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3年ぶり開催の「けんか七夕」 伝統をつなぐ若者たち/陸前高田市

<ニュースエコー 2022年8月10日>

 山車を激しくぶつけ合う岩手県陸前高田市の夏の伝統行事「けんか七夕祭り」が7日、3年ぶりに行われました。祭りの再開に向けて奮闘したのは伝統を未来へつなぐ、若者たちでした。
「よーい、はじめー」
 陸前高田市気仙町の今泉地区で900年前に始まったとされる伝統行事、「けんか七夕祭り」です。去年、おととしは新型コロナウイルスの影響で中止となったため、3年ぶりのお披露目となりました。

(市民)
「去年、おととしは小さい山車が回って歩いたんですけど、今年はこういう大きいので。良かったと思ってます」

 けんか七夕は「かじ棒」と呼ばれる丸太を取り付けた山車同士を激しくぶつけ合うのが特徴です。
 2年前、祭りの中止が決まったときは、地域の人たちに少しでも祭り気分を味わってほしいと、保存連合会がリヤカーを利用した小さな山車でまちを練り歩きました。感染拡大防止に気を配った、精一杯の祭りのかたちでした。
3年ぶりにまちに山車の姿

3年ぶりの「けんか七夕」 祭りの準備に多くの若者が


「よいやさー、よいやさー」

 そして今年はかさ上げされたまちを3年ぶりに山車が練り歩きます。
 祭り会場で目立ったのは20代の若者たちです。
 6月、本番のおよそ2か月前、地区のコミュニティセンターに住民が集まりました。山車に付ける「アザフ」と呼ばれる和紙の飾りを折ることから準備が始まります。

 2台ある山車のうち1台をデザインした陸前高田市の大谷一真さん(21)です。幼いころから祭りを見てきましたが深くかかわるのは初めて。「アザフ」の色にはある思いを込めました。

(大谷一真さん)
「やっぱりいま戦争でウクライナの人たちが困っていて、自分たちも何かこう応援できるかなと思ってウクライナの国旗をイメージしてデザインしました」
ベテランの指導で山車を組み上げる

山車を組む~藤づる、かじ棒 若者が技術を継承 ベテランにも刺激


 本番まで3週間。山車を組む作業にも20代の若者が集まりました。保存連合会の佐々木会長も目を細めます。

(気仙町けんか七夕祭り保存連合会 佐々木冨寿夫 会長)
「この若いのがいいよね。だからこっちも頑張るよね」

 積極的に集まる若者の存在は、震災を乗り越え祭りを続けてきた保存連合会のメンバーを後押ししました。
 次々と組み合がる山車。若者たちはどんどんのめり込んでいきます。

 市内の山林に笑い声が響き、何やらにぎやかですがターザンごっこではありません。山車づくりのメインとなる「藤切り」と呼ばれる作業で、山車を補強するためのフジを伐採するのです。

(小野田未樹さん)
「ベテランの人ほど角度とか。そういうのをちゃんと考えて引っ張んないと難しいっすよね」

 半日かけて伐採したのは山車1台分の藤づる。

「そーら、そーら」
「ねじれ、ねじれ」

 藤づるが乾いて固くなる前に山車に巻き付けます。

「せーの、そーれ」

 まつりまであと5日、けんか七夕の重要な役割を担う「かじ棒」が取り付けられました。かじ棒は直径50センチ、長さ15メートルのスギの丸太。「けんか」の際、激しくぶつけ合うため藤づるでしっかりと補強します。

(大谷一真さん)
「やー、形になりましたね。楽しみです。自分たち、分からない部分もあるんで教えていただいて本当に嬉しいし、やっぱ自分たちもしっかり覚えないとまた次の世代とかに残していけないんで毎日勉強ですね」
「けんか七夕」復興のまちの夏を熱く

「この日のために頑張った」 情熱と笑顔がけんか七夕をつないでいく


 そして迎えた祭り当日、メンバーの表情は輝いていました。

「あ、そりゃ。あ、そりゃ」

 夜の帳が下り、明かりが灯された山車が「けんか」のために入場します。どちらの山車からも太鼓の音が響き、祭りは最高潮を迎えます。

「よーい、はじめー」
「うおー」

(大谷一真さん)
「この1日のために頑張っているんで、きょうはほんと最高の8月7日にできたかなと思ってます」
(小野田未樹さん)
「最後、涙流しちゃったんですけど本当ここまでやってきて良かったと思える日になりました。気持ちっていうか情熱でこれからもつないでいきたいと思ってます」

 津波も新型コロナも乗り越えてきた「けんか七夕」。この地に生まれた人たちの七夕への情熱を守りながら、若者たちは次の世代へと伝統をつないでいきます。
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