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津波に負けない ~レストラン再建にかける思い/釜石市

<ニュースエコー 2019年4月17日>

津波で被害を受けた岩手県釜石市の魚市場周辺に、新たなにぎわいを創出しようと「魚河岸テラス」が先日オープンしました。その魚河岸テラスにレストランの再建を果たした男性の思いを取材しました。

 4月13日、津波で被害を受けた、釜石市の魚市場隣りにオープンした「魚河岸テラス」。「海のまち釜石」を発信しようと、市がおよそ5憶円をかけて整備したもので、1階には郷土芸能、虎舞の展示コーナーも設けられています。2階は港の景色を眺めながら、地元食材を使った料理を楽しめる飲食店街です。

(HAMAYUI・三塚浩之さん)
「4月の平日は現在埋まってる状況で、6月半ばまでポツポツ入ってきている感じですね」

魚河岸テラス2階にカフェレストラン、HAMAYUIをオープンした三塚浩之さん56歳です。

(三塚さん)
「イメージ以上にいい感じの店だと、私は自信を持っています。ただここからがスタートなんで、やっとスタートの場所に、自分の思い通りの店が出来るようになったという感じです」

(店を訪れた人)
「ここに移転する前から通っていたので、すごく待ち焦がれていたので、きょうは本当に良かった。おめでとうと言いたいです」
津波被害から2か月後にはキッチンカーで営業再開

被災地に明かりを灯したい


 三塚さんは震災の津波で、家族で始めたばかりの地産地消の食堂を失いました。津波被害から2か月後の2011年6月、三塚さんはキッチンカーを借り受け、市の中心部に店を構えていた仲間と営業を再開しました。

「ガレキの荒野となったまちに、とにかく明かりを灯したい」。その一心で資金をかき集め、思いついたのがキッチンカーでした。

(キッチンカーを訪れた客)
「最高です。嬉しいです」
「応援します食べに来ます」

(当時の三塚さん)
「前のように常連さんが、いつでも気さくに来られるお店を再開するのが夢」

 2年後の2013年にはキッチンカーは8台になり、復興に向けたまちづくりの中で、活気を取り戻す役割を担うまでになりました。三塚さんはまちの中心部に、キッチンカーを停めるウッドデッキを造りました。費用の800万円は行政の補助に頼らずに、民間の支援団体などに協力してもらい工面しました。

(当時の三塚さん)
「被災地だからどうだとか、そういう問題ではなくて、この地域を少しでも楽しめるものが、自分たちがやれる範囲で出来るのであれば、それはやったほうが後悔しないかなと思いますね」

 その後、被災した自宅を改装して店を再開しましたが、復興工事のため立ち退かなくてはならなくなり2016年、やむなく閉店。去年「魚河岸テラス」への出店を決めました。

(三塚さん)
「市も浜のにぎわいが必要だという政策のもとで、この施設を建てたということ。私もやるんだったらここだというのがちょうどリンクした」
養殖漁家とブランド化に取り組んだ「桜満開牡蠣」を食材に

ここから新たなスタート


 震災前、魚市場周辺には人が集まる施設がありませんでした。人を呼び、にぎわいを創り出す施設を整備することは、釜石市にとって震災前からの課題でもあったのです。

(釜石市産業振興部・平松福壽部長)「まずここに来ていただいて、釜石の港や港湾を見てもらって、市民の方は釜石は港町だと気持ちを再度、再認識してほしいし、観光客の方は釜石には素敵な場所があるんだと広がっていけば、市民も観光客も楽しんでいただける施設になると思う」

 カフェレストランHAMAYUIオーナーの三塚さんは、店を訪れた人に釜石の海を感じてもらいたいと、この場所での営業再開にこだわりました。その思いは料理にも込められています。

(三塚さん)
「漁師さんといっしょに、東京まで売り込みに行った思い入れのある牡蠣なので」

 三塚さんが地元の養殖漁家といっしょにブランド化に取り組み、釜石を代表する海産物に育て上げた「桜満開牡蠣」です。海の香りが口いっぱいに広がる大ぶりな身が特徴。桜満開牡蠣のパスタは桜の季節限定、HAMAYUIの人気メニューです。海へのこだわりは店の壁にも表現されていました。壁に描かれているのは日本で最初に作られた釜石湾の海図です。

(三塚さん)
「私たちが思っている釜石のイメージというか、自分たちが生まれ育ったまちの釜石というものが、風景も含めて壁には海図として表しましたけども、釜石を誇りに思いたいというところがあった」

 キッチンカーでの再起から8年。やっとスタート地点にたどり着いた三塚さん。大好きな海を望む店で釜石を感じ、釜石を味わってもらう。夢をかなえる新たな日々が始まりました。
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