子育て支援で復興の先へ /陸前高田市
<ニュースエコー 2021年7月7日>
岩手県陸前高田市で、子どもを預かる託児サービスを始めた元保育士の男性がいます。子育て世代を支えること、未来を作る子どもを育むことで、復興の先の地域づくりを見据えています。
陸前高田市の田中大樹さん(34)。去年9月、託児サービス事業「一休3(いっきゅうさん)」を始めました。仕事やさまざまな行事のほか、親が買い物や美容室に行く時間なども気軽に利用して、「一休み」してほしいとこの名前を付けました。
(田中大樹さん)
「こういうサービスがあまりないという問題が陸前高田市にあったんだなと、改めて利用・ニーズがあって感じるので、もっと気軽に使ってもらえれば良いなと思って」
長崎県出身の田中さんは、福岡県や奈良県で幼稚園教諭や保育士として6年間働き、2019年4月に陸前高田市に移住して今年の3月まで地域おこし協力隊を務めました。

移住者の育児をサポート=復興支援に
一緒に遊んでいるのは「一休3」の利用者で田中さんと同じく県外から陸前高田市に移住した、山本ひろみさんの次男の慎ちゃん(5)です。
「楽しいですね。私も癒されています。子どもたちに」
「ヒロくんのどんなところが好き?」
「ぜんぶ!」
山本さんは、8年前に夫婦で陸前高田市に移住後、3人の子どもを出産し働きながら子育てしています。しかし、陸前高田市には保育園以外の託児施設やサービスがほとんどなく、緊急時の預け先に困っていました。
(山本ひろみさん)
「両親=頼めるおじいちゃんおばあちゃんがいない状態でどうしようかなというときに、田中さんの託児があったので、すぐ連絡をしてそのときに快く引き受けてくださった。いまコロナ禍ということで、今後出産を考えている方々で兄弟がいた場合、おじいちゃんおばあちゃんがいれば良いんですけど、パパがお仕事が忙しいという方もいる。そういう時に(兄弟を)見てほしいという利用もできると思う」
(田中大樹さん)
「移住された方が出産をされたり小さい子がいたりする方も多い。初産の方も多くて分からないことも多いけど、近くに親戚がいないのでそういう所でサポートとして託児をしたり情報をお伝えしたりできればと思っています」
復興支援などをきっかけに被災地に移住した人たちが子育てをする中、その手助けをすることは復興やまちづくりを支えることにもなります。
(山本ひろみさん)
「休むために預けるというのも必要だと思う。自分のリフレッシュで美容室行ったり、ジム行ったり、友達とランチ行ったり、常識の範囲はあると思いますが、気持ちの余裕が生まれる、子育てしやすい、となって、ここの地で子育てしようとなると思う」
田中さんは依頼者の自宅での託児のほか、市内にある3つの施設と連携して出張託児も行っています。その一つが町の中心部にある「交流施設『ほんまるの家』」です。
(田中大樹さん)
「街中なんで買い物ができたり、美容室があったり、カフェがあったり、子育て世代の方が気軽に立ち寄れる場所がたくさんあって、公園で私が預かるというのができれば良いのかなと思って」

視線は子どもたちがつくる未来へ
この日は、釜石市で田中さんと同じく託児サービスをしている深澤鮎美さんとの情報交換。深澤さんも茨城県からの移住者です。
(深澤鮎美さん)
「自分で託児施設をやるってなかなかできることじゃないので、純粋にすごいなと思って、私もそこから刺激をもらって自分でも託児を始めた」
2人は、地域にある自然の中で体を使って遊び・学ぶ保育を目指しています。
(田中大樹さん)
「2人だけというよりは他にも仲間が増えてほしいと思う同世代もありますし、子育て世代の中で一緒にやりたいという方がいてもうれしい。あとは学生でこれから保育士を目指す人が、なかなか自然の中で育つ保育を学べる環境が少ないと思うので、特に三陸では」
今後は互いに連携しながら、大人数の託児をしたり、親子向けのイベントを開催したりする予定です。
(田中大樹さん)
「子どもが減少しているのは課題としてあるので、あえて沿岸を選んでもらう。(沿岸での)子育てが楽しそうだなと思ってもらうように、我々で楽しいことをやりながらサービスで預かりながら楽しむ子育てをしてほしいなと思っています」
そして、子どもたちがつくる復興の先の地域を見つめます。
(田中大樹さん)
「陸前高田は建物が建ったんですけど、これからはどう使っていくかが大事だと思っていて、どう使うかというのは『知識』より『知恵』が必要。子どもたちが育った時にいろんな視点からものをみられる知恵がたくさん頭に入っている子どもがいる地方にしたい。託児でちょっとでも微力ながらやっていきたいと思っています」