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645回「キキクル ОN ハザードマップ」2021年9月25日OA

2021年09月25日 6:00 PM

IBCが提供するスマートフォン向け「IBCつながるアプリ」に、今月、新機能「キキクル ON ハザードマップ」が搭載されました。IBCと防災情報提供会社のゲヒルンが共同で開発したものです。キキクルとは、気象庁が発表する、大雨による災害発生の危険度の高まりを地図上で確認できる危険度分布の愛称です。地図上に危険度を5段階に分け表示して伝えます。今回IBCアプリでは、県内の洪水や土砂災害のハザードマップの上に、このキキクルの情報を重ねて表示するものです。これまでは、ハザードマップとキキクルの情報を別々に確認する必要がありました。しかしこの新機能により、大雨などの災害が迫った際に、自分がいる場所のハザードマップと、リアルタイム情報としての危険度分布を同時に見比べることができ、自分が置かれた状況を客観的に把握して、避難の判断などに役立てることができます。尚、県内の洪水と土砂災害のハザードマップは、岩手県から提供された今年9月現在の最新のものを表示。雨が降っていなくても身近な場所のハザードマップとして、いつでも確認することができます。

この新機能について滝沢市のオルガンさんからメールを頂きました。「IBCアプリにキキクルが追加されたと聞いたので見てみたら、何と自分の家の周りの地図上に雨や洪水などの情報が載って見られるので驚きました!雨雲レーダーで現在地まで表示できるサイトはありますが、まさに自分の家の所がはっきりわかるのでいいですね。キキクルを活用するような天気にならないほうがいいですが、いざという時のために安心です」。ありがとうございます。

私もこの新機能を実際に使ってみました。県内は低気圧の通過により17日夜から18日にかけ沿岸南部で大雨となり、大船渡では降り始めから200ミリ近い雨量を記録、午後は一時、土砂災害警戒情報が出されました。夕方「キキクル ОN ハザードマップ」の内、右上の「土砂」というキキクル=危険度分布を開いてみると、大船渡の市街地が赤色の「警戒」に覆われ、国道45号沿い西側の土石流危険区域と重ねて表示されました。特にどのエリアで警戒が必要か、一目で分かりました。この機能は「IBCつながるアプリ」をダウンロードするか、既にダウンロードしている場合はバージョンアップすることで御利用になれます。

639回「気象病・天気痛」2021年8月14日OA

2021年08月14日 6:00 PM

「気象病」という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。国語辞典にも載っていて、広辞苑第七版によりますと、『気象の変化と関係があると考えられる種々の病症の総称。特にフェーン現象・前線・気温などとの関わりが深い。喘息・頭痛・神経痛・リウマチ』などとあります。

天気が悪くなると痛みが悪化したり、寒暖差により不調になったりすることを「天気痛」と名付け、日本初の気象病外来・天気痛外来を立ち上げた医師が、中部大学・生命健康科学部理学療法学科の佐藤純(じゅん)教授です。佐藤教授の著書「天気痛を治せば 頭痛、めまい、ストレスがなくなる!」(扶桑社)には、天気痛対策として、自分の体のリズムをつかむ為の日記の他、市販の酔い止めの薬を勧めています。乗り物酔いをした時の、気持ちが悪くなる、吐き気、頭痛、眠気などの症状は、天気痛そのもので、原因が耳の最も奥にある内耳の急激な揺れから来ているところも同じ、とのことです。その他、手軽に効果が期待できるのが「耳の後ろにあるツボ押し」や「耳の血流マッサージ」です。マッサージは、耳を真ん中から、縦に2つに折り曲げます。力を込め過ぎず優しく行い、更に耳全体をマッサージすることも勧めています。目的は血流の促進で、耳の周りの血流が悪いと内耳の中にあるリンパ液も一緒に滞り、めまいや頭痛などの症状を引き起こすと考えられるから、ということです。

中部大学のHPによりますと、佐藤教授は、愛知医科大学・医学部と日本獣医生命科学大学・獣医学部との共同研究により、マウスにも、内耳の前庭(ぜんてい)と呼ばれる器官に気圧の変化を感じる場所があることを、世界で初めて突き止めました。今回の研究成果から『私たち人間においても天気の崩れによって前庭器官が気圧の微妙な変化を感じとり、脳にその情報が伝わり、結果として古傷や持病の痛みを呼び覚ましたり、めまいや気分の落ち込みといった不調を起こしたりするものと考えられます』『今後も研究を続け、どのようなメカニズムで前庭器官が気圧の変化を感じ取るのかを明らかにしていきます。また、このメカニズムを明らかにすることで、気象病や天気痛の有効な治療法の確立に繋げていきます』としています。

 

638回「荒井郁之助」2021年8月7日OA

2021年08月07日 6:00 PM

岩手出身の作家・平谷美樹(ひらやよしき)さんが著した「鍬ヶ崎心中 幕末宮古湾海戦異聞」(小学館)を拝読しました。幕末から明治へと移り変わる動乱期の史実である宮古湾海戦が、無名の男女の物語を通してリアルに想像でき、胸が熱くなりました。

宮古湾海戦は、明治2年3月25日、旧幕府軍残存艦隊の内の「回天」が、新政府軍艦隊の集結する宮古湾へ攻め込んだ奇襲戦のことです。宮古市の資料によりますと、旧幕府軍は荒井郁之助を総司令官に、回天一隻で宮古港に停泊する新政府軍の軍艦「甲鉄」奪取を決行。回天の船首が甲鉄の脇腹に乗り上げ、兵士が甲鉄の甲板に飛び降りて戦いますが、甲鉄側も猛反撃を開始。速射砲が火を吹き、旧幕府軍の兵士は次々と倒れ、わずか30分あまりの戦いで多数の死傷者を出し作戦は失敗に終わり、退却します。江戸を離れ、遠く蝦夷の地に独立国を建設しようとした旧幕臣達の夢物語は、宮古の海に砕け散ったのでした。

