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まちの未来を見つめて ~輝く移住者/陸前高田市

<ニュースエコー 2022年5月4日>

 震災後に岩手県陸前高田市に移住し、地域の魅力を発信している女性がいます。新しいまちづくりにかける思いとそうした移住者を支える人々を取材しました。
「なにかな~?ピカピカしてるね」

 種坂奈保子さん(35)。愛知県出身で2011年に陸前高田市に移住してきました。地元企業の「陸前高田ほんまる」に勤め、デザイナーとしてマルシェなどのイベントを企画したり、商店街組合のメンバーと共に買い物マップを作ったりして地域の魅力を発信しています。
 この日は翌日に控えたマルシェの準備をしていました。

(種坂奈保子さん)
「震災や震災前のまちを知らない子どもたちもたくさんいるので、その子たちにとってのふるさとになる。今その土台作りをしている意識はある」

 種坂さんがはじめて陸前高田市を訪れたのは2007年、大学3年生の夏休みでした。

(種坂さん)
「(友達が)『けんか七夕』に行くというので、一緒に連れて行ってくれて。帰りに消防団の屯所の前を通った時に、消防団のおじさんたちがバーベキューしてて混ぜてくれて」

 それから4年後、東日本大震災が発生しました。

(種坂さん)
「陸前高田壊滅というのが(テレビで)何度も流れて。消防団のおじさんたち大丈夫かなというのは一番思いました」

 仕事を探していたタイミングとも重なり、すぐに宮城県石巻市のボランティア団体に所属しました。
 その年の秋には仮設商店街「陸前高田未来商店街」の立ち上げに関わるため陸前高田に移住。商店街事務局ではSNSを活用してまちの現状を発信しました。

(種坂さん)
「お店の人たちは自分から辛いって言いづらいので、私が代わりにこの人たちはこんなに頑張っているんです、なにかしたいっていう気持ちがあったら力をかしてくださいとブログで発信して」

 活動を通して支援の輪が広がり、手ごたえを感じた種坂さん。

「まちの仮設商店街の人たちが見ている未来を私も一緒に見たい」

 関心は、次第にまちづくりへと移ります。
移住者のための冊子

移住者を官民でサポート~人口減少に一定の歯止め


 種坂さんのような移住者を支えている人たちがいます。
 陸前高田市は移住・定住の専門スタッフを配置していて、きめ細かな対応をしています。

(陸前高田市観光交流課 村上知幸課長)
「丁寧に寄り添って、その人その人の段階、移住に対する考え方に合わせた形で相談業務を親身になって行っている」

 陸前高田市の人口は震災前、2万4246人でしたが、その後は年々減少し、現在は1万8166人です。転入と転出の推移を見ると震災の年は1800人あまりが陸前高田市を離れましたが、その後は転入、つまり移住者も500人前後で推移し、年によっては転入が転出をわずかに上回ることもありました。

(陸前高田市観光交流課 村上知幸課長)
「(陸前高田市は)海があります。清流・気仙川がすぐそこに流れています。そして背後に霊峰・氷上山。冬、雪が降らない。降っても1日もあればとけてしまう。生活がしやすいと移住者やボランティアで入ってきた方は話します」

 市から業務委託を受け、移住者や移住を考えている人の対応に当たるNPO法人・高田暮舎(たかたくらししゃ)です。高田暮舎は2017年、復興まちづくりに力を注いでいた6人が集まって設立しました。
 オンラインで移住希望者の相談に応じたり、移住者と地域住民の交流会を開催したりしています。

(高田暮舎 移住コンシェルジュ 高橋瞳さん)
「自分自身が移住者として来たので、聞いていたことと違うとかがあると、もうここにはいなくてもいいかなという思いにつながると思うので、ちゃんと相手の思いを受け止めて、それに応えるのは大事にしたい」

 高田暮舎は移住者が安心して暮らせるようこんな冊子を配布しています。

(リポート)
「高田暮らしの手引きは、ライフラインから香典の相場まで、移住してからでないとなかなか知ることのできない地域の情報が詰まっていると移住者からも好評です」

 また移住・定住の促進に空き家を役立てる仲介活動もしています。空き家バンクのこれまでの利用者は35世帯46人。多くは20代から40代で、地方でのんびり暮らしたいという関東からの移住者です。
 空き家バンクに登録され、今はシェアハウスとして活用されている物件に案内してもらいました。

「お邪魔します」

(移住した太田海さん)
「家で料理しているとコンコンと勝手口から野菜を持ってきてくれたりというのが本当に当たり前の生活。のんびりとした生活が送れているんじゃないかな」

 先輩移住者として高田暮舎の活動に参加したこともある種坂さん。移住者同士のつながりについてこう語ります。

(種坂奈保子さん)
「新しく移住してきた子がいると、連れてきてネットワークを一気に作る飲み会が(コロナ禍前は)あったりとか、自分が辛かった時期とかにすごく助けてくれたし、悩みを聞いてくれた大事な仲間ですね」

 地元の男性と結婚し、2019年には女の子を授かりました。

(種坂さん)
「(子供が)大きくなった時にこの町から出てもいいと思うんですけれど、出た時に田舎が嫌いだから出たんじゃなくて、私の地元もおもしろいまちだよって外でも言ってもらえるようなまちにしたい」

 ずっとわくわくできるようなまちづくりを。種坂さんは母親として、1人の市民として、陸前高田市の未来を見つめます。
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