「TOTUKOの会」 心をつなぐぬいぐるみ作り/宮古市
<ニュースエコー 2018年2月21日>
岩手県宮古市のPRキャラクターのぬいぐるみを作り続けている、市内の団体があります。仮設住宅での暮らしが縁で始まった活動は人々の心をつなぎ、前を向く力になっています。
宮古市役所の入口ロビーです。4か月後の開設を控えた北海道・室蘭とのフェリー航路をアピールしているのは、宮古市のPRキャラクターサーモンくんとみやこちゃんです。鮭の双子の兄妹と言う設定で震災翌年の11月11日=鮭の日にデビューしました。

活動を通じて「前向きになれた」
宮古港に面した日立浜町。津波で大きな被害を受け、今は防潮堤の建設が進んでいます。そこに再建された住まいの一角で、サーモンくんとみやこちゃんのぬいぐるみ作りに励んでいる女性たちがいます。
「TOTUKO(とつこ)の会」のメンバーです。「TOTUKO」の会は糸が絡まった状態を表す宮古の方言「とつこになる」から名づけました。仮設住宅団地で行われた織物教室をきっかけに2012年、津波後の混乱が続く中でスタートしました。
(メンバー)
「何をと言うより、家はなくなっているし、今からどうしたら良いか、でも皆周りの人たちが一緒の状況だったので」
全員が初心者でしたが「TOTUKO」の活動はもつれた糸、そして心を解きほぐしていく癒しのひと時になったと言います。
(メンバー)
「気持ちも楽になって」
「皆と話をすると、また明日も頑張ろうと言う気持ちで」
2014年からは、サーモンくんとみやこちゃんのぬいぐるみづくりが取り組みの中心となりました。ぬいぐるみ作りは全て手作業です。機織り機で作った布をぬいぐるみの大きさに合わせて切り取り、中に綿を入れて形を整えます。そして手製の服や飾りを付けて完成。1つ作るのに3日ほどかかります。
去年10月に仮設住宅が撤去されてからはメンバーの自宅に集まり活動を続けています。
(メンバー)
「細かくて手先を使うので、全部難しい」
「今までやったことなかったので、買ってもらうために丁寧に作っています」

「復興」と「ふるさと」への思い
その「TOTUKOの会」の中心メンバーが鈴木誠子さん67歳です。
「こんにちは、早速(ぬいぐるみが)ありますね」
津波によって自宅と経営していた美容室を失った鈴木さん。仮設住宅の退去後は内陸、紫波町に移り住みました。平穏な日々を取り戻しましたがぬいぐるみを作りながら考えるのはやはり、ふるさと宮古のことです。
(鈴木誠子さん)
「帰りたい、小さい時から海のそばだから、できれば、海のそばで暮らしたい」
今も宮古まで通いながら会の活動を続けているのには理由があります。
(鈴木誠子さん)
「つながりです、皆さんとの。全く知らない人達が1つになれた、色々な人とこれを通じて会うことができたし。」
「TOTUKOの会」が作ったサーモンくんとみやこちゃんのぬいぐるみは宮古市内の道の駅などで販売されています。
(シートピアなあど細川陽平さん)
「手づくりのぬくもり感が人気の1つだと思う」「すごく評判も良くてこれだけを買いに来るお客さんもいる」
愛らしいぬいぐるみに込められた復興、そしてふるさとへの思い。心のこもった宮古自慢の逸品です。