さて旧幕府軍の総司令官・荒井郁之助は、日本の気象事業の始まりを支えた1人でした。原田朗(あきら)著「荒井郁之助」(吉川弘文館)によりますと、1836年(天保七年)に旗本の家に生まれた荒井は、軍艦操練所で近代的な艦船の運用の他、地政学、天文学、高等数学などを学び、幕府の命を受けて江戸湾の測量を行いました。小笠原諸島の測量では、海図も天気図も無い危険な航海で暴風雨に遭い、この経験が後の気象事業に生かされることになったと思われます。戊辰戦争の際は、軍艦頭として開陽・回天などの幕府の艦隊を率いて、新政府の許可無く江戸湾を脱走し蝦夷に向かいました。その後宮古湾において新政府軍と戦い、或いは榎本武揚とともに箱館五稜郭に奮戦しますが、敗れて獄に下ります。2年半後、西欧の科学技術に詳しいことから出獄を許され新政府に受け入れられます。内務省地理局では、一大三角測量の実施、1mを3尺3寸とするメートル法の導入、日本の経度基準点の決定、日本標準時の制定など、今日の地球物理学の礎を築く多くの重要な仕事を行っています。明治20年には新潟で、日本初の本格的な皆既日食の観測に成功。その後は地理局において測候所の全国整備を行い、明治23年、気象庁の前身である中央気象台が設置されると、その初代台長に就きました。荒井郁之助は、幕末から明治の激動期、時代に翻弄されながらも自然科学の分野で確固とした仕事を残したのでした。

 

612回「水循環型手洗いスタンド」2021年2月6日OA

2021年02月06日 6:00 PM

現在、盛岡駅西通一丁目、岩手県民情報交流センター「アイーナ」には、水循環型手洗いスタンド「WOSH」(ウォッシュ)が設置されています。水道の無い場所でも清潔な手洗いができる全く新しい手洗いスタンドです。形は公共施設で見かけるウォータークーラーに似ています。WOSHは白いドラム缶型で、高さ約1m、直径60センチ、一番上には水飲みではなく手洗いのシンクがあります。蛇口とハンドソープが出るノズルがついていて、手を触れずにセンサーで使用でき衛生的です。WOSHには20リットルの水をろ過する3つのフィルターの他、それを制御するAI=人工知能が入っています。ウイルスを死滅させ不純物をキレイにし、使用後の水を水道水の基準まで浄化し循環させることで、最大500回の手洗いが可能ということです。私も体験してみましたが、シンクの青いリングが光りながら1周するまで、たっぷりの水でもみ洗いし、実に気持ちの良いものでした。

WOSHは、元々、東京にあるWОTA(ウォータ)という会社が開発しました。そして今回、WОTAと提携している、ガスの製造販売などを行う北上市の「北良(ほくりょう)」が設置したものです。北良の笠井健(かさいけん)社長によりますと「5年前の熊本地震で被災地支援に訪れた際、避難所で手を洗えない為にノロウィルスやインフルエンザといった感染症が発生していました。断水になってもできる手洗いが必要だろうということで、こちらの開発に乗り出しました」ということです。石鹸と流水による手洗いは、最も基本的で効果のある感染症予防策とされており、手指についた菌・ウイルスを100万分の1まで減少させ主な感染経路である接触感染を防止する効果があるということです。笠井社長は「災害時だけではなく、野原やイベント会場の真ん中などにも持ち運びができます。新型コロナ禍の中、又、終息後も衛生的な環境を維持し、岩手県を災害と感染に強い地域にできれば」と語っていました。

「WOSH」は現在、東京のデパート・百貨店、JRの駅構内やコーヒーショップなど、多くの人が出入りする場所に徐々に置かれています。県内ではアイーナ3階総合受付付近に2月12日(金)まで設置されています。

607回「防災拭い 新型コロナ編」2021年1月2日OA

2021年01月02日 6:00 PM

去年4月、この番組で取り上げた「防災拭い」に、新しく「新型コロナウイルス編」が加わりました。制作、販売しているのは、デザインを手掛ける滝沢市大釜にある有限会社「クワン」です。「防災拭い」とは、災害を防ぐ「防災」と日本古来の「手拭い」をかけた造語です。災害時に落ち着いて行動するための手順や防災情報を厳選し、わかりやすいイラスト付きで手拭いに印刷しています。大きさは縦34センチ、横幅は100センチ。よく見かける手拭いより10センチ長くなっています。2005年に「防災グッズ編」と「地震編」、その後、「津波編」などを全国で販売、累計販売枚数28万枚を超えた商品で、今回の「新型コロナウイルス編」はその第6弾となります。クワンでは、以前よりインフルエンザやノロウイルスなども災害と捉え感染症対策編を企画していたところ、新型コロナ感染が拡大したことから、本格的に制作を開始したということです。

この防災拭いは、左上には「クラスター(集団)感染発生のリスクを下げるため、3つの密の空間を避ける」とイラストと分かりやすい文章で描かれていて、その下には「日常生活の中でできる予防対策」として、人との間隔をできるだけ2m空けることや、こまめな換気など、8つの新しい生活様式の実践例が解説され、防災拭いの右側には「正しい手の洗い方」「正しいマスクの使い方」が描かれています。これらの情報は岩手医科大学附属病院の櫻井滋教授が監修しました。

「新型コロナウイルス編」は、県内の住宅メーカーが感染予防の取り組みとして、1月より来店者に配布することになったなど多くの反響があるとのことです。小野公司社長は、『軽量で薄いので、畳むとコンパクトになります。鞄に入れて毎日、持ち歩いてもかさばりません。いざという時には簡易マスクになります。更に洗っても色落ちせず、乾きやすいので、お手入れしやすく便利に使えます。冬はインフルエンザや風邪のリスクも高まりますので、感染症予防意識を高めるツールとして1人1枚、お持ちいただければ』と勧めています。1枚税込み550円で、取扱店など詳細はインターネット「防災拭い」で検索すると御覧になれます。

 

