震災を知らない世代へ ~伝承に取り組む中学生/陸前高田市
<ニュースエコー 2021年9月8日>
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市の中学3年生が、「震災を知らない世代」への伝承活動を始めました。生徒たちがつなごうとする思いとは。
(生徒)「地震・・・は何回か経験してるだろうから」
「したっけ?」
「してるはずなんで」
「あー」
9月3日、陸前高田市の高田第一中学校です。総合学習の時間に3年生80人が取り組んでいるのは、防災や震災の教訓を伝える活動です。
(生徒)
「津波の時ってさ、空なんか汚くなかった?わたしめちゃくちゃ空が黄色かった記憶があるんだ。茶色かった」
「俺はないな」
震災発生当時、生徒たちのほとんどはまだ4歳でした。記憶を呼び起こしながら体験を語り合います。中にはタブレットを操作しながら震災が発生した日時などを入力する生徒もいます。
(臼井昇汰さん)
「これは・・・紙芝居、絵本に出てくるおじいちゃんのキャラクター」
このグループは紙芝居や絵本を作って小学生など「震災を知らない世代」に教訓を伝えることにしました。

避難所、そして仮設住宅~被災者とともに歩んだ「第一中学校」
2011年の東日本大震災による津波で大きな被害を受けた陸前高田市。市中心部の高台にあるこの中学校には多くの人が避難しました。体育館はその年の8月12日まで避難所となったほか、3年前に撤去されるまで校庭には市内最大規模の仮設住宅が立ち並んでいました。第一中学校は被災者とともに歩んできた学校といえます。
おととしから生徒に配布されている学校独自の防災学習ノート、「まもるくんノート」です。生徒たちは入学以来、防災やまちの復興について学んできました。
熊谷広克校長は震災を「知ること」と同時に「伝えること」が大切だと考えています。
(高田第一中学校 熊谷広克校長)
「大きな被害を受けたまちなので、そこに住んでいる自分たちが被害の様子もよくわかるように。あとは10年を迎えてわかることの他に伝えていかねばならないということで、今その取り組みをしています」

祖父の背中を見て・・・伝える、高田の魅力も
紙芝居の原作を手がけた臼井昇汰さんです。
(高田第一中学校3年 臼井昇汰さん)
「この紙芝居を通して震災の怖さを伝えるというのもそうなんですけども、大きくは人と人とのつながりが大切なんだよっていうのを小学校の高学年の人たちに伝えられることを目標にして頑張っています」
臼井さんは2年前に病気で亡くなった祖父をモチーフに、紙芝居のストーリーを考えました。臼井さんの祖父、臼井佐一さんは自宅が被災し、災害公営住宅に入居後は自治会長としてコミュニティづくりに尽力しました。
(臼井佐一さん ※2016年9月取材)
「コミュニティったってなかなか難しい。だから作ろうとしてるけども」
そんな祖父の姿を見て臼井さんが感じたことは・・・。
(臼井昇汰さん)
「やっぱり人のためにどれだけ頑張れるか。外部の方との関わりにけっこう力を入れてたので、それこそ人と人とのつながりを頑張ってるじいちゃんだったので、自分もそうなりたいなとは思っていました」
もう一つのグループは仮設住宅の住民をテーマにした物語を作っています。
(菅野温大さん)
「小学生は震災を知らない世代にもなってくるので、その震災を知らない世代に震災のこととか、『バッパダンサーズ』さんのことも伝えていって、震災とどうやって共存してきたかっていうのを伝えるために活動しています」
「バッパダンサーズ」とは学校の校庭に整備された仮設住宅に暮らす女性たちを中心としたグループです。集会所で住民との交流活動を行って被災者の心のケアを行いました。ダンサーズについて調べるなどこれまで学んだことを通して菅野さんが伝えたいことは・・・。
(菅野温大さん)
「高田っていうのはすごいいいところがたくさんあるところなので、震災のことももちろん知ってほしいんですけども高田の良さとかどんな感じで復興してきたとか、その復興に関わってきた方々のこととかも知ってもらいたい」
よく晴れたこの日、授業を早々に切り上げ、卒業アルバム用の全体写真の撮影が行われました。卒業までの残りの日々も、震災を知らない子供たちに教訓を伝えるため、生徒たちの取り組みは続いていきます。