「思いを次世代へ」 音楽と花火で彩るオキライサマー/大船渡市
<ニュースエコー 2018年8月15日>
8月11日、岩手県大船渡市の越喜来(おきらい)地区で音楽ライブと花火大会を併せた「オキライサマー」というイベントが開かれました。地元を盛り上げたいとこのイベントを企画したひとりの男性を取材しました。
大船渡市越喜来の浦浜海岸。一千発の花火が夜空を照らしました。月命日にあわせて打ち上げられた追悼の花火を見つめるのは、オキライサマーの発起人中野圭さんです。
オキライサマー前日の、金曜日。実行委員会のスタッフが会場の設営に追われていました。
(実行委員)
「台風来るってなってて懸念してたんですけど、結果的にはそれたので、順調に準備ができてよかったですね」
実行委員長の中野さんは、地元でホタテ養殖を営む傍ら、NPO団体の理事を務めています。中学卒業とともに地元を離れ、大学進学で東京へ。いったんは東京で就職しました。
(中野さん)
「早く出たい、外に出て何かやりたいという方がずっと強かったので、あんまり帰ってこようとは思ってなかったですね、出た時は」
しかし、震災を機にUターンを決意。「自分が故郷に与えてもらった思い出を次の世代にも伝えたい」と、花火大会を企画しました。
(中野さん)
「すごく楽しい思い出とか、いい思い出、そういう思いをさせてもらった地元のために何かしなきゃいけないなと」
中野さんの発案に同級生たちが賛同しました。インターネット上で運営資金の寄付を募りながら、震災の年から毎年、仮設商店街や小学校の跡地などを会場にオキライサマーを続けてきました。今年は防波堤の工事が終わった浦浜海岸で、待望の開催です。
(中野さん)
「越喜来も海の町なんで、ずっと海でやっぱできればいいなというのはあったので。なんとか今年はできそうでよかったです」

次の段階の「復興」へ
迎えた当日。快晴に恵まれ、日中から多くの人が訪れました。海を目の前に見渡せる会場には飲食店のブースが並び、来場者は食べ物をつまみながら音楽に耳を傾けます。
(訪れた人)
「楽しいですね。出店もいっぱいで楽しく盛り上がってていいなと思いますね」「いいね。サイコー!」
越喜来の海を楽しんでもらおうと、シュノーケリングの体験会も。
(訪れた人)
「(どちらから?)きょう盛岡から来ました。すごいいいところだと思うからもっとみんなに来てほしい」
「震災後は初めて来ました。これからこうやって砂浜で子どもたち遊ばせる機会が増えればいいなと思いますね」
運営スタッフを仕切る中野さん。充実した表情で会場を眺めます。
(中野さん)
「ほんと晴れてよかったなっていうのと、けっこうお客さんも来てくれたし、海の方でもこうやって入ってる人たちけっこういるんで、盛り上がりがようやく出て来たかなという感じで良かったです」
(参加したアーティスト)
「外側からいろんな支援をしたりっていう形の復興はとりあえずいったんいまフェードアウトしてて、中にいる人が、特に若い人がいろんなことを協力してやっていこうっていう姿勢が、次の復興の段階なんだなっていうのを感じてます」

「忘れず、上を向いて」
夕方6時。花火の打ち上げ時間が近づいて、さらに人が増えてきました。そしていよいよ、オキライサマーはクライマックスを迎えます。
(中野さん挨拶)
「2011年のことはもちろん忘れず、でも花火が上がるときはみなさんで上を向いて未来に進んでいきたいと思います。本日は誠にありがとうございました!」
(カウントダウン)「5、4、3、2、1、ゼロ!」
越喜来の夜空を彩る一千発の花火。震災から7年5か月を経てようやく、海岸から望めるようになった景色です。鎮魂と、復興への祈りを込め人々は空を見上げます。
越喜来が熱く燃えた一日。地元の若者たちが前へと踏み出す姿は、多くの人に勇気を与えています。
(地元の男性)
「当時いろいろあったことをいろいろ傷みたいな部分と、複雑な部分はありますけど、それでもこうやって賑やかなところ見ると嬉しいです」
(高校生)
「よかったです。最高です!すごく元気が出るし、自分もやる側に回りたいって思います」
(大学生)
「(震災は)悲しいし、夢に出てくる時とかも震災前の状態で出てきたりするんですけど、震災前よりいい街に私たちがしていけたらいいなと思います」
(中野圭さん)
「自分よりも若い人たちが、俺はこうやりたいって言ってやっていく姿をどんどんサポートしていけたらというか。自分ももう実行委員長8回もやってていつまでやるんだっていうのもありますし、やりたいっていう人が出てきたらそれを応援していく方に回ってもいいのかなと思いますね」
音楽と花火が彩る、越喜来の夏。オキライサマーに込められた中野さんの思いは、次の世代にしっかりと受け継がれています。