606回「日本の気候変動2020」2020年12月26日OA

2020年12月26日 6:00 PM

気象庁と文部科学省は、地球温暖化による将来の予測を「日本の気候変動2020」として取りまとめました。今世紀末の世界の平均気温について、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の目標を達成した場合の「2度上昇」、現時点を超える追加的な緩和策を取らなかった場合の「4度上昇」、この2つの想定を盛り込んでいます。

具体的に見てみると、世界の平均気温「2度上昇」では、日本の平均気温は1.4度上昇、北日本ではそれより高い1.5度上昇。1日の最高気温が35度以上の「猛暑日」は全国平均で2.8日増加、北日本では0.7日増加。夜間の最低気温が25度未満の「熱帯夜」は全国平均で9.0日増加、北日本の太平洋側で1.4日増加。最低気温が0度未満の「冬日」は全国平均で16.7日減少、北日本の太平洋側では19.2日減少する予測です。世界の平均気温「4度上昇」では、日本の平均気温は4.5度上昇、北日本の太平洋側ではそれより高く4.9度上昇。猛暑日は全国平均で19.1日増加、北日本の太平洋側では6.6日増加。熱帯夜は全国平均で40.6日増加、北日本の太平洋側では18.3日増加。冬日は全国平均で46.8日減少、北日本の太平洋側では62.8日減少する予測です。つまり猛暑日や熱帯夜はますます増え、冬日は減るのです。

降水に関しては、雨の降る日数は減少するものの、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加すると予測されています。1日の降水量が200ミリ以上の日数は「2度上昇」では1.5倍に増加、「4度上昇」で2.3倍に増加するという予測です。つまり激しい雨が増えるのです。又、地球温暖化に伴い、雪ではなく雨が増えることから、降雪量、積雪量共に「2度上昇」では現在の7割から8割弱に、「4度上昇」では現在の3割から4割に減る予測です。ただ気温の上昇により大気中の水蒸気量が増え降水量が増加します。そもそも雪が融けないような寒冷な地域であれば、大雪のリスクはあるとしています。そして水蒸気量増加は台風のエネルギー源が増えることに繋がるので、強い台風の割合が増加し、台風に伴う雨と風は強まりそうです。温暖化を緩やかにする為に、私たちの暮らしの中の省エネをより進めることが必要です。

 

604回「虹と暈(かさ)」2020年12月12日OA

2020年12月12日 6:00 PM

虹は「太陽と反対側」に、空気中の「水滴」に当たった光により出現します。英語のレインボー、レイン=雨で作られたボー=弓は、現象をよく表しています。日光ではなく、稀に月の光によっても現れるようです。倉嶋厚著「季節ほのぼの事典」(東京堂出版)には、昭和8年7月4日に北海道の寿都(すっつ)測候所で夜の虹を観測した、という記述があります。「その夜は月齢が11.1の弓張り月だった。朝から晴れていたが、夜になると霧が現れ南東の強風とともに切れ切れに飛び、霧雨のように降った。月は夜の8時半ごろに南中し、次第に南西の空に移った。そのころ、北東の空に白い虹が淡く現れ、次第に濃くなった。虹の上の方は純白だったが内部は少し青かった」ということです。月光の虹とは、何とも神秘的な光景です。

虹と似た現象で「暈(かさ)」があります。漢字で日曜日の「日」の下に軍隊の「軍」と書きます。暈は虹と違い、「太陽と同じ方向」に現れ、空気中の「小さな氷の結晶」に当たった光により出現します。氷の結晶でできた薄い雲が広がっている時、その雲を通して太陽や月が見え、その周りに光の輪ができることがありますが、それが「日暈(ひがさ)」「月暈(つきがさ)」です。

さて盛岡のルンルンさんからお便りをいただきました。ありがとうございます。「11月27日午後4時半過ぎに近くのスーパーに出かけました。太陽が沈む前でしたがお天気も良く明るかったです。風もなく穏やかでした。でも虹がありました。輪になった方は消えていましたが、太陽を挟んで両側に虹の太い柱が立っていました。太陽と同じ側に虹があったのです。普通太陽と反対側に虹ができますよね。そしてお天気なのに。虹の上にはうろこ雲のような雲がありました。虹もくっきりでした。しばらく虹は消えませんでした。この現象をお聞きしたいです」。ルンルンさんが御覧になった現象は、太陽と同じ方向ということなので、虹ではなく日暈の一種で、しかも幻の日と書く「幻日(げんじつ)」と思われます。風もなく穏やかだったということから、氷の結晶が浮かびやすい条件だったのでしょう。幻日は、日暈の光の輪の、太陽の両側にあたる部分が特に光った現象です。珍しい自然現象を見られて、何か良いことがあるかもしれませんね。

 

603回「地震時計」2020年12月5日OA

2020年12月05日 6:00 PM

遠野の70代男性からお便りをいただきました。ありがとうございます。「小生が子どもの頃(昭和30年代)家に『地震時計』らしきものが貼ってあり、祖母が地震の度に『雨が降るぞ』とか言っていました。B4版ぐらいの紙に時計が書いてあり、文言は記憶していませんが祖母は『4・6の雨に・・・』とか言っていました。天気予報の歴史の一端にあるか気になりました。何だか富山の家庭の置き薬屋が紙風船とか一緒に配ったような気がします」とのことです。

盛岡市教育委員会事務局歴史文化課に問い合わせましたが、残念ながら地震時計そのものは所管する博物館施設にありませんでした。ただ地震の時刻で天気を予想する言い伝えは、県内の民族関連の書籍に記されていました。その内、岩手県教育委員会が昭和57年3月に発行した「岩手の俗信 第二集 天文気象に関する俗信」には、「地震による天気予察」という記述がありました。『往時、地震の事や天気の事等が不可思議であった事から、この間には何か関係があるかと推量し、次のような歌が生まれています』として、胆沢、江刺、釜石、東磐井、盛岡に伝わる『九は病、五、七が雨に四つ旱、六つ八つは風とこそ知れ(くはやまい、ごしちがあめによつひでり、むっつやつはかぜとこそしれ』と紹介しています。

