東京から移住 新人カキ漁師奮闘中/陸前高田市
<ニュースエコー 2021年11月10日>
岩手県陸前高田市で、東京から移住した男性が一人前のカキ漁師を目指し修業中です。先輩漁師からは地元のカキ養殖の未来を担う存在として期待されています。
さわやかな秋空のもと、陸前高田市の広田湾に浮かぶイカダでカキの手入れを行っているのはカキ漁師の須田大翔さん(23)です。この日は朝から、須田さんが「親方」と呼ぶカキ養殖歴20年以上の藤田敦さんらと一緒に、ロープにつるされたカキをいかだから引き上げ、お湯にいれて付着物を取り除く作業をしていました。
(須田大翔さん)
「開放感があって仕事していて気持ちいい」
東京都出身の須田さんは、大学卒業後の去年4月に陸前高田に移住し、藤田さんに師事してカキ養殖の勉強をしています。
須田さんが藤田さんと出会ったのはおととしの7月。東京で開かれた漁業就業支援フェアの場です。大学卒業後の就業先を須田さんは探していました。一方、藤田さんは後継者を探すためカキ養殖の魅力を伝えようとフェアに参加しました。
(藤田敦さん)
「とにかく人材が欲しいから、来る人来る人全部こういうことをやっていると説明した」

地元漁師は減少~希望の星に
これから旬を迎えるのは濃厚でクリーミーなマガキで、先月東京の豊洲市場で行われた初競りでは広田湾漁協が出荷したものが全国で最も高い10キロ5万円の値をつけました。しかし近年、東日本大震災や漁師の高齢化でカキ漁師が減少。須田さんが養殖を行っている小友地区では2011年度に31人いたカキ漁師が現在では須田さん含め10人にまで減ってしまいました。
貴重な新戦力となった須田さん。海での作業や作業小屋での選別作業などをもくもくとこなしていて、藤田さんは感心しています。
(藤田さん)
「まじめでいいじゃないですか。若者の生産者が増えたのが一番いい。若者がいるというのは港に活気あふれる」
須田さんは現在市内の市営住宅に一人で暮らしています。
部屋の中を見せてもらうと、サーフボードが飾られています。両親の影響で幼いころからアウトドア好きのサッカー少年だった須田さん。大学1年生の時友人に誘われサーフィンにはまり、さらに海が好きになりました。
(須田さん)
「もともと自然相手の仕事に興味があって職人の仕事に興味があった。収入も安定しているという藤田さんからの話もあった。ある程度収入得てから販売だったり加工品を作ったりしたい」
縁もゆかりもないこの地で藤田さんをはじめ地域の人たちに支えられてきた須田さん。日々の暮らしで中で強く感じることがあります。
「(震災で大切な)人を亡くされた人が多い。それでも前を向いて力強く歩んでいると日々感じている。何か自分がきっかけになって維持して発展していければ」

濃厚な味に安堵 カキを育てる喜び
漁師になって2年目の須田さんは、一人前になるため船を購入し、藤田さんなどからいかだとはえ縄あわせて13台を譲り受けました。
(須田さん)
「ありがたい話。責任しっかりやらないとなって感じる」
この日は須田さんが自ら育てたカキを選別する日です。
「カキが成長しているのかすごく気になって楽しみ」
去年6月から育ててきたカキを引き上げていきます。
「カキの形も大きさも良くてよかった」
引き上げたカキは作業小屋に運び大きさを選別していきます。自分が育てたカキを味見すると・・・
「濃厚でおいしいです」
引き上げたカキはいったん海に戻し、もう一回り成長させ出荷に備えます。
今年出荷するカキだけでなく来年の準備も同時並行で行います。地域自慢の海産物をゼロから生み出す作業です。
「自分で仕込んだタネを消費者に届けられる。一から作り出すのがやりがいを感じる部分」
陸前高田に移住して1年半。須田さんは地域の人たちとのつながりを大切にしながら小友地区の漁業の未来を支えるべく奮闘しています。