BMXで被災地を元気に! 担い手は移住の若者たち/大船渡市
<ニュースエコー 2020年11月18日>
東京から大船渡市へ移住してきた20代の2人の若者がまちを盛り上げようと山間の廃校を活用して自転車競技のレースコースを作りました。コースには子どもたちの元気な声が響き、まちの活性化にひと役買っています。
先月10日。大船渡市三陸町越喜来の甫嶺地区に宿泊機能を備えた体験型観光の拠点ができました。閉校した小学校を改修した「甫嶺復興交流センター」と様々な形状のコースを走る自転車競技の一種=BMXやスケートボードができる室内パークなどを備えています。
黒板に残る「今までありがとう」の文字。津波の被害を免れたかつての甫嶺小学校の校舎は東日本大震災直後、越喜来地区の小学生たちが学校生活を送った大切な学び舎です。
(卒業生)
「わー、懐かしい」
「そうだ、そうだ」
「えー、放送室だ」
この日は卒業生も訪れ、交流センターに生まれ変わった母校を見学しました。
(卒業生)
「あまりにも変わりすぎて最初びっくりしちゃって。自分の卒業した校舎じゃないなと思ったんですけど、まだ残っている部分とかがけっこうあったりするので意外と見てて楽しい」
地域の人たちが交流に利用するための多目的スペースや教室を改装した宿泊機能など以前の学び舎は大きく変わりました。BMXやスケートボードができる室内パークは、元の体育館です。

移住した2人の若者の実行力で地域活性化
こけら落としのこの日、全国から12人のプロライダーが集まり、トップクラスの技を披露しました。
会場を盛り上げようとマイクを握るのは福山北斗さん25歳。4年前に東京から大船渡に移住しました。震災後、復興支援で大船渡に来ていた父親がやがて大船渡で地域活性化のための会社を設立。「東北に本格的な施設が無いBMXの施設をつくり、地域活性化を」という父親の相談を受け自身も移住しました。BMXの経験がなかった福山さんは埼玉県のコースで働きながら、競技のことや施設の運営について学びました。
福山さんとともに施設の運営に携わるのはプロライダーの桑野孝則さん21歳。桑野さんも東京出身で福山さんから半年ほど遅れて大船渡に移住しました。
(BMXを見学した子ども)
「すごいなって思った」
「ジャンプしたりとか高くやったのがすごかった」
(きょうのを見てどういう風になりたいですか?)
「プロの人みたいになりたいです」
今年5月に先行オープンした屋外のレーシングコースではプロライダーと地元クラブチームの子どもたちが一緒にレースをするイベントも行われました。
(プロライダー 丹野夏波さん)
「景色もすごいいいですし、やっぱり普段この東北の方に来る機会がなかったのでこうやってBMXコースができたことで東北に行く理由というかも増えましたし」
トッププロをも魅了する海が見えるコース。2つのコースが無事に完成し、福山さんもホッとひと息です。
(福山北斗さん)
「やっぱ、この地域を復興、そして振興していくっていう意味でまず地域の活性化にまあひと役買ったのかなとははい、思います」

世界に通用するライダーを育てたい
オープンから1か月近く経ったこの日、福山さんはメンテナンス作業に汗を流していました。地元の人の力を借りながら自分たちで作ったBMXコース。利用者が快適に楽しめるようにメンテナンスは欠かせません。
「きょうはBMXの体験でよろしかったですか?」
「はい、そうです」
この日は仙台から親子連れが訪れました。BMXをレンタルする体験コースの利用です。
「下は絶対向いちゃだめだからね。そう、しっかり行きたい方向向いて行こう」
桑野さんらの丁寧な指導で子どもたちはあっという間に上達していきます。
地元のクラブチーム「ストリートモンスター」の子どもたちも集まってきて、楽しそうに練習を始めます。当初はおよそ20人だったメンバーも今では60人ほどに。大船渡だけではなく盛岡市や八幡平市から参加しているメンバーもいます。
(八幡平市から参加の親子)
「楽しい」
(どんなところが?)
「んー、わかんない」
「東北に近いところここしか乗るところないのでこういう施設ができて娘たちが一番興味持ち始めたんでいい活動になればいいなと思ってきてます」
かつての小学校に響く子どもたちの元気な声。まちを元気にしたいと移住した2人だけにその喜びもひとしおです。
(桑野孝則さん)
「ゆくゆくは世界に通用するライダーとかも出せればと思いますし、まずはBMXをいろんな人に知ってもらって楽しんでもらうところが一番ですね」
(福山北斗さん)
「1人でも多くBMX、そして大船渡っていう地域を知ってもらえるように活動頑張っていこうと思います」
その夜、ほかのメンバーとともに疲れをいやしながらコースの改修について話し合った2人。BMXでまちを盛り上げるため、その情熱は尽きません。