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ENCYCLOPEDIA
「郷土の全てを知りたい」という県民の思いにこたえ、岩手放送開局25周年事業として1978年に刊行。1988年に補訂し、「新版 岩手百科事典」を刊行しました。岩手の自然、歴史、地理などあらゆる分野にわたり5000を超える項目を網羅しています。
このWEBへの掲載項目は「新版」に準拠し、刊行当時の内容で採録しています。そのため地名や解釈等が現在と異なる場合があります。ご了承の上、お楽しみください。
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19世紀末ドイツに起こった青年運動。閉鎖的学校教育の非を訴え、大自然を教室として青少年の人間性を啓発しようというもの。日本では1955年(昭和30)ごろから、関東・関西の学生の間に広がり始めた。県内では岩手大の三浦栄一らが1958年に岩手大学ワンダーフォーゲル部を創設し、東北における運動の拠点になった。しかし1967年(昭和42)11月、岩手大ワンダーフォーゲル部が岩手山で遭難し3人の死者を出したことから、ワンダーフォーゲル部の在り方について論議をよんだ。岩手大では全学生が、異例の学生葬をもって死者の霊を慰めた。
おわんに一口ほどのかけそばが入っており、それを食べると間髪を入れずそばが入れられる。「もうたくさん」と言っても、おわんにふたをしないかぎり何回でもそばが入れら れる。いろいろな薬味と美しい塗り物の容器に具が出される。途中でこれをそばと一緒に食べたりする。わんこそば大会があり、その数を競う。楽しい食事法の一つである。わんこそばの由来は定かでないが、南部氏27代利直が江戸に上る途中花巻に宿を求めたが、そのとき土地の人々が利直に差し上げたそばの容器が平わんだったことからでたとも、原敬がそばは「わんこ」で食べるのがよいと言ったことからこの名が出たともいわれる。また昔の農家のそば切りの食事法からでたともいわれている。現在では盛岡・花巻・一関などにわんこそばを提供する店があり、県外旅行者にも好評。
湾の入り口をしゃ断し、湾内に津波が入らないようにする防波堤のこと。津波を防止する方法としては、水際に防潮堤を設ける方法・湾口に防波堤を設ける方法とがある。防潮堤の場合、湾奥の水際線が港湾として利用されている地区では、港湾機能が著しく低下するため、大船渡湾に国内で初めて湾口防波堤が築造された。延長は 737mで、中央に船舶航行のために幅200m、水深16.3mの開口部があり、19億円の工費と5ヵ年の工期を費やし1966年(昭和41)に完成した。釜石湾に計画されている湾口防波堤は延長が2060mで、最大水深は60mにも達する。このような大規模な湾口防波堤の築造は世界にも例がなく、各界から注目されている。しかし防波堤によって潮流などが変化し、湾内汚染の進行が早まるので市下水の整備が必要である。
伝承童謡つまり自然発生的に子供に歌われてきた歌で、広義の民謡に属する。遊戯歌・歳時歌から動植物・天体気象の歌に子守歌などがある。遊戯歌では羽根つき・お手玉・手まり歌・鬼ごっこ・なわ跳び・子取り・氷滑りなど童戯のほとんどにわたる。元うたをたどると全国的に共通した祖型のものが多いが、県内を概括的にみた場合、富山の薬売りなどが広めたもの以外では旧南部・伊達藩域で方言とともに分布に多少の相違がある。童歌は一般にオクターブに至らない狭い音域で歌われ、最も単純な形では長2度音程の2音だけのものも含まれるが、上から長2度と短3度に分割されたテトラコードを基本とした例が多い。民謡のもつ音楽的特徴が最も端的に要約されており、民謡研究にも欠かせない分野になっている。
童戯。子供らは花や葉や石、昆虫など、何とでも遊ぶ。これを野のおもちゃと呼んでいる。この素朴な自然の草木と遊びながら子供らは、いつか観察し、科学し、自分のものにしていく。遊びは四季を通じて数限りがない。春にはべんべろこ(ネコヤナギ)のべろべろ遊び・地虫つり・フキノトウの秋葉山の火祭り山車。スギナつぎ・マンサク・カタクリの花のホオズキ・コブシ・ヤブカンゾウの笛・スミレの花のすもう・ウの花の田植え・ペンペン草の三味線・ヤマブキの風車・めんば・アケビの小人・カブト・カミキリ・ハサミムシ。キリの花輪・オキナグサ・タンポポのサイフォン・クリケムシ・スカンポ。夏にはマツの新芽・ホタルブクロ・ススキの矢・フジつき・蜜吸い・ヤンマの勲章・タチアオイのとさか・日でり雨・ナスちょうちん・花うらない・アシ笛・草笛・葉笛・ホオの葉のキツネの面・目ハジキ・葉ならし・ホオズキ・ゴボウの実・色素。秋には、ホウセンカの実・オシロイバナ・はんしゃ目がね・デガンボ(カマキリ)・サワカニとり・リンドウの花・シモフリトンボ・カキの葉人形・アリジゴク・ネコジャラシ・びらびらかんざし・カモジ草。冬には、渡り鳥・朝にじ・落ち葉たき・コロコロ木の実・返り花・カラスウリのちょうちん。すがっこ渡り・ジュズダラ・雪の面がた・あやとり・かげふみ・つらら・かまくら・竹とんぼ・かた雪渡り・ちいちいかれネギ・ヒイラギの風車・はなたかてんぐ・ツバキのぞうりなどがある。ほかに女の子は手まりつき・おはじき・だまとり・あやとりなどがあり、男の子には竹馬・輪んが回し・雪投げ・たこあげ・こままわし・男女いっしょのものでは、かげふみ・かげえ・はないちもんめ・ここはどこの細道じゃなどがある。
わらで作った人形で、よりしろ(依代)として物の怪を追い払うときに使われるもの。二戸市上斗米の虫祭りの人形が有名。旧6月24日、鎮守の蒼前さまから主婦たちの踊り、わら人形男女一対を踊らせる2人の男子、太鼓・手びらがね・笛それぞれ2人ずつ、人々は手に五穀成就・悪虫退散祭と書いた小旗を持って、約2kmの集落をねり歩いて村境までたどりつく。そして小旗と人形を道端に捨てて再び蒼前さまの境内に戻り、行列に参加した全員で飲食する。軽米町では田植えのあぜ道の所どころで大きな喚声をあげたり太鼓を高く打ち鳴らしたりして害虫の退散を願う。おしまいにわら人形は, 村外れの木に縛り付けてくる。