る」
「きのう大阪から来た。素晴らしいの一言。若い人、子どもたちにずっと受け継がれていくというのが目に見えてわかる」
(参加者)
「震災のあたりから参加している。大槌の人は祭りが好きな人が多い。3年なかったので久しぶりにできて楽しい」

 大槌まつりには「門打ち」という文化が受け継がれています。それぞれの団体がお世話になった家々に出向き、芸能を披露して回ることをいいます。家には親せきや知人も大勢集まり、時には庭を越えて家の中で舞が繰り広げられることもあります。
 祭りのクライマックスは「神輿渡御」。川を渡る神輿と担ぎ手を多くの人が川岸から見守りました。
 盛り上がりが終わるのをみんなが惜しみながら、今年の「大槌まつり」は無事、幕を閉じました。
城山虎舞 小林海嵩さん

「格好良い」姿を次の世代に 祭りの力も再認識


 大役を終えた城山虎舞の小林さん。「大槌まつり」の価値を再認識していました。

(小林さん)
「まつりはこの町に必要だと思った。小さい町で人口も少なくなってきている中であれくらいの人を(まつりは呼べる)。次の世代にどうにかつないでいかなければと思う」

 もちろん、自らの芸も磨いていきます。

(小林さん)
「自分の踊りはまだまだだなと。来年はもっと踊りこんでいきたい」

 東日本大震災の津波は大槌町に甚大な被害をもたらしました。城山虎舞も道具のほとんどを流されましたが、活動が途絶えることはありませんでした。それは虎舞が、郷土芸能が、シンプルとも言える魅力を持っているからです。

(小林さん)
「なんでだろう…。たぶん好きだから。踊りがうまい人を見ると格好良い。憧れて、どんどんうまくなりたいと思う」

 まちを一つにする郷土芸能の力。小林さんは「格好良い大人」の姿を子どもたちに受け継ごうと、虎舞に情熱を注ぎます。
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