これらの数字は昔の時刻の表し方です。日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 大衆芸能編 寄席」のHPでは、江戸時代の庶民の時刻の表し方について「午前0時が九つで、約2時間ごとに八つ(やつ)、七つと数が減り、四つ(よつ)まで行くと再び九つになります。9は1桁の中で一番大きい数字なので縁起がよいという考え方があり、九つから始まっています。本来、次はその2倍の18、その次は3倍の27なのですが、数字が大きくなって数えるのが大変なので10の位を取り除き八つ、七つと表しています」と解説しています。つまり先程の歌であれば、0時(九)に揺れが来れば病気がはやる前兆、8時(五)と4時(七)なら雨が降り、十時(四)は日照り、六時(六)と二時(八)に揺れれば大風の吹くしるしだ、と言うことです。これらは迷信ですが、先人の残した言葉に触れると、自然を理解しようという探究心は今も昔も変わらない、ということを実感します。

601回「小春」2020年11月21日OA

2020年11月21日 6:00 PM

陰暦10月の別名は前回お伝えした「時雨月」の他「小春月」という呼び方もあります。今日は「小春」についてです。11月は平地でも雪が降り出し、近づく冬の足音を実感しますが、そんな中にも、一時的に、穏やかに晴れて暖かくなる日があります。晩秋から初冬に、大陸から進んできた移動性高気圧に覆われ、まるで春を思わせるような暖かさになる日を「小春日和」と言います。

倉嶋厚著「季節おもしろ事典」(東京堂出版)には、小春日和のことをアメリカで『インディアン・サマー』と表現すると解説しています。アメリカ先住民が、思いがけず現れた暖かい日を利用して、冬ごもりの支度をしたり、南に移動するため平原に姿を現したりするため、とのこと。この言葉はヨーロッパにも伝わって用いられていて、日本の春や秋のように快適な気候のようです。しかしこぼれ話として、日本の気候学者が知らずに『インドの夏』と訳してしまったため、「外国の小春日和はよほど暑いのだろう」と誤解を生んだエピソードも紹介されています。同じく倉島厚著「季節つれづれ事典」(東京堂出版)には、小春日和に相当する各国の言葉として、ドイツ語の「老婦人の夏」、ロシア語の「女の夏」を挙げています。理由として「小春日和の青空の下、キラキラ光りながら飛ぶクモの糸が、白髪に見え女性を連想させた」という説は美しく、興味深い話です。

冬の季語「小春」は「春」の字が使われているため、「春先の暖かい日」のことと誤解されることがあります。文化庁が行っている国語に関する世論調査で「小春日和」について尋ねた際、本来の意味である「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は51.7%、又、本来の意味とは異なる「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は41.7%と、僅差でした。年齢別に見ると「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は50~60代で他の年代より高く6割前後でした。一方、「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は、16~19歳で66.1%、20代で54.5%と他の年代より高く5割を超えていました。言葉は変化していきますので、今後、本来の意味ではない「春先の暖かい日」に使う人の方が大勢を占める日が来るかもしれません。

600回「時雨」2020年11月14日OA

2020年11月14日 6:00 PM

旧暦10月、今年は現行暦で明日11月15日から始まります。旧暦10月の別名を時の雨と書く「時雨月」と言います。今日はこの「時雨」についてです。時雨は、晩秋から初冬にかけ、空が曇り、急にぱらぱらと降ってはやみ、数時間で通り過ぎてゆく雨のことです。広辞苑には「『過ぐる』から出た語で、通り雨の意」とあります。大陸からの寒気が日本海の海面で暖められ、積雲や積乱雲が次々と通る為に起こります。通り過ぎた雲と、次に来る雲の間に日光が差し込んでできる虹を「時雨虹」と言います。虹は太陽の光が斜めに差し込む朝や夕方に多いのですが、太陽高度が低い晩秋から初冬に南が晴れて北が降っているような時、日中でも北の空に虹が現れることがあります。夏の鮮やかな虹とは違う、淡い日差しでできる儚い虹です。通り雨の意味の他、細かく切ったショウガなどと一緒に煮たハマグリなどのつくだ煮である「時雨煮」の意味もあります。その語源は、時雨月のハマグリは味が良いという説があるようです。

時雨は昔から詩歌に最もよく詠まれた雨の一つのようです。平安の都、京都の北側を囲む山地から降る雨を「北山時雨」と呼ぶように、時雨といえば北山が有名です。厳しい冬が来る前に、降ったり照ったりする空模様と人生を重ね合わせたのでしょう。時雨は冬の季語です。種田山頭火の自由律の句「うしろすがたのしぐれてゆくか」。時雨が降る中をとぼとぼ歩み去って行く、わびしい後ろ姿を見つめるもう一人の自分を詠んだものです。時雨には小さな夜と書く「小夜(さよ)時雨」という言葉もあります。夜に降るしぐれのことです。志田野波(やば)の句「小夜しぐれ隣の臼は挽きやみぬ」。旅の宿で時雨が通り過ぎると、さっきまで聞こえていた近くの民家の石臼を挽く音はもう鳴り止んでいた、という静かな冬の夜の趣を表しています。

演歌には、都はるみさんの「大阪しぐれ」、同じく都はるみさんと岡千秋さんの「浪花恋しぐれ」のようにタイトルに使われている曲があります。大阪では、冬型の気圧配置になると日本海側の雨雲の一部が流れ込み、しぐれることがあります。その時雨の比喩的な意味である「涙ぐむ」を、人生の涙になぞらえたものと思われます。

598回「住宅用火災警報器の効果」2020年10月31日

2020年10月31日 6:00 PM

今日は住宅用火災警報器についてです。大切な命を守る為、平成16年に消防法が改正され、全ての住宅に住宅用火災警報器の設置が義務付けられました。消防庁によりますと、住宅火災で犠牲になる方は逃げ遅れが最も多く全体の約6割を占めています。時間帯別にみると、火災件数自体は起きている時間帯が多い一方で、火災死者数は就寝時間帯の方が多くなっています。就寝中、火災発生に気づく為に、火災警報器は「寝室」に設置することとされています。又、寝室が2階にある場合は、火災による煙が集まりやすく、寝ている方にとって唯一の避難経路となる「階段」にも設置することとされています。

