「音楽の力で復興を」 かさ上げ地で初の音楽イベント/陸前高田市
<ニュースエコー 2018年6月6日>
津波で甚大な被害を受け、土地をかさ上げしてのまちづくりが進む陸前高田市で、5月末、初めての音楽イベントが行われました。企画した男性の思いを取材しました。
(女性ボーカル)
「大事なのは自分かわいがること自分を愛さなきゃ他人(ひと)も愛せない」
陸前高田の新しい町の中心部に中学生たちの元気な歌声が響き渡りました。会場はかさ上げ地に去年、続々とオープンした商業施設が立ち並ぶ一角です。
地元、陸前高田をはじめ盛岡などから7組が出演したこの音楽イベント。集まった人たちは風や太陽の日差しを体いっぱいに感じながら初めての野外ライブを楽しみました。
(事前準備をするスタッフ)
「おはようございます」「お、どうもね」「よろしくお願いします」
このイベントは音楽をこよなく愛する市民有志が企画しました。
(発起人の熊谷さんとスタッフ)
「悪だくみ」(笑)「悪いヤツです」「晴れて良かった」「当然、晴れ男」

「音楽イベント」は、2年前から
イベントの発起人はこの人。去年、この地に本設店舗を再建した熊谷浩昭さんです。
東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた陸前高田市。熊谷さんの経営する居酒屋「俺っ家」も壊滅的な被害を受けました。
震災発生から3か月後、いったん陸前高田を離れた熊谷さんは盛岡に店を再建しました。新鮮な海の幸と、豊富な地酒、その人柄で盛岡で再スタートを切った「俺っ家」は連日多くの人が訪れる人気店になったのです。
盛岡で店を営業しながらも熊谷さんはおととし、三陸を元気にしようという音楽イベントを企画しました。2年前はかさ上げ工事が進んでいたため陸前高田市の「高台」を会場にしました。
「おやじのソゴヂガラ」というイベント名そのままに中高年の「おやじ」たちが被災したまちを音楽で元気にしようと底力を振り絞って行いました。
(熊谷さん)
「沿岸も内陸もないんだ、って壁を取り払って、本当に心ひとつにこれから未来に向かって進んでいける。そしてわたしがきょう強く感じたのは故郷に絶対帰ってくるということです」

故郷の若者たちと・・・
その言葉通り去年5月、熊谷さんは陸前高田に店を再建しました。
そんな熊谷さんが店の再建後、初めて企画したのが高台ではなくかさ上げされた「新市街地」でのイベントでした。今回は若者たちにも参加を呼びかけました。
(中学生)
「なんかどっかがずれた。何かがずれた。途中まで超いい感じだったのに、何が悪かったんだ?」
高田第一中学校3年の有志でつくるバンド「蓮と愉快な仲間たち」。被災地の未来を担う人材です。結成間もない彼女たちの練習には笑顔が絶えません。
(中学生)
「音楽が好きなのでその音楽にずっと触れられていることがとても楽しいです」「地元にもこんなに頑張っている中学生がいるんだなって思ってほしいです」
中学生たちも若い力でまちの復興に貢献しようとしています。
(観客)
「いやー、本当に人がいっぱい集まってくれて、すごいみんな楽しそうだったので本当に良かったなあと思って。お祭りっていいなあって思いました」「いいですねー、どんどんにぎやかになってって、もう嬉しいです」
(熊谷さん)
「新しいまちににぎわいをっていうこととか、商売とか仕事を越えて人と人とのつながりというか、このまちに音楽を響かせてにぎわいをつくりたいなっていう」

復興を目指して
イベントから5日後、熊谷さんです。そこには前へと進む熊谷さんの日常がありました。
(熊谷浩昭さん)
「もともとこの12メーター下に住んでいて今高台の方に移って住んでいる方たちから『聞こえてきたよ』って声がいっぱいあって。にぎわい、まちの鼓動、息づいている感情が、高台に新しく住んでいる人たちにも届けられたかなと思いました」
かさ上げされた新たなまちを音楽で盛り上げる─。熊谷さんは、その「音」が陸前高田全体に広がり、復興する日をめざして歩みを進めます。