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W杯後のまちに活気を! 釜石出身男性のふるさと愛/岩手

<ニュースエコー 2019年12月11日>

ラグビーワールドカップで生まれたまちの活気を、未来につなげていこうというイベントが岩手県釜石市で行われました。このイベントを企画し人々に協力を呼びかけたのは釜石出身の男性です。彼を突き動かしたのは絶えることのないふるさとへの愛でした。

(子どもたちの歌)
「ありがとうの言葉だけじゃこの思いは伝えきれないよ」

 今月1日釜石市鵜住居町で行われたイベント、「ひとつの街鵜住居トライステーションフェスティバル」です。食や音楽を通して鵜住居を元気にしようと行われたイベントにはおよそ2千人が訪れまちが賑わいました。

「皆さんのおかげで協賛金も何とか黒字は分かんないですけど赤字出さなくて済むかなくらいまで」

 実行委員会の代表、伊勢央さん39歳です。イベントは鵜住居町出身の伊勢さんが交流のある仲間たちに呼びかけて始まりました。伊勢さんがイベントを思い立ったのはある心配からでした。
(伊勢さん)
「ワールドカップお祭りで盛り上がるのは分かってはいたんですけどそのあとが僕自身大事だと思っていて、世の中の関心が鵜住居から無くなっちゃうじゃないかなとか」

 ラグビーワールドカップの試合が行われ賑わっていたまちは、今通りを歩く人も少なく静かです。伊勢さんはラグビーワールドカップで生まれたまちの活気を未来につなげていこうと仲間に呼びかけました。
イベント当日は大勢の人で賑わった

震災がふるさとへの想いを強くした


(ボランティアガイド)
「あの黒い塀が波の高さですのでほとんどの人が亡くなったと言われております」

 鵜住居町は東日本大震災の被害が釜石市内で最も大きかった地域です。今年は賑わい施設や体育館などの公共施設も次々と完成して、目に見える復興は進みました。しかし、鵜住居地区の人口は周辺の根浜、両石地区なども含めて10月末現在、震災前の3774人から2386人と4割減少し、いかにしてまちに活気を取り戻すかが大きな課題です。

(実行委員会・佐々木雄治さん)
「地元の人がいかに安心して生活をすること、そしてここで昔のような賑わいを取り戻すためにお祭りを盛り上げるとかイベントしていくとか、そういうことをやっていかないと鵜住居の元気が出てこない」

 実行委員長の伊勢さんは、盛岡市内で居酒屋を営んでいます。2015年にはじめた店では、釜石をはじめ三陸でとれた魚をメインに料理しています。中学を出てすぐに釜石をあとにして料理の道に飛び込み、ふるさとを顧みる時間もなかった伊勢さん。大震災がふるさとへの想いを強くしました。

(伊勢さん)
「震災以降、人のつながりが戻った部分もあったりとか、こうやっていくうちに沿岸の人と関わる機会もおかげさまで増えてきたので、あっち(釜石)でまちおこしじゃないですけど何かやりたいなぁって」

 そして迎えたイベント当日、会場は大勢の人で賑わいました。

(地元の人)
「震災後大きいイベントを開いてくれるのは地元の人間としては嬉しいですよね」
「若い人たちが一生懸命こうやって私ら年寄りもこうやって参加できることがとっても嬉しいと思っています」
イベントの最後に挨拶をする伊勢さん

震災の記憶を伝えながら賑わいを作り出していく


 イベントの大切なテーマのひとつが「震災を伝える」こと。東日本大震災での小中学生の避難を描いた絵本を鵜住居小学校の児童が読み聞かせました。

「大丈夫だからね。もうちょっと頑張ろう。お姉ちゃんがさっきより強く僕の手を握った。僕もぎゅっと握り返した。そうだとにかく今は上へ上へ走るんだ」

(小学生)
「こういうイベントに来てくださった人たちが、いろんな人と繋がって交流することで、いろんなことを知ってもらえるので、こういうイベントをこれからも続けてほしいと思います」

ステージで歌うのは伊勢さんと交流のある人たち。伊勢さんがふるさと鵜住居によせる想いに歌で応えました。

「そこにある思い出の砂浜 さえぎる巨大なコンクリート 胸の中深くしまい込んだ遠い記憶のカケラ」

そして、イベントは終わりを迎えました。

(伊勢さん)
「このみんなと次の世代をつなぐ子どもたちと、今回のイベントを作り上げてきましたので、本当にみんなに拍手してもらいたいなと思います。ありがとうございます」

釜石の仲間たちと手作りしたイベントは伊勢さんの心の中のふるさとへの想いを一層強くしたようです。

(伊勢さん)
「僕が帰ってくる場所はここなので、いつか自分の店としてこの鵜住居に、5年10年かかるかもしれないですけど食堂を出すってのを言い続けていきながら、一生懸命やっていければ」

いつかふるさと鵜住居に帰ってくる日を夢見ながら、伊勢さんはこのイベントを続けていきたいと心に誓っています。
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