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新たな津波浸水想定で緊急避難場所を指定 浮かび上がった課題は/大槌町

<ニュースエコー 2022年8月3日>

 今年3月に岩手県が示した最大クラスの津波による浸水想定を受けて、沿岸部の自治体は緊急避難場所の見直しに取り組んでいます。新たに町内の7か所を緊急避難場所に加える計画の大槌町での取り組みと、見えてきた課題を取材しました。
(大槌町の防災担当者)
「どこの自治体の防潮堤も防潮堤の高さを超えたらばその防潮堤が壊れてしまう」

 6月、大槌町の大ケ口地区で津波の緊急避難場所について町と住民の意見交換会が行われました。現在、大ケ口地区は町の人口のおよそ1割にあたる1300人あまりが暮らしています。東日本大震災では一部の住宅が浸水被害を受けたものの、建物の流失といった大きな被害は免れました。しかし3月に県が示した最大クラスの津波による浸水想定では、地区のほぼ全域が浸水し大きな被害が出る可能性があるとされました。ところが地区の中には津波の緊急避難場所がありません。

(大ケ口団地自治会 松田弘会長)
「逃げても原野でトイレがない。雨風もしのげない。避難にも難色を示す住民の命をどう救っていくのか」

 自治会長の松田弘さんは、自主防災組織の責任者も務めています。今年1月、トンガ沖の海底火山の噴火で津波警報が出された際、緊急避難場所がないため凍える寒さの中で松田さんは明かりもない山間のこの場所に住民を避難させるしかありませんでした。

(松田会長)
「そういう所に避難させて地域の人たちの命を救わなければならない。とりあえずは一次避難だということで自分を納得させながら一次避難はさせています」
新たに緊急避難場所に指定される高台の施設

新たに7か所の緊急避難場所・・・指定される施設が望むことは


 大槌町の平野公三町長は緊急避難場所がない地区の現状を重く受け止め、新たに整備する意向を示しました。

(平野公三 大槌町長)
「逃げる方々、安心したいということがありますので(避難場所の整備を)きちんと計画的にこの地区については進めなくてはならない」

 県が示した想定によりますと大槌町では最悪の場合、人が住む平地の6割以上が津波で浸水する恐れがあるとされました。町内は防潮堤など計画されていたハード面の整備が完了したばかりですが、新たな脅威への備えを急ぐ局面に立たされています。

(大槌町防災対策課 三浦徹也さん)
「高台移転といいますか、(大震災で)浸水がなかった所に住宅を再建された方が非常に多いので、そういったエリアに今回浸水区域が広がったことがすごく説明に苦慮するだろうと心配したところです。丁寧に説明していかなくてはならない」

 町は緊急避難場所の見直しを行い8月、新たに町内の7か所を指定する方針を示しました。新たに指定される吉里吉里地区の高台にある高齢者施設。東日本大震災の時、施設は緊急避難場所ではありませんでしたが、近隣に住む多くの住民が避難してきました。施設はこれまでお年寄りや体が不自由な人のための福祉避難所の役割を担ってきました。新たに緊急避難場所に指定されることで一般の避難者と介助が必要な避難者に加え、施設に入所している高齢者が一時的ではあれ一緒になることが想定されます。そんな中、施設が今最も心配しているのが感染症への対策です。

(堤福祉会 芳賀潤 総合施設長)
「雨だとか風が強いだとか雪が降っている中で、老人ホームの中の生活空間の中に(避難者を)入れない対策とか、ゾーニングの話とかそういう対策をしていくときに不足なものはきちっと行政の役割として支援してほしいし、そのへんの想定もこれからだと思います」
大ケ口団地自治会 松田弘会長

新たな浸水想定を地域住民はどう生かすか


 新たに緊急避難場所の整備が必要とされた大ケ口地区。町が整備を検討している場所は大雨の際に土砂災害の危険があります。しかし地区の中に他に適した場所がない中で、自治会長の松田さんは新たに示された浸水想定をこう捉えています。

(大ケ口団地自治会 松田弘会長)
「この想定を地域の方々が自分のこととしてもっと津波に対しての警戒心を持っていただけるだろうと、むしろ私はプラス方向に考えて(防災)活動しています」

 緊急避難場所の見直しと合わせ、災害から命を守るために住民には高い防災意識とすばやい避難行動が求められています。
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