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<ニュースエコー 2023年1月18日>

間もなく12年・自然環境の復興は
~戻りつつある野鳥の宝庫 片岸公園/釜石市
 東日本大震災はさまざまな動植物が生きる自然環境にも重大な影響を及ぼしました。岩手県釜石市で津波防災と併せて自然環境の再生を試みる公園を取材しました。震災から間もなく12年、津波で失われた野生生物の生息地の今です。
 釜石市の片岸公園です。鵜住居川の河口に位置し、広さは約6.7ヘクタール。サッカー場およそ9個分の広さの公園は、大きな池の周囲に緑地や遊歩道が設けられ、憩いの場として市民に愛されています。

(公園を利用する人)
「(いかがですか公園は?)いいですよね。外回りと内回りの池(の遊歩道)があって変化に富んで、ハクチョウもけっこう増えてきました。散歩に来ている方もいるし、みんな楽しんで散歩していると思います」

 公園は地域の憩いの場としてだけでなく、防潮堤を越えて押し寄せた津波を一時的にこの場所にとどめ、周辺の住宅地への浸水を遅らせる減災の機能を担っています。
池に飛来したハクチョウと河口の水門

15mの防潮堤と巨大水門を整備 自然環境の再生は?


 公園とその周辺では毎年この時期になると水辺に生息する鳥たちの観察会が行われています。

(釜石野鳥の会 菊地利明さん)
「マガモが1羽ね、頭が緑の。はいはい、なんかつついていますね。だいたい野鳥は早起きなんで、朝早いうちに食事に行きますね」

 この場所で30年以上前から野鳥の観察をしてきた釜石野鳥の会の菊地利明さんです。

(菊地利明さん)
「津波の後ですね、直後に来てみたんですけど、すっかり何もなくなっちゃって本当に…。元通りになるのか(分からず)ちょっとがっかりしました」

 東日本大震災の前、このあたりは田んぼや畑が広がり、鵜住居川の河口には広い砂浜と手付かずの自然が残され、数多くの鳥や生き物を育んでいました。
 しかし2011年3月、津波によって生き物たちの生息地が失われてしまいました。
 震災後、復興事業によって高さ15メートルの防潮堤と巨大な水門が築かれ、津波への防災機能が強化されました。一方で、防潮堤によって海と分断されてしまった河口の自然環境をどう再生するかが課題になりました。
 「自然環境を残して欲しい」という市民の声に、釜石市は専門家の調査をもとに池を設計し、潮の満ち引きによって河口の水が池に流れ込む取水口を設けるなど震災前のような水辺の自然環境を再現しました。
戻りつつある野鳥の姿

「宝石」カワセミの姿も~工夫で戻りつつある“多様”な環境 さらなる努力へ


「あ、見えたーっ!」
「見えた?」
「わーいっぱいいた、ほらほら」
「来た来た」

 菊地さんによりますと、この冬はハクチョウがこれまでに36羽確認されているということです。
 この日はサギの仲間や水に潜ってエサをとるカイツブリ、そしてカモ類など28種類の鳥が確認されました。

(菊地利明さん)
「青い色、コバルトブルーでお腹がオレンジ色ですね」

 鵜住居川の河口では「飛ぶ宝石」と呼ばれるカワセミも、その美しい姿を見せてくれました。
 震災前はオジロワシやハヤブサなどタカの仲間も見られましたが、エサとなるサケが川に少なくなり、最近はめっきり姿が減りました。

(釜石野鳥の会 菊地利明さん)
「野鳥の種類がとても多い。種類が多いという事は多様な環境があって、野鳥それぞれの特性にあったいろんな環境があるということなので。いつも見にきていますけれども、ハクチョウも毎年来てくれるようになりましたし、(震災の)前と同じくらいに戻りつつあるのかなと思います」

 とはいえ震災前には50種類以上の野鳥が観察されていた年もあり、元の自然を取り戻すのは容易なことではありません。
 釜石野鳥の会の会長、臼澤良一さんは生き物たちの命を育む自然の再生は「これからが本番だ」と話します。

(釜石野鳥の会 臼澤良一会長)
「これだけではただ水辺ができただけで、そこの中に木があったりエサをとる田んぼがあったり畑があったりして、それがセットされて生き物にとってはそれが最終的な復興というか、そのように捉えてよろしいと思います」

 多くの鳥たちが戻ってきた釜石市の片岸公園。震災前のような豊かな自然のサイクルを取り戻すには、まだまだ多くの努力と時間が必要です。
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