X 
このサイトでは、閲覧解析や広告改善のためにCookieを使用します。サイトを利用することでCookieの使用に同意頂いたものとします。オプトアウトや詳細はこちら「IBCサイト規定

<ニュースエコー 2023年3月15日>

「心の傷は癒えず」
被災地訪問重ねた僧侶 12年の節目に決意/岩手
 岩手県奥州市の僧侶が東日本大震災の発生後、被災地に支援物資を届けています。十三回忌を機に被災地訪問の終了を考えた僧侶ですが、住民の言葉が心を動かしました。
 奥州市江刺の興性寺でお経をあげているのは司東和光住職(74)です。

(興性寺 司東和光住職)
「新しい気持ちで前向きに日々を送っていくためには様々な困難があるわけで、そのような方々がなんとか立ち直って前を向いて生きていっていただければいいなと」

 司東さんは震災発生後の2012年から全国の僧侶や檀家などの協力を得て仮設住宅への支援活動を始め、多いときで年6回、支援物資を届けるため被災地を訪れました。4日かけて1500世帯ほどを回ったこともあるといいます。
 県によりますと東日本大震災の応急仮設住宅は2012年1月に最大となる1万3228戸ありましたが、おととし3月末で役目を終え、全ての入居者が退去しました。
支援物資を届ける司東和光さん

元・仮設住宅入居者の支援を継続 十三回忌・節目の被災地


 司東さんは仮設住宅閉鎖後も年1回元入居者たちを訪れ、日用品などの支援物資を届ける活動を継続しています。今年の3月11日、十三回忌の節目を迎えたこともあり、活動を終えてもよいのではと考えながら妻の真理子さんや檀家の山﨑素芳さんと3人で被災地に向かいました。

「ごめんください」「どうぞ」

 司東さんは大槌町、大船渡市、陸前高田市の仮設住宅の元入居者たちを訪ね、支援物資を手渡していきました。
 大船渡市三陸町に住む村上カツさんは、2012年から4年ほど仮設住宅に暮らしていましたが、現在は再建した自宅に住んでいます。

(村上カツさん)
「最初の10年は1人暮らしでしたけど、そのあと長男夫婦が埼玉から引き上げてきた。何もかにも世話になっている。私何も今言うことありません。幸せです」

 カツさんの笑顔に表情が和らぐ司東さん。改めてこの活動の終わりを考えますが…
心の傷は12年経てもなお

まだ終われない~心の傷知り被災地訪問の継続を決意


「こんにちは」

 県内最後の仮設住宅団地となった陸前高田市の滝の里仮設団地に暮らしていた村上勝也さんです。以前、司東さんがこの仮設団地を訪れる際、住民への声かけや集会所の予約をしてくれたのが村上さんです。おととしの3月から市営住宅に1人で暮らしていて、司東さんとはおよそ2年半ぶりの再会です。

「歳とってないような感じ。お元気で」
「4月ごろから主にプランターの土作りが始まる。立派な住宅に住まわせていただいて本当にありがたい」

 笑顔で今の暮らしについて語る村上さんですが、震災について聞くと…

(村上勝也さん)
「私の家族は大丈夫だったけど、いつになっても忘れられない、区切りできない。一生でしょうね」

 何気ない村上さんの言葉が司東さんの胸に刺さりました。

(司東和光さん)
「今は何もなくなって更地広場になっていますけど、かつてここに被災されて家を失くした多くの方々が住まわれていた場所」

 様々な思いが司東さんの頭の中を駆け巡りました。

「黙とう」

 午後2時46分。司東さんは毎年法要を行っている陸前高田市の泉増寺で犠牲者に祈りを捧げました。

(司東さん)
「12年経ってもあの日のことは踏ん切りがつくことはないという言葉があった。まさにその通りなのだろうと感じた」

 村上勝也さんの言葉で司東さんは決意を新たにしました。

(司東さん)
「震災の心の傷、悲しみ、苦しみから立ち直られない方々もお見受けいたしました。そのような方々がおられるうちは被災地に足を運んで参りたい」

 12年経った3月11日に心の復興はまだ先と感じた司東さんは、これからも被災地に足を運び続けます。
×