<ニュースエコー 2022年12月7日>
				養殖と栽培を並行して
			
			
				「アクアポニックス」で課題解決を/大船渡市
			
			 			 
					
				 魚の養殖と野菜の水耕栽培を並行して行うシステム=アクアポニックスの施設が岩手県大船渡市で稼働を始めておよそ2か月が経ちました。新たなテクノロジーを駆使して産業を確立しようとする取り組みを取材しました。
 今年9月に大船渡市に開業した「アクアポニックスパークおおふなと」。開業式典には戸田公明前市長をはじめ、関係者およそ40人が出席しました。アクアポニックスは魚の養殖と野菜の水耕栽培を並行して行うシステムです。およそ2000平方メートルの敷地にチョウザメ最大2000匹が飼育できる水槽と、レタスなどの葉物野菜が1日1500株収穫できる水耕栽培設備が併設されています。
(大船渡市 戸田公明 前市長)
「すごい合理的な栽培方法だと思います」
 
				チョウザメ×レタス 被災地に誕生した新しい「循環型農業」とは
この施設は市の下水道浄化施設=大船渡浄化センターの使われていない土地を活用して整備されました。東日本大震災による津波で浄化センターも大きな被害を受けました。センターは復旧しましたが、30年ほど前に人口の増加などに対応するため設備を増設しようと確保していた土地が未活用のままとなっていました。
(メタウォーター 稲垣雄一郎さん)
「その空いた土地を使って何か有効なことができないかということを大船渡市さんでお考えになられていたところに私どもがこの下水の処理の仕事を任せていただいている縁もございまして、この施設をご提案いたしました」
魚の養殖と水耕栽培を同時に行う新しい循環型農業=アクアポニックス。
(テツゲンメタウォーターアクアアグリ 株屋進 社長)
「魚のふんですとか食べ残したエサをバクテリアが分解して、それが栄養分になって、その栄養分を使ってレタスが育つというサイクルになっています。水はまた魚の水槽に戻るという循環型の生産施設になっておりますので水を捨てないエコな栽培方法になってます」
 
				“キャビア”にも期待~スタートから2か月あまり 手ごたえと展望
稼働開始から2か月あまり。水耕栽培の4種類のレタスはみずみずしい葉を茂らせています。
(株屋進 社長)
「順調には育っておりますが事業計画の1日1500株にはまだ届いていませんので、これからどんどん生産の数量を上げていきたいと考えております」
運営会社の株屋進社長は一定の手ごたえを感じています。
(株屋進 社長)
「徐々に生産数量も上がってきておりますし、私自身が食べてもおいしいなと感じるものができていると思っております。早くみなさんのもとにお届けしたいなと考えております」
収穫までのスパンが短いレタスと違って、チョウザメの養殖には時間がかかります。
(株屋進 社長)
「3年から5年後に魚肉。オスは魚肉ですね。それからメスはいわゆる高級食材のキャビアが取れるようになります」
チョウザメが出荷できるようになるまでにかかる時間は最低でも3年。その時には新たなコラボ商品の開発も検討しています。
(株屋進 社長)
「この大船渡市、地元にも水産会社さんがいっぱいありますので、まずそこと協業できればいいのかなというふうに考えます。せっかくの高級食材キャビアが取れますので全国に届けられればいいかなと」
 
				SDGsにつながる取り組み~若者も入りやすい“食”産業に
エネルギーや水の処理を専門とする会社など3つの会社が集まって作った合弁会社で取り組む新たな産業=アクアポニックスは時代の流れに沿った事業でもあります。
(メタウォーター 稲垣雄一郎さん)
「若い人にもこういった形の農業もあるんだなということを知ってもらえると、将来、やっぱり食というのは切っては離せないものですので、そこに取り組む人が出てくるっていうのも期待しているところではあります」
(株屋進 社長)
「日本最大規模の施設に現時点ではなっていると思います。水を捨てない循環型の施設ということで、まさにSDGsにもつながる事業だと思っておりますので、そういった自覚をもって取り組んで参りたいと思います」
環境に優しく若い人も取り組みやすい。なにより空いた土地を活用して養殖や農業が展開できる。新たな形の産業が被災地・大船渡を舞台に動き始めています。
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