<ニュースエコー 2021年12月1日>
				学校備品を出品
			
			
				自治体がフリマアプリを活用する狙いは/山田町
			
			 			 
					
				 11月下旬、岩手県山田町が閉校となった学校の備品をフリーマーケットアプリ「メルカリ」に出品しました。備品は売れたのでしょうか。そして町がメルカリに出品する狙いは何なのでしょうか。
 11月17日、山田町の体育館の入り口で町の職員が楽器を綺麗にしていました。よく見ると太鼓の胴には「大沢小学校」と書かれています。「(これ学校の備品ですよね?)そうですね、はい。閉校した大沢小学校で使っていた太鼓です。これを『メルカリ』に出品して購入希望者がいたら買っていただく」
「メルカリ」とは月間利用者2千万人を誇るフリーマーケットアプリで、2013年にサービスを開始しました。スマートフォンひとつで簡単に不用品の売り買いができます。出品者が設定した価格で売買が成立すると10%の手数料がメルカリに入る仕組みです。
この日行われていたのは去年閉校した大沢小学校で使われていた楽器など10点をメルカリショップスに出品するための作業だったのです。
山田町は今年9月、東日本大震災の被災自治体としては初めてメルカリと連携協定を締結しました。メルカリの持つノウハウやネットワークを活用することで地域経済の活性化を図りたいという双方の願いが込められています。
 
				予算規模は震災前の水準に~若手職員による「研究会」で新たな施策
2012年に入庁した山田町財政課の及川智弘さんです。販売金額は物品売払代金として歳入に繰り入れられることから、汚れの除去に余念がありません。
(及川智弘さん)「これらを処分するとなると逆に処分料=お金を払う側になってしまいますので。売って得る収入のプラスよりもマイナスの減少が大きなメリットかなと思います」
不要となった品物をメルカリへ出品することでマイナスをプラスに変える・・・町の財政にとっては金額以上の効果があるのです。マーチング用のスネアドラムやテナードラムなど10点がそれぞれ1万円前後の値で出品されました。
山田町は今年から及川さんら震災後に入庁した若手職員による研究会「若手職員施策等研究会」を設立し、「移住」、「結婚」、「仕事」の3つのテーマで施策立案に向けた活動を進めています。研究会の中心メンバーである鈴木翔太さんは、震災から10年を経て、被災自治体の役割も新たなステージに入ったと考えています。
(鈴木翔太さん)
「10年とりあえず復興に集中して取り組んできました。なので次のステージに進まなくてはならない。そうした中、メルカリという大きな企業からお話をいただいたので、そういった企業とか民間活力は非常に重要になると思います」
震災発生から10年、巨額の復興事業で震災前の10倍近くにまで膨らんだ町の予算は、今年度、ほぼ震災前の水準にまで戻りました。今後町の収入である町民税や固定資産税といった町税をどう活用するかが問われますが、人口減少は今後の税収に深刻な影響を及ぼします。
 
				売れ行きは・・・「その先の展開」を見据え、職員の挑戦は続く
11月25日にメルカリに出品してから5日が経過し、再び財政課を訪ねました。
「(購入の状況はいかがですか?)10品出したんですけど、一つも今現在、売れていない状況ですね。(・・・ちょっと残念ですね)そうですね。色々原因は探ってはいるんですけど」
設定金額が高かったのか、残念ながら12月1日時点で売買は1件も成立していませんでした。しかし及川さん、落ち込むどころか、かえってやる気がみなぎっているようです。
(及川智弘さん)
「ノウハウを蓄積するのが大事だと思っていて。ノウハウを蓄積した後は、町の海産物・農産物の販路を拡大していただければなと。そこの手助けをできるかなと」
メルカリへの出品は、町がノウハウを蓄積し、それを町内の事業者へ共有するためでもあったのです。出品した楽器についても今後、金額を再設定して最適な値付けのノウハウを獲得したいと考えています。
(及川智弘さん)
「ハードルがメルカリがあることでぐっと下がると思うので、そこの点でどんどん使っていただきたいなと思っています。そうすることで町の発展にもつながると思うので。産業も伸びていくと思うので、そこに期待しています」
震災発生から10年を経て新たな課題と向き合う被災自治体で、震災後に入った若手職員たちが新しい取り組みを始めています。
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