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<ニュースエコー 2022年6月8日>

おしゃれに食の備蓄を~被災した釜石のメーカー
ギフトになる「飯缶」開発/岩手
 岩手県釜石市の食品メーカーが三陸産の海の幸を使った「リゾット」の缶詰を開発しました。震災の経験から、災害時の備蓄食品を大切な人にギフトとして贈ろうという新しい発想です。
(リポート)
「気分は海の見えるイタリアンレストランです。イナダのトマトリゾット、本当に良い香りがします。(試食)おコメが玄米ということで、リゾットで柔らかくはなっているのですが、若干の噛み応えを残していてこれは絶妙な食感です」

 三陸産のイナダを大きめのブロックのまま玄米と一緒にトマトソースで煮込んだリゾット。実はこれ「缶詰」。商品名は「Gift&Stock」です。
 釜石市に本社がある岩手缶詰は、三陸産の魚介を使った3種類のリゾットの缶詰を開発し、6月から自社のインターネットサイトで販売を始めました。創業80年を超える缶詰会社でも、ご飯を使った缶詰はありそうで無かった手つかずの分野でした。
開発のきっかけは東日本大震災でした。

(岩手缶詰営業部 阿部常之さん)
「まさかあんな地震が、その津波が来るとは思いませんでした」

 商品開発に携わった阿部常之さんです。岩手缶詰は津波で大船渡市にあった2つの工場が全壊しました。その後、阿部さんのいた盛岡工場にも沿岸で被災した多くの従業員が移ってきました。一方、震災は缶詰の価値を見直すきっかけになったといいます。

(岩手缶詰営業部 阿部常之さん)
「缶詰は煮るとか、焼くとか、そういった必要がないんですね。ただもう開ければすぐに食べることができる。非常に防災食という点ではですね。見直されたとは思います」
開発に携わった岩手缶詰・阿部常之さん

デザインにこだわる~備蓄食品を贈り物に


 防災備蓄用としての優位性が示された一方で、おかずとしての性格が強く主食にはならない…。そこで震災後、開発に着手したのが、「飯缶(めしかん)」と呼ばれるご飯を使った缶詰でした。玄米を使用した魚介入りのリゾットにすることで商品は完成しましたが、もう一つ課題が残りました。

(岩手缶詰営業部 阿部常之さん)
「みなさん備蓄という意識は非常にあると思うんですが、なかなか自分で揃えたりとか、分かってはいてもちょっとなかなかできない」

 備えを怠ったり備えていても消費期限を過ぎてしまっていたり、時に後手にまわりがちな非常時の備え。そこで取り入れられたのが広告代理店の「博報堂」と企画デザイン会社「Takuram」が考案した、備蓄食品をお土産として大切な人に贈るというアイデアです。

(岩手缶詰営業部 阿部常之さん)
「衝撃的ですよね。こういう考え方があるんだという。驚きました」

 デザインにもこだわりました。

(阿部常之さん)
「備蓄といいますと、例えば棚の奥にしまっておくとか、多分そういうイメージが強いと思うんですね。でももし仮にこれが有事の際に棚が倒れてしまったりすると取り出すことができないんですよ。これはもう日常から手の届く場所に置いていただける。おしゃれなデザインですし、インテリアにも備蓄にもなる」

 「備蓄食品を贈り物に」という新しい発想。賞味期限は3年間で、震災で大きな被害を受けた食品会社が、もしもの時の「食」を支えます。
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