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震災時の食事はこうだった ~災害食・備えのススメ/釜石市

<ニュースエコー 2022年5月18日>

東日本大震災で被災した人たちは長引く避難生活の中で食事にも苦労しました。あの時、人々は何を食べていたのか、そこにはどんな課題があったのかを振り返ります。さらに災害用に備蓄する食品の種類や調理のポイントについて、東日本大震災を経験した管理栄養士に聞きました。
「撮ってんのは・・・200カットくらいだと思ったんだけどな」

 岩手県釜石市で写真館を営む、写真家の菊地信平さんです。東日本大震災で被災した菊地さんは、家族5人で5か月間に及ぶ避難所生活を経験しました。
 菊地さんは避難所で出された食事を写真に撮っていました。

「記録で撮ったわけじゃなくて、東京にいる息子に見せようとしてただそれだけで。それがたまたま食事だった」

 震災が起きた3月11日の夕食は、道に止まったトラックから譲り受けたという魚の干物でした。ガレキの中の木材を燃やして焼き、避難した人々で分け合って食べました。

 翌日からほぼ1か月にわたって、おにぎりとわずかなおかず、パンとジュース、といった食生活だったことが記録されていました。

(写真家 菊地信平さん)
「栄養じゃなくてとにかく腹がふくれるような。(最初の頃は栄養はあまり考えていない?)ぜんぜん考えていない。あまりじゃなくて考えてないです」
管理栄養士 千葉忍さん

栄養士が指摘 東日本大震災の教訓は


 東日本大震災の避難所で提供された食事の写真からは、どんな課題が見えるのでしょうか。釜石市内のデイサービス施設で管理栄養士を務める千葉忍さんに、菊地さんが撮った避難所の食事の写真を見ていただきました。

(管理栄養士 千葉忍さん)
「いわゆる炭水化物。本来であれば主食になる部分しか、最初は食卓にのってこなかったことがとてもよく分かります。発災後1か月くらいしてお弁当が登場してくるんですけども、野菜や果物が極端に少なくて、簡単にお腹がいっぱいになる一方、体調管理をしていくのには難しい内容が多い印象を受けます」

 震災当時、釜石市内の病院の栄養士として入院患者や職員の食事の確保に苦労した千葉さん。あの大災害から学んだこととは。

(千葉忍さん)
「生活の中にある災害対策。特別切り離して考えるものではなくて、来てはほしくないけれどもまた同じような場面があるかもしれないという危機感というかイメージする力を持っていることが、それぞれに必要かなと思います」

 釜石市は市内に19か所ある拠点避難所に、缶詰パンなどの非常食を備蓄しています。しかしこれらの非常食は避難すれば必ず提供されるものではなく、あくまでも緊急用です。

(釜石市防災危機管理課 川﨑浩二課長)
「味ですとか食感ですとか、普段食べなれている食べ物とはまったくレベルが違いますので、できましたら避難される方が常にご自身の非常食を準備していただきたい」
災害時活用できる食材を使いながらストック

災害食メニューを紹介~普段の食材をローリングストック


 家庭にある食材で簡単に作ることができる「災害食」のメニューの一例を、栄養士の千葉さんに教えてもらいました。

「(アナウンサー)それではひと品目、切り干し大根を使ったメニューです。千葉さん、よろしくお願いします」

「まずひと品目、どこのご家庭にもある身近な切り干し大根を使ったメニューです。こちらのポリ袋に切り干し大根とお茶と塩昆布をいっしょに入れて馴染ませる。20分経つともう召し上がることができます」

 続いて切り干し大根とトマトジュース、ツナ缶を使ったイタリアンサラダの作り方です。

「トマトジュースは100cc程度。先ほどのお茶と同じ程度をイメージしてください。きょうは缶詰のツナ缶を使っています。オイルタイプのもので、ひと缶オイルごとすべて入れてください。空気を抜いて袋の口を閉じます。20分ほどで味が馴染んで食べられるようになります」

 ポリ袋はレトルト食品と野菜などの食材を入れ、袋ごとお湯であたためて温かい料理を簡単に作ることができる「お湯ポチャレシピ」に使うこともできます。

「(アナウンサー)切り干し大根と塩昆布和え、いただきます。塩昆布の程よい塩気と切り干し大根のうま味、お茶にぴったり。あっさりしていて食べやすいです。続いてツナと切り干し大根のイタリアンサラダです。うま味が切り干し大根に染みわたっていてやわらかいですね。美味しいです」

 災害食を準備する際に、どういったことがポイントとなるのでしょうか。

(千葉忍さん)
「皆さん災害食というと特別なものと捉えがちですが、あくまで日常的に食べているものであることが大切だと思います。日ごろから自分が食べているもの、馴染んでいるものを少し多めにストックしておく。そして日常的に食べながら次に買い足したもので補充をしていく、いわゆるローリングストックという考え方を提唱しています」

 災害の時だけ食べる特別なものを用意するのではなく、日常の食生活の中に上手に取り入れていく。災害食の備え、意識してみてはいかがでしょうか。
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