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観光振興の起爆剤に ~浄土ヶ浜遊覧船 復活へ/宮古市

<ニュースエコー 2021年9月29日>

 東日本大震災では奇跡的に被害を免れたものの、老朽化や採算面から運航を取りやめた岩手県宮古市・浄土ヶ浜の遊覧船。課題を残しながらも、復活への動きが進んでいます。
 県内有数の景勝地、浄土ヶ浜。鋭く尖った岩が季節ごとに違った表情を見せ、さながら極楽浄土のようと例えられます。しかし2011年3月11日、津波によってその姿は一変させられました。

(リポート 2011年3月19日)
「宮古市の景勝地、浄土ヶ浜です。こちらではパンフレットに載るような美しい景色が広がっていたのですが、津波によって大量のゴミが流されてきたのでしょうか。その美しい景観は失われてしまいました」

 浄土ヶ浜を海から巡る遊覧船も被害を受けました。当時、運航会社が保有していた3隻のうち2隻が被災。唯一沖合に避難し奇跡的に被害を免れた「第16陸中丸」を使って、震災からおよそ4か月後に運航は再開されました。しかし船の老朽化や利用客の減少で事業の継続が困難となり、今年1月、多くの人に惜しまれつつ、遊覧船事業はおよそ60年の歴史に幕を閉じました。

(宮古市 前田正浩観光課長)
「遊覧船に乗船した人の2割程度が宿泊につながっていました。そういうデータがありました。やはりその遊覧船が廃止になってコロナ禍もありますけど、(地域経済への)影響は大きいなと思っています」
新造船のイメージ図

遊覧船は観光の柱~「公設民営」で船を新造


 観光の大黒柱を失った宮古市。市内の経済への影響を最小限にしようと、去年10月、市は遊覧船の復活を決めました。

(宮古市 前田正浩観光課長)「まず宮古市には遊覧船が必要だというのは皆さんの大きな声でした。昔からの宮古の観光の素材をですね、もっともっと継続していきたい、そのためにはやっぱりその今の時代、市で作って民間に運営を任すという方法を考えたところでございます」

 これまで民間が運営していた遊覧船事業。今度は市が新たな船を建造し、ノウハウがある民間の指定管理者に運営を委託する方式をとることにしました。運航開始は来年7月の予定です。

 船の建造は今年8月に始まり、工程のおよそ1割が終了。今は船底の建造が行われています。ランニングコストも抑えるため、重さ19トン、乗客の定員は80人と、「第16陸中丸」よりコンパクトになります。

(船を建造~ティエフシー・小寺厳克取締役)
「この船は(錆びにくい)アルミでできているのが一つの特徴で、あとは船体が二つある双胴船になっております。遊覧される方の快適性を求めた形にしております」

 動き出した新たな遊覧船事業。浄土ヶ浜周辺の観光事業者からは期待の声が聞かれます。こちらのレストハウスは、新型コロナウイルスの影響で去年1年間の売り上げがおととしから4割から5割減少しました。今年は夏場の悪天候でさらに厳しい状況だといいます。遊覧船復活に大きな期待を寄せています。

(浄土ヶ浜レストハウス 島崎準さん)
「浄土ヶ浜に来るお客さんが増えるという事を前提に、浄土ヶ浜に来て頂いたお客様に対してお店としての新たな魅力発信ができる、あとはそのプラン、新たなプランを作るという事は今まで以上にやりたいと考えております」
浄土ヶ浜

新航路にも期待 クラウドファンディングを実施


 新しい遊覧船はこれまでの浄土ヶ浜近くの乗り場に加え、南におよそ3キロ離れた出崎地区にも発着場が整備される予定です。近くには広大な駐車場も設けられる予定で、ほかの地域と連携した観光振興が期待されています。

(出崎地区で道の駅を運営 シートピアなあど・佐藤廣昭社長)
「今度観光船が就航する事によって人が集まってくるという事で、非常に期待をしております。もちろん出崎地区のみならず、隣接する鍬ケ崎、あるいは観光船でつながる浄土ヶ浜なんかとの連携のイベントとかですね、いろんな事業もこれから必要になると考えております」

 一方で重くのしかかるのが船の建造費です。およそ2億2000万円が必要で、市はこの1割を寄付によって賄おうと、クラウドファンディングを行っています。

(宮古市 前田正浩観光課長)
「まだまだですね、第2弾、第3弾とファンディングしていきます。色んな条件、返礼品にも加えながら考えていきたいと思ってます」

 年内には運営を担う民間の事業者が決まり、来年7月の運航開始へ準備が進みます。コロナ禍で苦しむ観光業界を救う存在となれるのか、期待と同時に財政面にも注意しながらの船出となります。
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