X 
このサイトでは、閲覧解析や広告改善のためにCookieを使用します。サイトを利用することでCookieの使用に同意頂いたものとします。オプトアウトや詳細はこちら「IBCサイト規定
自らの経験を語り継ぐ… 被災した高校生が震災伝承者に

<ニュースエコー 2019年7月10日>

岩手県釜石市では、今年から東日本大震災の記憶を語り継ぐ伝承者を認定する取り組みを始めています。自分の体験を次の世代に語り継ぎたいと伝承者をめざす高校生を取材しました。

(齋藤徳美 岩手大学名誉教授)
「伝承者として知っておくべきこと、とにかく避難すれば命は助かる」

 真剣なまなざしで話に聞き入るのは10代から80代までの27人。釜石市が認定する震災伝承者を育成するため、初めて開かれた研修会です。研修会では岩手大学の名誉教授などが津波のメカニズムについて講義を行ったほか、参加者が班ごとに分かれそれぞれの被災体験を発表しました。この中に、最年少17歳の女子高校生の姿がありました。釜石市出身で現在は大槌町に暮らす釜石高校3年の佐々木千芽さんです。

(佐々木千芽さん)
「正しい情報のまま次の世代に伝えるための知識と資格がほしいと思って参加しました」

佐々木さんは震災時、鵜住居小学校の3年生。授業中に被災し、その後は北上にある母親の実家で半年間の避難生活を送りました。

(佐々木さん)
「(北上に)転校して話し聞かれることが多く震災のことが内陸には情報が来てないんだと自分がしゃべっていかないと内陸中心に風化が進むなと思った」
佐々木さんが住んでいた鵜住居地区は、釜石市内で最も多い478人が犠牲になった

防災の役に立ちたい、震災体験を伝えていかなくてはならない


 釜石に戻った佐々木さんは少しでも防災の役に立ちたいと、県外の小中学校やイベントなどで震災体験を伝える活動を行ってきました。佐々木さんの姿勢にクラスメイトは…。

(高校のクラスメイト髙橋奈那さん)
「周りに絶対伝えていかなければという思いがあるからこそ伝承者として活動したいというのがすごい」

 釜石市によりますと先月末現在の震災関連死を含む犠牲者は1064人。佐々木さんが住んでいた鵜住居地区では市内で最も多い478人が犠牲になりました。

(佐々木千芽さん)
「震災前は鵜住居小学校と釜石東中学校が建っていた場所解体した跡にこのスタジアムが建ちました」
震災伝承者の証明書を手に記念撮影

「あの日の出来事」を次の世代に語り継ぐ


佐々木さんが伝承者として語り継ぎたいのは「あの日の出来事」です。

「そろばんをやっていた時に地震が来た、中学生の運動部の先輩が避難しているのをみて先生たちが見て小学生も逃げようとなった」

 小中学生と地元の人たち総勢600人で1.5キロメートル先の高い場所へ。

「鵜住居町からこっち両石町に通りぬけることができる唯一の道で、海抜が低く被害を受けていたので通り抜けすることができなかった」

佐々木さんたちは行き場を失いますが、近くの高速道路を走るトラックをつかまえ、荷台に乗って市内の避難所に移動したといいます。避難した旧釜石中学校の体育館跡地。仮設住宅が立ち並び、あの時の風景は今はもうありません。

「説明しようと思っても当時の建物がなかったりすると説明しづらいし、逆に自分の記憶があっているのかわからない」

 小学生の時の記憶を自分自身が忘れないためにも…佐々木さんの決意はさらに強くなります。震災の伝承者をめざす人たちが参加した研修会は無事に終了。最後に野田武則市長から証明書が手渡され、佐々木さんも無事、伝承者として認められました。

「震災を経験していない次の小学生たちにしっかり恐怖とか伝えたい」

 まずは、身近なところから震災や防災についてを語る機会を持ちたいと考えている佐々木さん。次の世代へ語り継ぐ使命を胸に伝承者として歩み始めます。
HOME