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どう向き合う?被災地の人口減 減少率最大のまちは/釜石市

<ニュースエコー 2021年6月16日>

東日本大震災で被災した岩手県沿岸地域の人口減少に、歯止めがかかりません。去年の国勢調査の速報値で5年前の前回調査から1割近く人口が減ったことが分かりました。中でも最も減少率が高かったのが釜石市。現状にどう対応しようとしているのでしょうか。
(釜石市 野田武則市長)
「非常に残念。重く受け止めている」

 国勢調査の速報値が示した釜石市の人口減少率は12.8パーセント。県内で最も高い数字に野田武則市長は危機感をあらわにしました。

(野田市長)
「自然減それから社会減という数字も事実を表している。そういった意味でも重く受け止めなくてはならない」

 過去4回の国勢調査での沿岸地域の人口減少率をみると、陸前高田市や大槌町は大震災の直後に人口が大きく減りました。一方、釜石市は大震災から10年が経った去年の調査での減少率が最も大きくなりました。

(釜石市民)
「(人口減少を感じるときは?)催し物が行われても少ないです。参加者が」
「集客が基本市内とか。近い人にサービスをしてお金をもらう仕事なので人口が少ないから厳しい」

 大震災から10年。なぜ今になって減少率が上がったのでしょうか。

(岩手県立大学 吉野英岐教授)
「2010年から2015年が震災のすぐ後にあたるところですが、そこの減りが一番少ない。これはいろんな方が仕事でお入りになってきたこともある。工事の関係、支援の関係の方がお入りになってきたので減りが逆に少なかった」

 地域社会学を専門とする岩手県立大学の吉野英岐教授は、「復興事業が終わり携わる人たちが釜石を後にしたことが減少率を押し上げた要因」と予測する一方で、復興そのものの検証が必要だと指摘します。

(吉野教授)
「むしろ震災5年以降が減るとなると震災の影響というよりは復興のあり方ですよね。震災の直撃だけだったら説明がつかないので復興のあり方がどうだったんだろう。考えなくてはならない」
若者の減少に悩む釜石市

少ない若者~「つながり人口」に着目


「若い女性が少ない。若い女性が働く場所が少ない」

 釜石市は今年度スタートした新たな総合計画の中で、「人口減少への対策」を最も重要なプロジェクトに位置づけました。

(釜石市オープンシティ推進室 金野尚史室長)
「人口が減るイコール働く人が少なくなる。その結果企業の力が弱まって、市内の人たちの所得が下がる。経済が少しずつ衰退することが予測される」

 人口減少の中でも深刻なのが地域社会の原動力となる若い世代の減少です。若い世代の減少対策の柱として市が力を入れているのは、震災後にやってきたボランティアなどの「つながり人口」を移住・定住につなげる取り組みです。
 今年4月、市内の大型商業施設の中に仕事や暮らしに関する相談を受けたり移住を希望する人をサポートしたりする窓口を設けました。この日は釜石に移住した若い女性たちの交流会が行われていました。移住者した人たちは釜石をどう見ているのでしょうか。

(山梨県出身の女性)
「小児科とか皮膚科。子育てしていると実際困っている。病院が継続して無くならないでほしい」
(雫石町から移住した女性)
「逆境からの反骨精神、チャレンジ精神があって、これからもっといろんな人が入ってきて伸びていくまちなんじゃないのかなと住んでいて感じます」
移住したくなるまちへ―

「減少率最大」をバネに~“対応できる”まちへ


 釜石市は広く市民に参加を呼びかけ、市民会議「かまいし未来づくりプロジェクト」を去年立ち上げました。テーマの一つが「人口減少」です。
 メンバーの一人、花巻市出身の城守理佳子さんは、被災地での企業や学生のインターンシップを世話する傍ら、市の移住コーディネーターを務めています。
 移住定住に力を入れる自治体が全国で増える中、城守さんは成功のカギを握るのは「多様性」への対応力だと感じています。

(城守理佳子さん)
「企業だったりが多様性を受け入れて、どう一人ひとりと向き合うかがすごい大事。自分がこうしたい、こうなりたい、それをかなえられるまちというのは、いいまちにこれからなると思う」

 人口減少とどう向き合いまちの活力を維持していくのか。重い課題ですが乗り越えなくてならない課題です。

(釜石市オープンシティ推進室 金野尚史室長)
「今回の減少率は県下ワースト1でしたが、その次の手をどう打っていくか気持ちを切り替えて、11年目からどうやっていくか考えるきっかけになったと思う」
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