火災警報器は、どのくらい効果があるのでしょうか。平成28年から平成30年までの3年間における失火を原因とした住宅火災について、火災報告を元に住宅用火災警報器の効果を調査したデータがあります。死者数、焼損床面積及び損害額を見てみると、住宅用火災警報器を設置している場合は、設置していない場合に比べて、死者の発生は約4割減り、焼損床面積と損害額は概ね半減するという分析になりました。住宅用火災警報器を設置すれば、火災発生時の死亡リスクや損失の拡大リスクを大幅に減少することが証明された形です。住宅用火災警報器の全国の普及率は令和元年6月1日時点で82.3%。岩手県の普及率はそれをやや上回る83.8%です。しかし併せて行った全国での維持管理に関する調査では、作動確認を行った約68%の内、約1%で電池切れや故障が確認されたということです。本体の交換の他、定期的な動作確認が重要といえます。改めて我が家の火災警報器を確認すると、2006年製で、既に14年経過していました。ボタンを押すと警報音が鳴り作動しましたが、10年を経過すると電池切れや電子部品の寿命で、いざという時に作動しない恐れがある為、先日、新品に交換しました。

これから冬になると空気が乾燥し、物が燃えやすくなり、又、暖房器具等の使用も加わり出火のリスクが高くなります。過去には就寝中、掛け布団が電気ストーブに触れ、ふとんを焦がし、寝室の住宅用火災警報器が鳴り、気づいた居住者が、急いで水をかけ、大事に至らなかったという例もありました。万が一の時、住宅用火災警報器があれば、いち早く火災を知らせてくれるのです。

 

595回「『初冠雪』と『初雪化粧』」2020年10月10日OA

2020年10月10日 6:00 PM

9月28日、標高3776m、富士山から初冠雪の便りが届きました。甲府地方気象台が発表したもので、平年より2日早く、去年より24日早い観測です。

さて富士山は「初冠雪」の他に「初雪化粧」という言葉があることをご存じでしょうか。初雪化粧は山梨県富士吉田市の職員が山頂付近の雪化粧を目視により確認しているもので、今年は初冠雪より1週間早い9月21日に観測されました。「初冠雪」の他に、なぜ同じ山梨県内で「初雪化粧」を発表しているのでしょうか。観測を担当し、富士山の魅力を発信している富士吉田市の「富士山課」にお聞きしました。初雪化粧の観測は平成18年度、2006年から行っています。きっかけは甲府地方気象台の観測体制の変化でした。富士山の初冠雪の観測は以前、山梨県富士河口湖町の河口湖測候所の気象台職員の目視により行われていました。しかし2003年10月、観測技術の高度化や経費節減により河口湖測候所は無人観測所に移行。その後、甲府市にある甲府地方気象台からの観測に変わりました。しかし富士山から北北西、直線で36キロにある甲府市と、北北東15キロにある富士河口湖町では見える角度が違い、ズレが生じます。そこで富士河口湖町から東に5キロ、甲府市より富士河口湖町と観測条件が近い富士吉田市では『富士山頂の雪の便りをいち早く知らせたい』『観光コンテンツとして話題にしてもらうことで対外的にPRしたい』ことから「初雪化粧」として観測、発表を始めたということです。「いち早く」とはいえ実際、過去15年の気象台の「初冠雪」との差を見てみると、初雪化粧の方が早かったのは今年と2016年の2回のみ。7回は初冠雪と同じ日、6回は初雪化粧の方が遅いという結果です。

ところで富士山初冠雪の統計は1894年から120年以上の歴史があります。2004年から観測場所が変わった統計の信頼性について甲府地方気象台に尋ねると「確かに見る角度や距離が変わってしまった。同じ角度と距離からライブカメラで観測する方法もあるが、それは不自然。観測体制が変わるということは他の観測でもある。途切れることなく統計を取る為に、気象台からの観測を続けている」ということです。時代が変化する中で観測を続けることは大変なことです。富士吉田市の「初雪化粧」宣言は、気象台の「初冠雪」を補完する記録と言えます。

590回「コロナ禍の一次救命措置」2020年9月5日OA

2020年09月05日 6:00 PM

厚生労働省が作成した、コロナ禍の一次救命措置についてです。ウイルスの感染が広がる中、もしも目の前で人が倒れたらどんな処置をすれば良いのか、国が指針を発表しました。心肺蘇生をする場合、ウイルスなどを含む微粒子が発生する可能性がある為、「基本的に全ての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応しましょう」としています。

具体的な手順は、1.まず安全を確認します。車の往来があったり、室内に煙が立ち込めたりした際は、状況に応じた安全確保が必要になってきます。2.倒れている人の反応を確認します。肩を優しく叩きながら大声で呼びかけ、目を開けるなどの応答が無い場合、心停止の可能性を考えて行動します。ポイントは顔を近づけすぎないことです。3.そばに誰かいる場合は、119番通報とAEDを手配します。4.呼吸を観察します。呼吸をする度に胸や腹部が上がったり下がったり動いていなければ、呼吸が止まっていると判断します。5.人口呼吸は行いません。胸骨を圧迫します。胸の左右の真ん中に縦長の平らな骨があり、圧迫するのはその骨の下半分です。倒れている人の胸がおよそ5センチ、沈み込むように強く速く圧迫を繰り返します。ウイルスを含む微粒子の飛散を防ぐ為に、圧迫前にハンカチやタオルなどを倒れている人の鼻と口にかぶせます。マスクや衣服などでも代用できます。1分間に100~120回のテンポで胸骨圧迫を30回以上続けます。6.AEDを使用します。7.心肺蘇生を続けます。心肺蘇生は到着した救急隊員と交代するまで続けることが大切で、「効果が無さそうに思えても諦めずに続けて下さい」としています。そして救急隊に引き継いだ後は、速やかにせっけんと流水で手と顔を十分に洗います。倒れている人の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないように廃棄するのが望ましいとしています。

