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移住者がつなぐ 特産・米崎りんご/陸前高田市

<ニュースエコー 2021年10月13日>

 岩手県陸前高田市の特産品「米崎(よねさき)りんご」。高齢化などで生産者が減少する中、震災後に移住した若者が新たな担い手として地域の名産を守ろうと奮闘しています。
「イナダのピリ辛焼き、ひっつみ汁」

 10月6日、陸前高田市の小学校で地元の食材を使った給食が子どもたちに提供されました。地元で水揚げされたイナダやひっつみ汁などの料理に子どもたちは大喜びです。そしてデザートは市内の米崎町特産、米崎りんご。早生品種の弘前フジが皮付きで用意され、子どもたちは大きな口でかぶりついていました。

「すごく甘くてパリパリしていてとてもおいしかったです」
「こんなにおいしいリンゴを作ってくれた生産者さんにありがたいなと思いました」

 子どもたちにもなじみの米崎りんご。この日のリンゴは陸前高田市でリンゴの生産や販売などを行うNPO法人LAMPが用意しました。
NPO法人LAMP 松本玄太代表

米崎りんごを守る~メンバーはほぼ「移住者」


「おはようございます。雨です」

 市内の小中学校の給食づくりを一手に引き受ける学校給食センターにリンゴを持ち込んだのは、LAMP代表の松本玄太さん(44)です。

「きょうは皮ごとカットして食べていただくみたいなんですけど、やっぱりうちも皮ごと食べることをお勧めしてるので、子どもたちも給食で『リンゴってこうやって食べるんだ』っていうのに馴染んでもらえたらなと思います」

 海を望む高台に色づき始めたリンゴが実っています。

「(所有者が)なかなか手が回らないということで、最初ちょっとお手伝いくらいで入らせていただいていたんですけど、2016年に正式に全部借りてうちで全部管理するようになりまして」

 LAMPが管理するのは所有者の高齢化や仕事の都合などでリンゴづくりの継続が難しくなったリンゴ園です。

「大きい木は元々ここに植わった木だったんですけど、そういうのがもっとあったんですよ、いっぱい。でもやっぱり古い木っていうのはだんだん実の生(な)りも悪くなってきちゃうんで、それを切って、こういう若い木にどんどん植え替えをしていっている」

 2016年から本格的なリンゴづくりに取り組みはじめた松本さん。その翌年にLAMPを設立以来、植え替えた木は200本以上になります。

「時間になりましたので共有会議を始めたいと思います」

 LAMPのメンバーは現在6人。米崎りんごを守っていこうと集まった仲間たちです。

「今年はやっぱり、フジが特になんですけどちょっと小玉、あと変形、三角実と言われてるお尻が丸まってないリンゴが多いので」

 この日は生産管理を担当する村上計太さんから4月の低温の影響でリンゴの成長が良くないことが報告されたほか、学校関係や観光などの体験ツアー受け入れの予定を共有しました。

 メンバーのうち、陸前高田市高田町出身の村上さん以外は神奈川県や群馬県などからの移住者です。代表の松本さんも広島県の出身。震災復興のボランティアを経て、陸前高田市に移住しました。彼らにとって「米崎りんご」とは。

「やっぱみんなおいしいと思えるから、売ってもいいと思えるからみんなたぶん従事しているのだと思いますし、絶対なくならせたくないなと、せめてわたしたちが生きている間は」
「米崎りんご」の可能性を信じて

生産、販売、その先へ~「高いポテンシャル」持つ米崎りんご



 陸前高田市によりますと、米崎りんごの生産量のピークは1980年で296軒の農家が84ヘクタールを超える規模で栽培していました。しかし2015年には119軒、46ヘクタールと半分近くまで減りました。こうした現状が松本さんたちを米崎りんごの生産に駆り立てました。

「米崎りんごも非常に高いポテンシャルを持っていたり可能性を持っていたりするので、それをいろんな方法で引き出していけるんじゃないかなって」

 青空が顔をのぞかせたこの日、松本さんたちはリンゴの木の葉をむしり取る作業をしていました。

「やっぱ色づきには太陽の光が必要で、ちゃんと色づくようにちょっと回したり、あとかぶっちゃってる葉っぱを取って日当たりをよくしたりする作業ですね」

 生産や販売にとどまらず、農業体験の受け入れや米崎りんごの歴史などを伝える企画展の開催なども計画する松本さんたち。特産品継承の取り組みはこれからも続きます。
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