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山林火災から5年 焼け跡の復旧は震災復興とともに/釜石市

<ニュースエコー 2022年4月13日>

 2017年5月、岩手県釜石市で発生した山林火災は400ヘクタール以上を焼く大災害となりました。それから5年。林地の復旧事業は東日本大震災からの復興とともに進められ、今年の3月で終了しました。復旧の歩みと関わった人々の思いです。
「当協議会は今回の開催をもちまして廃止とさせていただくことでよろしいでしょうか」

 3月29日、火災で被害を受けた山林の復旧事業に取り組んできた釜石市の対策協議会が廃止されました。復旧が終了した山は釜石市から所有者のもとに戻されました。

(釜石市 野田武則市長)
「多くの方々の災害に対する支援のお気持ち、思いが発揮された場所でもあったと思う」

(リポート)
「私の後ろに見えているのが釜石市の尾崎半島です。5年前の2017年5月、この半島の山林で大規模な山林火災が発生しました」

 2017年5月8日、釜石市の尾崎半島で発生した山林火災は乾燥と強風の注意報が出る中で瞬く間に燃え広がりました。自衛隊の大型ヘリも出動して消火活動が行われ、出火から2週間後に鎮火が宣言されましたが、スギやアカマツなどの山林およそ400ヘクタールを焼失し、被害額は7億4500万円にのぼりました。
 焼失面積は、この前年1年間に全国で発生した約1000件の山林火災で失われた面積の合計を上回るという、大きな被害でした。
山林所有者 佐々木廣さん

山の所有者は震災被害を受けた漁業者~復旧には経済的課題が


 山林火災から5年となるのを前に、被害があった山では土地の整備や植林などの復旧事業が3月末で終了し、焼けた切り株のそばでは新たな木々が育っています。

(釜石地方森林組合 高橋幸男参事)
「ここのエリアの方々は東日本大震災の被害も受けた中で、プラス数年後に財産である今から売れそうな木が被災してるところを間近に見ているので、その人たちの思いを考えれば私たちが何とかしなくてはならない、山主さんに代わってという思いが強くなった」

 山の復旧にあたっての大きな課題は、所有者の経済的な負担でした。所有者の多くが東日本大震災の津波で被害を受けた漁業者です。山林火災の復旧は通常、国と県が所有者に対して最大で経費の68パーセントを補助しますが、残りの負担を強いられる所有者から不安の声が聞かれました。

(山林所有者)
「68パーセントでやっても将来的に採算が出るかと言えば難しい」
「補助制度は何の役にも立たない。後の事を考えてやっている。現在の焼けた木を処分しなくてはならない」

 さらに山林が海に面しているため、大雨が降った際に山から土砂や焼けた木が海に流れ出て、海の環境や海産物へ被害を与えることが心配されました。
 一刻も早い復旧が必要と判断した釜石市は、国の復興特別会計を使い所有者に代わって復旧を進めるという異例の決断を下しました。


(釜石市水産農林課 宮本祥子係長)
「公益的にも重要な森林でもあったので、所有者のみの負担ではかなり厳しい。それで市が実施主体になった。市が(山林火災からの復旧の)実施主体になることは今までなかった。その面では特殊だった」

(山林所有者 佐々木廣さん)
「海も守っていかなければならないから植林はしなければ」

 火災にあった山の所有者の一人、釜石市の佐々木廣さんです。スギやアカマツなどおよそ2万本が被害を受けた佐々木さんは、山の復旧を市に委託しました。漁業者でもある佐々木さんは森林と海の環境は密接に関わっていると感じています。

(山林所有者 佐々木廣さん)
「私たちの時代は(復旧は)自分でやらなければ補助が無かったらから。私たちは浜の景気がいいときは浜に助けられて生活できた。だけど温暖化で様々な災害が起きる時代になってきて、山と海が一体にならなければ被害にあう」
被害木を活用したスタンド席

震災復興で支え合う心~広がった被害木の活用


 復旧作業では極めて異例の取り組みも行われました。被害を受けた木の活用です。これまで、表面が焦げただけで中身が無事であっても火事にあった木は縁起が悪いと敬遠されてきました。ところが逆に被害を乗り越えたたくましい復興のシンボルとして、2019年のラグビーワールドカップの舞台となった釜石鵜住居復興スタジアムのスタンド席や家具の材料に使われるなど活用の輪が広がりました。

(釜石地方森林組合 高橋幸男参事)
「東日本大震災を経験して困っている地区や場所を助けようという思いが強くなったのでは。大丈夫なんだから使ってあげましょうという声が届いたのは事実。そういう背景の中で使っていただいたと思う」

東日本大震災の復興とともに進められてきた山林火災の復旧ですけれども、植えられた苗が伐採できるまでに育つには、これからさらに40年から50年という長い年月がかかります。
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