心肺蘇生法は勇気がいることで、特に呼吸の判断に迷い、ためらってしまいそうです。しかし救急蘇生法の指針では、仮に倒れている人が心停止ではなかったとしても、「胸骨圧迫が傷病者に大きな害を与えることはまれなので、迷ったら胸骨圧迫を開始しましょう」と強調しています。

 

582回「コロナ対策からの火災」2020年7月11日OA

2020年07月11日 6:00 PM

多くの人が集まる店や施設で、新型コロナウイルス対策の飛沫防止シートを見かけるようになりました。このシートは燃えやすい性質があり、火災に注意が必要です。

大阪府の枚方寝屋川(ひらかたねやがわ)消防組合によりますと、管内にある店舗内のたばこ売り場で、レジに設置していた新型コロナウイルス感染症予防の飛沫防止シートが焼ける火災が発生しました。これは販売しているライターを試しに点火したことが原因で燃え移ったものです。ケガ人や延焼が拡大することはありませんでしたが、一歩間違えば大きな火災になったと考えられます。消防組合が行った燃焼実験では、ビニール製の飛沫防止シートに、一度火がつくと一気に拡大し、全体に燃え広がっていくのが確認できました。しかも飛沫防止シートは燃えた状態でポタポタと垂れていくことから、レジ付近にある商品等に延焼が拡大、もしくはケガをする恐れがある、としています。消防組合では、このような火災を防止する為に、「飛沫防止シート付近では火気の使用、喫煙は絶対にしない」「売場では、飛沫防止シート設置期間中はライター等を点火させないようにし、不特定多数の人が手に届く位置に置かないようにする」「ライター等は必ず店員の目の届く所で管理」するよう呼びかけています。

手指消毒の際に使用する消毒用アルコールも取り扱いに注意が必要です。蒸発しやすく、可燃性蒸気となるからです。ウォッカ等のアルコール濃度の高い酒類を使用して消毒する場合も含めて、喫煙やコンロを使用した調理等、近くで火気の使用は危険です。加えて詰替えを行う場所では換気を行いましょう。詰替えの際に発生する可燃性蒸気は空気より重く、低い所に溜まりやすい性質があるからです。又、保管場所も気を付けましょう。直射日光の当たる場所に保管すると、熱せられることで、やはり可燃性蒸気が発生するからです。消毒用アルコールは、お店だけではなく、一般家庭でも使用する機会があります。バーベキューの時や、台所での使用など、火の近くに置かないよう気を付けましょう。

 

578回「『新しい生活様式』の熱中症予防」

2020年06月13日 6:00 PM

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為に、一人一人が感染防止の基本である「人との間隔はできるだけ2m、最低1m空ける」「マスクの着用や手洗い」「密集・密接・密閉といった3密を避ける」等の対策が求められています。このような「新しい生活様式」における熱中症予防のポイントが厚生労働省のHPで公開されています。

ポイントは大きく4つあります。1つ目は「マスクの着用について」です。マスクは着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。従って高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなる恐れがあります。屋外で人と十分な距離が少なくとも2m以上確保できる場合には、マスクを適宜外すようにしましょう。マスク着用の場合は、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。2つ目は「エアコンの使用について」です。一般的な家庭用エアコンは、空気を循環させるだけで換気を行っていません。新型コロナウイルス対策の為には、冷房時でも窓を開ける等、換気を行う必要があります。換気により室内温度が高くなりがちなので、エアコンの温度設定を調整しましょう。3つ目は「涼しい場所への移動について」です。少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動しましょう。一方で、人数制限により屋内の店舗等にすぐに入ることができない場合は、屋外でも日陰や風通しの良い場所に移動してください。4つ目は「日頃の健康管理について」です。体温測定、健康チェックは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、熱中症を予防する上でも有効です。体調が悪いと感じた時は、無理せず自宅で静養するようにしましょう。

又、熱中症というと屋外のイメージがありますが、消防庁の資料によりますと発生場所の約4割は屋内です。家の中でじっとしていても室温や湿度が高いと、体から熱が逃げずに熱中症になる場合があるのです。特にのどの乾きや暑さを感じにくく、汗をかきにくい高齢者や、体温調節機能が未熟な子どもは、より注意する必要があります。周囲の方からも積極的な声かけが必要です。

576回「フクシマの社会運動」2020年5月30日OA

2020年05月30日 6:00 PM

今日は福島大学・後藤康夫(やすお)名誉教授と、基礎経済科学研究所・後藤宣代(のぶよ)副理事長の2人が、福島などに暮らす執筆者と共に、原発事故後の社会運動について著し編集した、八朔社「21世紀の新しい社会運動とフクシマ」についてです。

スタンフォード大学科学・技術と社会プログラム副ディレクターの佐藤恭子さんは「低線量被ばくの問題をどう考えるか」という章で「トランス・サイエンス」という概念を取り上げています。提唱したアメリカの核物理学者ワインバーグは低線量被ばくの遺伝的影響をあげ、動物実験で「統計的に信頼できるレベルで確認するには80億匹のマウスが必要だ」として、「理論的には科学的に答えられるはずではあるが、現実には不可能であり、科学を超えるということでトランス・サイエンス的な問題」としています。そして「被ばくは無ければ無い方がよく、全く無害な閾値(いきち=最小の値)は無い、という見方が科学者の間の広いコンセンサス(=合意)にも拘らず、実害の可能性を否定し、不安の表明を『風評被害』や『福島の復興を妨げる』と批判するのも民主的議論の圧迫・抑圧である」と指摘しています。又、後藤宣代さんは「科学者間でも見解が異なる外部被ばく、内部被ばく、そして低線量問題が、許容線量をめぐる対抗として展開している。『フクシマの運動』は、政府や行政の一方的な許容線量設定に対して、住民サイドが自主学習を重ねて、声を上げ、行動し、その設定を覆しているというところに特徴がある」と考察しています。

