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コロナ禍の中で… 郷土食で育む地域の絆/大槌町

<ニュースエコー 2021年1月13日>

懐かしい郷土の味で震災で失なわれた地域の絆を育もうと大槌町の住民が取り組んでいる「食の文化祭」。そこには嬉しい時も悲しい時も料理を囲み、支えあってきた、大槌の人たちの姿がありました。しかし、今、コロナ禍の影響で住民の交流が難しくなっています。

 大槌町でカフェを営む内金﨑(うちかねざき)加代子さんです。作っているのは地域の郷土料理のひとつ「ゴマご飯」。コメに醤油と砂糖そして大量の黒ゴマを入れて甘めに炊き上げます。大槌町でも海に近い地区に伝わる郷土料理です。

(内金﨑加代子さん)
「わたし吉里吉里の近所のおばちゃんが作ったのを食べて初めて食べて美味しいと思ったもち米が入ってます」

 こちらは「ひょうず団子」。中身の餡は黒砂糖にゴマとクルミ、味噌のしょっぱさが隠し味です。

(内金﨑加代子さん)
「おやつ、普通のおやつかな法事とかでもないし」

 ゴマご飯が炊きあがりました。いい香りが漂います。ひょうず団子は餡がとろけてこちらも美味しそうです。内金﨑さんは「食の文化祭」と称して町に伝わる懐かしい郷土料理を囲みながら震災で失われた地域の絆を育む取り組みをおととしから始めました。
「食の文化祭」の会食は取りやめ、郷土料理を配ることに

新型コロナの感染拡大で「食の文化祭」の会食は取りやめに


 おととし1月、初めて行われた「食の文化祭」です。会場は町の公民館。大勢が集まり賑やかに行われました。

「それではいただいまーす」
「いただきまーす」
「おいしい!」

 「食の文化祭」の責任者は夫の大祐さんです。
(内金﨑大祐さん)
「これがきっかけで皆さんの顔が知れて挨拶できるようなコミュニケーションができていけばなと」

 ところが一年後、状況は一変。新型コロナウイルスの感染拡大により大勢で会食することが困難になりました。先月計画した「食の文化祭」は会食を取りやめ、カフェを訪れた人に郷土料理を配るだけにしました。

んこの日、近所の災害公営住宅などに暮らす人たちが店を訪れました。日頃感じている生活の不安を話し始めます。

(内金﨑大祐さん)
「不便なこと暮らしてて不便なこと」
(住民)
「コロナの事なんだけどひとりで暮らしてて車もないでしょもし罹って熱が出た場合、まず主治医に電話して保健所とかに行けと言われると思うんだけど交通手段は救急車なんですか?タクシーだめでしょ」

「何かあったときに相談する人がないのよ」
人の繋がりは、なにより大切なもの

震災を経験して絆の大切さを実感


 震災後、仮設住宅でも、その後の暮らしの中でも、人々はこうした機会を通じて顔見知りになり悩みや不安を共有しながらお互いを気遣う関係を育んできました。

 大人数で楽しむ「食の文化祭」は開けませんでしたが、近所の仲良し同士で、頂いた郷土料理を食べることにしました。

「んじゃいただきましょういただきまーす」
「うん、おいし」
「ゴマごはんも美味しんだね」
「おいし」

 震災後に知り合ったという女性3人。今では「一日顔を見ないと寂しい」という仲です。暮らしのすべてを奪っていった津波。しかし、今は「悪い事だけではなかった」と感じています。

「津波のおかげでさ何かいいことがねーがなと思ったっけこれが一番の収穫お友達を覚えたこと」
「ぜんぜん知らない人がね」
「一番大事なのは常に顔をみて」
「健康管理から家庭の事から泣くことから笑うことから全部言い合って遊んだり食ったり泣いたり笑ったりして一日を過ごしてるわけでしょ」

 震災からの10年という月日はそうした日々の積み重ねでした。コロナ禍での制限で外出の機会や地域活動が無くなり人とのつながりが希薄になっていくことが心配される中でも、痛みを分かち合った人たちの絆は、懐かしい郷土の味と共にこれからも続いていくことでしょう。
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