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津波対策 水門に誓う

普代村・普代川上流


普代村・普代川上流
 
 普代村の普代川河口から約300メートル上流に、1896(明治29)年と1933(昭和8)年の大津波被害を記録した「津波防災之(の)碑」がある。84年5月、津波対策の普代水門完成を記念し、水門のそばに村が建立した。
 村や東日本大震災記録誌によると、中心地区の死者は明治の大津波が95人、昭和の大津波は29人。直径が最大2メートルほどの自然石を使った碑(いしぶみ)から、過去の惨状が浮かび上がる。
 普代水門は、故和村幸得元村長が2度の大津波で犠牲者が出た教訓から築造を訴え、県営事業で実現。計画当初は財源や土地活用に村内でも賛否が分かれた。だが和村元村長は反対派を説得し、12年の歳月をかけ総工費35億6千万円を投じて完成させた。高さは明治の大津波の15メートル級にこだわり、15・5メートルの威容を誇る。
 和村元村長は88年発行の回顧録「貧乏との戦い四十年」で昭和の大津波の体験談を記した。「両側の山から、親父(おやじ)を呼ぶ声、母親を呼ぶ声。阿鼻(あび)叫喚とはこのことか、実に哀(かな)しい限りであった」。津波防災之碑は過去の津波被害記録にとどまらず、水門完成後も津波に対する警戒心を怠らぬようにとの願いが込められた。
 そして7年8カ月前の平成の大津波。先人の英断は、中心地区の尊い命を守った。

惨状忘れず次へ備え

故和村幸得元普代村長の顕彰碑。先人の教えを後世に残すため、「普代の石碑」編纂委員が調査を進めている
 2011年3月11日。東日本大震災の大津波は、普代村の普代水門(高さ15・5メートル)を越えて普代川をさかのぼり、木々をなぎ倒した。だが、中心地区の死者、住家被害はゼロ。津波被害を最小限に食い止めた水門は震災後、「奇跡の水門」とも称されている。
 水門建設に尽力した故和村幸得元村長の功績をたたえる顕彰碑が13年3月11日、村や住民によって建立された。明治、昭和の大津波被害を記録した津波防災之碑と並ぶ位置にあり、顕彰碑の裏面には「教訓を風化させず、後世まで受け継ぐ」と誓いを刻んだ。
 村では現在、こうした「津波碑からの教訓」を主要テーマの一つとして、冊子「普代の石碑」第2弾発行に向けた調査・編集作業が進んでいる。写真を多く盛り込み、石碑と共に末永く後世に残す資料にする。
 水門建設当時に村職員として関わり、冊子の編纂(さん)委員長を務める深渡定幸さん(67)は「これからどんな津波が来るかは分からない。恒久的に防災意識を高めるには、水門や石碑を通じて教訓を住民に訴えていくことが大事」と石碑調査に力を入れる。
 人工的な建造物の津波防災力に限界があることも震災の教訓だ。中心地区は震災時、水門に守られ大きな被害を免れたが、人命が奪われた2度の惨状を忘れず、次の災害に備えておくことが和村元村長の残したメッセージに他ならない。
 同村の旭日区自治会長で防災士資格を持つ新屋喜久男さん(67)は「組織的な防災対応も大事だが、普段の防災活動の中で個人に避難意識を浸透させ、高めていくことが私の仕事」と意を強くする。
 「二度あったことは、三度あってはならない」。顕彰碑の表面に刻まれた和村元村長の遺志は、脈々と受け継がれている。
高さ15・5メートルの普代水門に守られ、被害が最小限にとどまった普代村の中心地区(写真奥)=岩手日報社小型無人機で撮影
【2011年3月】 津波で木々がなぎ倒された普代水門周辺。死者や家屋被害はなかった(普代村提供)

2019年06月11日 公開
[2018年11月16日 岩手日報掲載]

碑の場所を確認する

普代村・普代川上流の津波防災之(の)碑

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石碑周辺の状況が体感できるVR動画は、東日本大震災の月命日に合わせて毎月1回配信します。
VR動画は、IE(インターネット エクスプローラー)ブラウザでは正常に再生できません。Microsoft Edge(マイクロソフト エッジ)・Google Chrome(グーグル クローム)・Firefox(ファイア フォックス)などのブラウザで閲覧することをおすすめします。