NPO法人コモンズの中里知永(としのり)理事長は、フクシマの運動の一つ、「いわき放射能市民測定室たらちね」について取材しています。この認定NPO法人は、原発事故による被ばくの被害から子どもたちと地域の人々の健康と暮らしを守る為、地域住民が2011年11月に開所しました。食品、水、海水、土壌、資材、人体の放射線量を測定して公開したり、2017年には内科と小児科のあるクリニックを開設し、甲状腺エコー検査や尿中のセシウムの測定なども実施したりしています。不安を感じる人たちに寄り添い、正しい情報=放射線の数値を提供する住民サイドの活動は、これからも続きます。

 

571回「コロナ禍の避難所運営」2020年4月25日OA

2020年04月25日 6:00 PM

今日は新型コロナウイルス感染症のクラスター=集団発生対策についてです。厚生労働省は、咳やくしゃみをする際、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖などで口や鼻をおさえる「咳エチケット」や、手洗いに加え、「密閉」「密集」「密接」の3つの密を避けるよう呼びかけています。「換気の悪い『密閉』空間」については、「部屋が広ければ大丈夫」「狭い部屋は危険」というものではありません。WHOは空気感染を起こす「結核・はしかの拡散」と「換気の回数の少なさ」の関連を認めていて、カギは「換気の程度」ということです。窓がある場合は2方向を1回数分間全開、これを1時間に2回以上。窓が1つしかなくても、入口のドアを開ければ窓とドアの間に空気が流れます。「多数が集まる『密集』場所」については、他の人と互いに手を伸ばして届かない十分な距離2m以上を取る、座席は隣の人と一つ飛ばしに座る、又互い違いに座るのも有効としています。「間近で会話や発声をする『密接』」についてWHOは「5分間の会話で1回の咳と同じくらいの飛沫が飛ぶ」と報告していることから、対面の場合は十分な距離を保ちマスク着用をお願いしています。

さて新型コロナウイルス感染拡大が続く中、もし自然災害が発生し、避難所に避難しなければならなくなった場合、どんなことに気をつければ良いのでしょうか。内閣府は今月はじめ、各都道府県などに対して「避難所における新型コロナウイルス感染症への対応について」通知しました。「可能な限り多くの避難所の開設」「親戚や友人の家等への避難の検討」。これらは避難所が過密になることを防ぐ為の措置で、ホテルや旅館等の活用も提案しています。又、避難所では「避難者の健康状態の確認」「手洗い、咳エチケット等の基本的な対策の徹底」「避難所の衛生環境の確保」「十分な換気の実施、スペースの確保」と、これまでの避難所運営以上の衛生管理が求められます。又、発熱、咳等の症状の人には「可能な限り個室や専用トイレを確保」し「一般の避難者とはゾーン、動線を分けること」としながらも、新型コロナウイルス感染症の場合は「軽症者等であっても原則として一般の避難所に滞在することは適当でない」とし、適切な対応を事前に検討するよう求めています。

自然災害が発生する前に官民一体となって、新型コロナ対策を考慮した避難方法を想定しておく必要があります。

570回「防災拭い」2020年4月18日OA

2020年04月18日 6:00 PM

デザインを手掛ける滝沢市大釜にある有限会社「クワン」は、岩手県のPRキャラクター「わんこきょうだい」をプリントしたユニークな手拭い「防災拭い」を制作、販売しています。「防災拭い」とは、災害を防ぐ「防災」と日本古来の「手拭い」をかけた造語です。災害時に落ち着いて行動するための手順や防災情報を厳選し、わかりやすいイラスト付きで手拭いに印刷しています。

大きさは縦34センチ、横幅は100センチ。よく見かける手拭いより10センチ長くなっています。煙の多い現場に遭遇した際は口を覆う、出血した際はそのまま、又は切り裂いて三角巾や包帯代わりにする等、手拭いだからこその活用方法があります。約35グラムと軽量で、手のひらサイズに小さく畳め、いつも持ち歩けます。東北大学の今村文彦教授が監修した「防災グッズ編」「地震編」「津波編」、又、3月より岩手大学の斎藤徳美名誉教授が監修した「台風編」が加わりました。「防災グッズ編」の真ん中にはわんこきょうだいの「そばっち」がデザインされ、その左側には「非常持ち出し品」として、いつも携帯したいモノ、必ず準備しておくモノのイラストが、右側にはあると便利なモノ、手拭いの便利な使い方、警察や消防の電話番号が記載されています。手拭いの文字はシルクスクリーンでプリントされていて濡れても消えない為、雨でも情報が確認できます。洗って繰り返し使え、薄いので乾きやすいメリットもあります。

小野公司社長は、2005年に県内の放送局から依頼され防災ハンドブック制作を手がけました。その際、防災の大切さを実感し「大人から子どもまで持ち歩ける防災用品」をコンセプトに制作することにした」とのことです。手拭いの右下には名前、生年月日、アレルギーの有無、連絡先を書き込む欄が設けられていますが「災害時、口頭で伝えることが困難な時、書き込まれた個人の情報が次に繋がるお手伝いができるのでは」と、その役割に期待しています。小野さんは「地域や学校での防災学習にご利用いただき、いざという時、慌てることのないようご活用いただければと思います」とリスナーに呼びかけています。防災拭いは、日頃から防災を意識し、災害発生時に冷静な行動をサポートするアイテムとして活躍しそうです。1枚税込み550円で、取扱店など詳細はインターネット「防災拭い」で検索すると御覧になれます。

563回「まるごとまちごとハザードマップ」2020年2月29日

2020年02月29日 6:00 PM

今日は「まるごとまちごとハザードマップ」についてです。これは国土交通省が推し進める取り組みで、地域をまるごとハザードマップに見立て、洪水などで浸水した際の情報や、避難所の情報を電柱などに標示するものです。平時は水害の危険性を実感し、発災時は命を守る為の避難行動を促すことで、被害を最小限に留めることが狙いです。国土交通省によりますと、2018年9月末時点で、全国181の自治体で実施しているということです。標識は大きく3種類あり、川の氾濫による「洪水」、大雨により浸水する「内水」、台風や発達した低気圧が通過する際に潮位が大きく上昇する「高潮」です。

