震災そして新型コロナウイルス 「仕掛け」で客足を呼び戻せ!/大船渡市
<ニュースエコー 2020年8月5日>
新型コロナウイルスの影響で客足が戻らず多くの飲食店が苦境に陥ってます。そんな中、岩手県大船渡市の飲食店が協同し、ビアガーデンを企画。市民に元気を届けようと奮闘する男性を取材しました。
「花火!」
今月1日、大船渡の商店街・キャッセン大船渡でビアガーデンが開かれました。集まった人たちを驚かせたのは75発の花火。それは突然打ち上げれられました。
「楽しかった」「よかった」(花火どうだった?)「きれいだった」
「例年の花火よりも良かったですね。地元愛ですね」
この日は例年なら大船渡の夏祭りが行われ、5000発の花火が大船渡の夜空を彩るはずだった日。新型コロナウイルスの影響で祭りが中止になり、寂しさを感じていた参加者たちは突然の花火に嬉しさを隠しきれませんでした。このイベントを企画したのはキャッセン大船渡でイタリアンレストランを経営する新沼崇久さん49歳です。
(イベントを企画した新沼崇久さん)
「そうですね、ある程度みなさんがいてくれたので、最高でしたね」
新沼さんをはじめキャッセン大船渡に出店する飲食店の経営者たちは、密集や密接を避ける新しい生活様式に対応したイベントの開催に向けて議論を重ねてきました。先月5日に初めてのビアガーデンを行い、今回が2回目です。
飲食店の経営者たちが手を取り合ったのは、コロナ禍による営業不振が大きな原因です。盛り上がるはずの金曜の夜、店はとても静かでした。この状態は、新沼さんの店だけではありません。飲食店街を歩く人影はほとんど見られませんでした。
「お疲れさんです」「お疲れ様です」
「どんな状態かなと思って」「いや、暇っすね」「暇だよね、やっぱり」
岩手初の感染者が出てから3日目のこの日、盛り返しつつあった人出は一気に減少しました。
(ラーメン店店主)
「世の中が動かないと、お客さんの流れがないと、やっぱり1人だけ頑張ってもだめですよね」

自分たちが動いて地元を元気にする!
東日本大震災による津波で中心商店街が大きな被害を受けた大船渡市…。
(2017年5月2日・キャッセン夢商店街開業)
「当地を末永くにぎわうまちにしていくことを誓い、ここに大船渡駅周辺地区の第2期まちびらきを宣言します」
プレハブの仮設店舗を経て3年前、念願の本設店舗での営業再開。新沼さんたち飲食店の店主たちは生業の復興に向け歩みを進めてきました。
そんな中、店主たちを襲った新型コロナウイルスの猛威。4月の休業を経て、営業を徐々に再開させましたが6月に入っても店の売り上げは5割から6割しか回復しなかったといいます。店を守るために起こした行動の第一歩がビアガーデンによる集客でした。
(イベントを企画した新沼崇久さん)
「我々飲食店が稼げば酒屋や仕入れ業者もお金が回っていく。ちょっとでもいいから飲食店の力で大船渡の経済だけは回せればと思ってます」
この思いが震災後を乗り切ってきた新沼さんたちを再び、突き動かします。

「新しい様式」で次なるイベントも…
各テーブルには消毒液。来場者には検温を求め発熱していない人だけがリストバンドを着けて入場できる「新しい様式」。2回目のビアガーデンはこうして開催されました。浴衣姿の子どもの姿も見られ、みんなが笑顔です。
「夏祭りがなくなって残念だなって思ってたので、浴衣を着せる機会がなかったので、こうやって着せてあげられてよかった」
(イベントを企画した新沼崇久さん)
「笑顔を見れるのが一番の僕らの喜び、本当に。やってよかったって思える」
人々の笑顔が自分たちの喜び。午後8時に打ち上げたサプライズの花火もみんなに喜んでもらいたいという気持ちからでした。
(イベントを企画した新沼崇久さん)
「本当は告知して多くの人に見せたかったんですけど、ここに来てくれた人にお礼ですね」
「きょうここにいた人たちは元気になったと思うんで、また何か考えます」
まちの人たちが元気になることが飲食店の元気にもつながる。新沼さんたちは、コロナ禍に抗いながら人々を笑顔にする次なる「仕掛け」を早くも構想しています。