2021年3月17日IBCニュースエコー内で放送
				震災で打撃…
			
			
				先進国に学び、資源と暮らしを守る毛ガニ漁へ/岩手
			
			 			 
					
				東日本大震災で施設や船に大きな被害を受けた岩手の水産業。不漁という新たな問題に直面する中、旬の毛ガニ漁の現場では漁業資源を守りながら浜の暮らしを成り立たせる取り組みが進められています。
キロ7000円以上の高値で落札されているのは今が旬の毛ガニ。主にカゴ漁で獲られる毛ガニは三陸沿岸の冬場の貴重な収入源です。
水深200メートルにエサを入れて仕掛けたカゴが80個。20メートル間隔で連なっています。しかし、引き上げられるカゴは空のものが目立ちます。
Q.今シーズンの漁はどうですか?
(瀧澤英喜さん)「いつもの年の半分くらいですね」
カゴ漁歴30年以上、大船渡市三陸町の瀧澤英喜さん。東日本大震災では津波で漁船や養殖施設を失い、およそ5000万円の被害を受けました。
施設や船の復旧は進んだものの、今は深刻な不漁が頭を悩ませています。
県内の毛ガニの漁獲量は震災前と比べると3分の1に留まっているのです。原因は資源量の減少とみられています。
しかも、せっかくカゴに入った貴重な毛ガニも…。
Q.逃がしちゃうんですか?
(瀧澤英喜さん)「8センチないから、放流しています」
 
				漁獲可能なカニの規格変更、その狙いは?
岩手県は2018年、漁獲可能なオスのサイズを「7センチ以上」から「8センチ以上」へと1センチ引き上げました。
研究者の立場から助言をした岩手大学三陸水産研究センターの後藤友明副センター長です。
(岩手大学三陸水産研究センター・後藤友明副センター長)
「現場の漁業者のみなさんが話し合って、値段の取れない小さなカニ、これで稼ぐというスタイルだともたないんじゃないかと徐々に浸透し始めてきて」
去年12月、70年ぶりに改正された新しい漁業法でも資源を適切に管理することで水産業を成長産業に転換させることを目指しています。漁師にとっては目先の収入を手放すことを意味する漁獲サイズの変更。カゴ漁師でつくる団体の会長を務める瀧澤さんが苦渋の決断を下したきっかけは、震災の翌年、復興支援の一環で招かれた漁業先進国のノルウェーにありました。
 
				漁業先進国ノルウェーに学び水産業を成長産業へ
(瀧澤英喜さん)「(ノルウェーは)漁獲制限やいろんな面で規制しながら、値段の高いところを獲っている。日本の場合は獲ったもの勝ちでやっていたのがずっと続いてますからね」
Q.いいのがきましたね?
(瀧澤英喜さん)「こういうのばっかりとはいかないですからね」
この日、瀧澤さんが水揚げしたのは、単価の高い大きいサイズを中心に56.7キロ。40万円近い収入となりました。漁獲サイズの引き上げもあって毛ガニの水揚げ量は減少していますが平均単価は逆に上昇しています。
(瀧澤英喜さん)「大きいのばっかりですよね。コロナ禍でいろんな飲食店がやめていたりする中でこういう値段(高値)になって、こういう数量が獲れるとは予想もしてなかった。これでいいですよ」
「獲れるだけ獲る」から「価値の高い魚を適正な量、獲る」へ。
成長産業への転換を目指す取り組みが始まっています。
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