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「犬の訓練士の思い」 災害時のペットとの同伴避難を考える/宮古市

<ニュースエコー 2019年12月4日>

東日本大震災に台風19号。ペットを連れた被災者は、災害時の避難の難しさを感じています。このほど、ペット避難の現状と課題を探る珍しいサミットが岩手県宮古市で開かれました。主催した犬の訓練士の女性を取材しました。

宮古市田老。今月はじめ、ペットとの避難を考えるサミットが初めて開催されました。集まったのは自治体や保健所の職員やイヌの訓練士のほか県内外からペット避難に関心を持つ人たち。避難の体験談などを話しました。

(宮城県からの参加者)
「(震災のとき避難所に)ネコを連れて行こうと思ったんだけどネコは駄目って言われて。駄目って言われても私は車も持っていないし、住むところもないので」

 ペット同伴避難全国サミットと名づけられたこの会で考えるのは、災害時に家族の一員であるペットをどう守るかということ。企画したのは、宮古市内で飼育放棄や殺処分の対象となった犬の保護活動を行うNPO法人「命ほにほに」の代表、梶山永江さんです。

 花巻で犬の訓練士をしていた梶山さんは東日本大震災の後、変わり果てたふるさと・宮古に戻り、犬の保護活動を始めました。

(梶山さん)
「1週間くらいたってから。どうにか車を停めたりしながらがれきの中で場所にはいきました。もう、何もない田老の平地は全部流されていた、無かったです」

 あれから8年あまり。現在はおよそ30匹の犬を保護していて、毎朝6時から散歩やえさやり、しつけの訓練をしながら里親を探す活動もしています。梶山さんが保護活動の傍らで考えてきたのが、ペットの避難についてです。

(梶山さん)
「飼い主のしつけを座学でやった時に参加者からの一言ですね。『ペットを飼っている人がペットと一緒に避難所に避難することを、飼っていない人に知ってもらいたい』って。そこは訓練士やこういう仕事をしているものの役目だと感じた」
梶山さんは30匹の犬を保護し、世話をしながらペットの避難について考えてきた

「同行避難」ではなく「同伴避難」を


東日本大震災後の2013年、国が災害時はペットを連れて安全な場所へ逃げる「同行避難」のガイドラインを作成しました。これは震災の混乱のなかで飼い主とはぐれたペットや、長期間取り残されて野生化したペットが多くいたためです。

 一方、梶山さんが目指すのは「同伴避難」。避難先で飼い主とペットが別々になるのではなく、一緒に過ごすことができる避難の形です。「命ほにほに」は同伴避難の第一歩として飼い主とペットによる訓練を月に一度開いています。そこでは、・飼い主以外がリードをもつ、エサをやる。・慣れない場所で専用の小屋=ケージに入るなどといったしつけを実践します。

 しかし、避難所の運営は自治体や避難所ごとに任されている部分が大きく、10月の台風19号でもペットを連れての避難がかなわなかったケースがありました。

(宮古市在住の参加者)
「先日の台風19号のときに、避難所にはいったんですけど(中には)入れなかったんです。イヌと一緒では。それで家族とイヌが一晩、私たちだけ車で過ごしたというのがあった」

 避難所の規模や動物のにおい、鳴き声など課題が多い同伴避難。サミットでは様々な立場からペット避難の事例が発表され、宮古市の担当者からは去年、市の防災訓練の一環で初めて取り組まれたペット避難について報告がありました。

(宮古市市民生活部・西村泰弘課長)
「青く見えるのはブルーシートが張ってあります。イヌは人がいっぱい見えると興奮してしまうということで目隠ししたほうがいいとなりブルーシートでしています」
清水さんは、同伴避難専用の避難所や避難スペースの必要性を訴えた

「命の重さに区別はない」ペット同伴避難の確立を目指す


宮古市のガイドラインは「同行避難」ですが、「同伴避難」も交えた訓練を継続したいということです。サミットのパネラーのひとり、新潟県の犬の訓練士・清水美森さんは、同伴避難専用の避難所や避難スペースを設置し、そこに獣医師やトレーナーなど専門家を集める形を提案しました。

(清水さん)
「ペットを連れている人が『私は避難できません』と諦めてしまうことが本当に多いです。それで命を落としてしまう可能性が高いので、ひとつ『専用』、自分のペットがしつけができてなかろうが、とにかくここに行けばどうにかしてくれるような専用のもの」

 それぞれの立場から語られる同伴避難の現状と課題。参加者たちは真剣に聞き入っていました。

(参加者)
「ペットと一緒に避難できるとわかっていれば、危ない思いをして自宅で頑張っていなくても避難所に行きやすい」
「同伴避難が徹底していれば悩むことなんかないと思う。『こういう時にはここに行け』っというハザードマップのようなものができていたらすごく理想だと思いました」

 サミットの最後、梶山さんは改めて同伴避難の必要性を訴えました。

(サミットを企画した、NPO法人代表・梶山永江さん)
「人命をまもることを大前提にするのであれば、ペットと一緒に逃げられる場所を作ってもらわなければ飼い主は逃げません。そこだけを理解してほしいと思っています。その分(飼い主への)勉強会はがんばって広めていきたいと思っております」

 全国各地で相次ぐ災害。誰にでも起こりうるいざという時の備えと共に、「命の重さ」に区別はないということも考えなくてはなりません。梶山さんは、来年以降もサミットを開催し、ペット同伴避難の仕組みの確立を目指します。
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