大槌高校の「はま留学」 多様性が地域活性化のヒントに/大槌町
<ニュースエコー 2022年7月20日>
岩手県立大槌高校は昨年度、全国から生徒を受け入れる「留学制度」を設けました。今年度は6人の留学生が入学、町で新しい生活を始めた留学生を取材しました。
大槌高校の1年生60人が集まる教室です。この中に岩手県外から大槌高校に入学した6人の留学生がいます。留学生たちは都道府県の枠を越えて地域の公立高校へ入学する「地域みらい留学」という制度を使って大槌町にやってきました。大槌高校は昨年度から留学生の受け入れを始めていて、大槌の海にちなんで「はま留学」と呼んでいます。2期生となるの留学生の出身地はさまざま。福島や東京、神奈川、遠くは大阪などです。
(東京都出身 藤本峰己さん)
「兄が長野の白馬村に(留学に)行った。自分も高校に行くときは地方に行ってみたいなと思い、海も(近く)スキーもできる(大槌が)良いなと思い決めた」
(大阪府出身 小林葉七さん)
「中学3年生になり高校を選ばないといけなくなったとき『はま留学』を知り、行ってみたいなと思い決めた。朝起きて窓を開けたら海が見えているのが素敵だと思う」
大槌高校で国内留学の窓口や教育支援を担当する、魅力化推進員の三浦奈々美さんは、全国で教育支援を行うNPO法人から派遣されています。三浦さんは「はま留学生」が学校全体にもたらす影響に期待しています。
(大槌高校魅力化推進員 三浦奈々美さん)
「県外から多様な背景や考え方を持っている子たちが入学することによって、もっと学校の中に多様性が生まれ、地元の子たちもお互いに学びあえると学校の環境が面白くなっていくのでは」
大槌高校は東日本大震災前の入学者は例年100人を超えていましたが、震災後は減少傾向が続き、2019年度には42人まで減少しました。町は生徒の減少に歯止めをかけるため、全国から新入生を募る「はま留学」の新設に踏み切りました。1か月あたりの下宿代と食事代を合わせた10万円の半分、5万円を負担して留学生を支えています。

下宿生活を送る「留学生」 地域の活力にも
はま留学生の生活の拠点は眼下に船越湾が広がる「タカマス民宿」です。他愛もない会話が飛び交う夕食の時間は、互いを知る大切な時間です。
「(週末のご飯作りは)当番があって土曜日は3人。豚キムチ!美味しかった」
「(部活は)野球部のマネージャーをしている。活気のある部活だったからお手伝いしたいな(と思った)」
朝と晩、生徒たちの下宿生活を見守る大槌高校の支援員・東谷いずみさんです。
(留学生の支援員 東谷いずみさん)
「私自身大槌町出身で、ここに来てよかったなと思ってもらえるように地域との接続をしたい。地域の人と留学生がつながることで地域の人も元気になる、大槌町って良いなと再認識するきっかけになる」
はま留学生にこれから過ごす大槌町でやりたいことを聞きました。
(福島県出身 今関光汰さん)
「つい最近(町内の)ジビエの見学に行った。もう少しジビエについて知りたい。大槌の中でできることがあったらやりたいと思う」
(埼玉県出身 矢作梨さん)
「地元と比べて町にアートがない。自分でイベントを企画して町にアートを増やしていきたいなと思う」
震災の深い傷跡から立ち上がり、前に進んできた大槌町。町全体が教育に力を注ぎ、「はま留学生」や大槌高校の活動が地域全体を巻き込んでいく姿は、復興や少子高齢化が進む地域の活性化のヒントとなる可能性を感じさせます。