被災地でインターン 課題解決の力に/宮古市
<ニュースエコー 2022年3月23日>
岩手県外の大学生が被災地の企業や団体を訪問し、課題の解決に取り組もうという取り組みが行われました。彼らの目から見る被災地の今と、地域課題解決の糸口とは。
3月1日、岩手県宮古市にあるNPO法人の事務所に、若者2人の姿がありました。「宮古の仕事を知って欲しいっていうこと?」
「その一つに第一次産業があるってこと?」
「そういうこと」
「ん~それもあるね」
彼女たちは県外からオンラインで参加する学生とともに、宮古市内で行われる「みやっこタウン」という子ども向けのイベントの内容について話し合っています。
震災後の2016年に始まったこのイベントは、「みやっこタウン」という架空の町が舞台。そこに市内の企業が出店し、訪れた子どもたちが買い物や職業体験を通して仕事のやりがいや大切さを学んでもらうものです。新型コロナウイルスの影響で、2020、2021年は中止となりましたが、2022年は5回目の開催を目指しています。
2人はこのイベントの開催目的や課題について話し合っていました。そんな2人はともに県外から来た大学生です。宮古に縁もゆかりもありませんが、被災地での課題解決に取り組もうと参加しました。
(宇都宮大学1年 保土沢結梨さん)
「実際に来てみて震災も絡んでいるということで、震災に関してもどんどんみやっこタウンに(要素を)入れていきたいなという気持ちは強くなっていきました」
(常磐大学3年 山口真太朗さん)
「最初は『みやっこタウン』っていうイベントは、こんなイベントかなっていうイメージしか無かったんですけど、そのイメージが確定できるところからその課題点まで見つけられてきて。まだ(イベントには)参加してはいないですけど、こんな感じのイベントなのかなっていう風に、なんとなく話を進められることができています」
2人は県内のNPO法人が企画したインターンシップを利用して宮古に来ました。このインターンシップは、学生が県内の経営者などを訪れ、課題の解決を一緒に考えるというもので、宮古市では5つの企業や団体が受け入れています。受け入れる側は県外の若者の意見を取り入れることで課題の解決に新たな視点で取り組むことができます。
2018年に始まり7回目となる今回は、2月中旬からおよそ1か月半の日程で行われ、学生は5日間の隔離期間を経て被災地での研修に励んでいます。
(インターンシップのコーディネーター NPO法人みやっこベース 早川輝さん)
「実際(震災から)11年経って街も復旧復興してますし、その影を感じないこともあると思うんですけど、そうではなくて、街のいろんな人が色んなチャレンジをしてここまで来ていると、そういうことを感じてもらえたんじゃないかなと思います」

被災地の今を知ったインターン生 アイデアを生かす地元経営者
宮古市内の印刷会社、「花坂印刷工業」です。この会社では1人の男子学生がインターンシップに参加していました。石﨑雄斗さんです。群馬県出身の石﨑さんは、東京の早稲田大学に通う2年生。被災地を訪れるのは初めてです。
(早稲田大学2年 石﨑雄斗さん)
「正直宮古が、こんなに発展していて魅力がある地域だとは思っていなくて、実際にこっちに来てから色々商店街とか見る中で、たくさん魅力を持っている地域だなっていう風には感じています」
花坂印刷工業は東日本大震災の際、2階まで津波に襲われました。
(花坂印刷工業 花坂雄大社長)
「津波で建物が流されようとするんだけど、印刷機のせいで1階の部分が重たくなって固定されてたから、会社自体が印刷機の重さと波の力でねじれたみたいな感じになって、建物がねじ切れたみたいな感じで」
花坂印刷工業の花坂雄大社長です。被災地に観光客を呼び、地域経済を活性化させるため、若者のアイデアを活用しようと学生を受け入れました。今回、花坂さんが石﨑さんに課したのは、食や観光など地域の情報を集めたポータルサイトの制作です。印刷会社が持つ地域のネットワークを生かして、市内企業の魅力発信を目指します。
「地域課題がこんなものだよっていうのはいい感じで伝わってるし、理解してくれてんのかなってのは私も共通で思っていたので、そこからそれをどう料理してくか、一緒にやっていきましょう」
「はい」
花坂さんにアドバイスをもらいながら、石﨑さんは課題に取り組みました。3月17日。石﨑さんは、市内の経営者やほかの学生を前にインターンの成果を発表しました。
(石﨑雄斗さん)
「宮古市の食べて欲しい、知って欲しいは今すぐ伝わるというものを(コンセプトに)置いています。こういうコンセプトを作ったことで、事業に軸を与えることができたと思っています」
宮古の魅力が詰まったポータルサイトの構築に向けて、ターゲットの選定などを担った石﨑さん。しかしこれはまだ構想段階。10月の完成に向けて、花坂さんが石﨑さんの思いを受けつぎます。
(花坂雄大社長)
「今回のプロジェクトっていうのは、地域の付加価値っていうのを高めていくものだと私自身が信じているので、しっかり作ったこの一歩目っていうのを大事にしながら、いいものにしていければいいかなと。その結果、我々が暮らす宮古市っていう地域がもっと暮らしやすい豊かな地域になるように応援をしていきたい」
被災地で経営者に刺激を受けながら地域の課題解決へ取り組んだ石﨑さん。今回の経験を東京でも伝えていきたいと語ります。
(石﨑雄斗さん)
「地域の人に寄り添う姿勢は、すごく刺激を受けたなって思うのと、悲しい経験をしたけど、新しく何かを始めて活動して動いてる人がいるっていうのは、是非東京に持って帰りたいことかなっていう風に思います」
震災から11年を迎えた被災地で躍動する若い力。県外の若者の視点が地域にどのように還元されるのか。今後の展開に注目です。