新潟県三条市の例です。気象庁によりますと、平成16年7月新潟・福島豪雨では、新潟県中越地方や福島県会津地方で記録的な大雨となりました。7月13日、新潟県中越地区では、五十嵐(いからし)川や刈谷田(かりやた)川など6つの河川の11か所で堤防が決壊し、市街地が浸水、がけ崩れが多数発生しました。新潟県三条市では9人の方が犠牲になり、重傷者1人、10935棟が被災しました。三条市の住宅街の電信柱には、この時の洪水でどれだけ浸水したか標示されています。通学路にある標識の一番上には緑のマークで「災害時避難所」「第一中学校・嵐南(らんなん)小学校」と、真ん中には青地に大きな白いマークと文字で「1.8m」と実績浸水深が記され、その下に「平成16年7月13日に五十嵐川がはん濫し、この場所は青いラインの高さまで浸水しました」と標示されています。

この取り組みについて実施自治体などにアンケートをとったところ、防災への興味の有無に関わらず「日常生活で気づいてもらえる」、一度設置されると継続的にリスクを伝えられ「紙媒体のように破棄・紛失されることがない」、道路や施設の利用者など「伝えたい人に伝えることができる」、住民が目にすることで「まち全体に浸水リスク等を伝えることができる」という回答が寄せられました。県内でも津波や洪水跡の標識がありますが、この取り組みは過去の浸水の他、想定の浸水も標示することが特徴的で、これから起こり得る災害を実際にイメージできる有効な手段になりそうです。

 

562回「古館地区の取り組み」2020年2月22日OA

2020年02月22日 6:00 PM

紫波町の古館地区で住民が主体となり、より地域に根ざした防災情報を発信しようというホームページが完成し、先月31日に公開されました。この「古館地区防災ポータルサイト」を制作したのは、NPO法人古館まちづくりの会で活動する9人です。盛岡のベッドタウンである紫波町古館地区は、他の地域から引っ越してきた人が多いことから、防災に関する情報を共有してもらおうと、およそ10か月かけ作り上げました。地区の小学5年生以上の半数にあたるおよそ4000人の住民アンケートの回答や、ワークショップを通した幅広い年代の意見が反映されています。

サイトにアクセスすると、古館地区の地図上に5種類のカラフルなマーカーが配置されています。赤は「消火栓」、青は「防火水槽」、黄色は「発電機」、緑は「公衆電話」、紫はその場所の過去の災害時の「写真」です。5種類全てのマーカーを表示する他、必要な情報だけ表示することもできます。例えば黄色の発電機を選ぶと古館公民館他4か所に、緑の公衆電話を選ぶとJR古館駅前他4か所にあること等、地域に特化した情報が得られます。紫の写真をクリックすると、過去の浸水被害10か所の写真が見られます。1時間降水量71ミリを観測した2013年8月の豪雨の写真では、住宅地が床上浸水し、公園脇を腰の辺りまで泥水に浸かりながら歩いている人たちの姿が写っています。今後、豪雨により同様の状況になることが予想され、この災害を経験していない人でも浸水をイメージし、速やかな避難につながることが期待されます。

サイトはこの他、非常食や防災グッズの知識、クイズ形式で防災について学ぶページも設けられ、普段から備えを見直すきっかけになりそうです。そして災害が発生した際は、公民館長など避難所となる場所の責任者にホームページ更新の権限を付与し、避難所の開設情報や被災状況などをいち早く伝えてもらえるような仕組みづくりも検討されていますNPO法人古館まちづくりの会では「このポータルサイトは、古館地区という紫波町の中の1つの地区の防災・災害支援に特化したものです。この取組みや手法を、古館地区以外の地域へ実践事例として発信することで、県内外に地域防災の取組みを広げていきたいと思います」としています。

 

557回「防災用品専門店」2020年1月18日OA

2020年01月18日 6:00 PM

今日は、岩手では珍しい防災グッズ専門店についてです。去年8月、矢巾町広宮沢にオープンした「防災ショップ ライノ」は、小さな会議室ほどのスペースに、非常用ライトなど100点を超える商品を揃えています。店名の「ライノ」は英語で動物の「サイ」のこと。店のマークにもサイのキャラクターが木の棒を持ったイラストを使い、「棒」と「サイ」で「防災」の意味が込められています。

県内を中心に運送事業を行う会社を営む工藤政樹さんが始めました。東日本大震災の直後に行った古着を届ける支援活動をきっかけに「支援物資を置く備蓄倉庫にもなれば」と店を開きました。3年前には防災士の資格を取得、社員とともに救命講習も受講してきました。その防災意識を形にしたのが、工藤さんが考案した非常用のポーチセットです。片手で持てる大きさの中に、ホイッスル、羊羹、救急セット、ブランケットなど15点が入っています。工藤さんは「初期行動で必要なものを重点に、応急手当に使うものから、ちょっと口に入れられるもの、寒暖差に対応したものが凝縮されています」と説明します。防災用品は何を準備したら良いのか悩みますが、このセットをベースに、他に自分に必要なものを加えると良さそうです。

工藤さんは停電対策として枕元に「電池式ランタン」の他、「ケミカルライト」と「灯油式ランタン」を準備しているそうです。「ケミカルライト」は、スティック状で電池を使わず、ポキッと折り曲げると液体の化学反応により5分間、光り続けるものです。暗闇でスイッチを探す手間が省け、難しい操作が要らないというメリットがあります。「灯油式ランタン」は、明かりと共に温かさが得られます。又、工藤さんは「寝袋」の普段使いを提案しています。自宅では脚を中に入れテレビを見ているとのことで、暖房代の節約に加え、停電時、寝袋に入りながら布団をかけると、とても温かく眠れると勧めます。工藤さんは「震災の時は日本全国から色々な支援を受けたので、逆に岩手が支援できるように防災に対して意識の高い県に。岩手県から発信できるようになればいいなと思っています」と、幅広い防災グッズの販売を通して、防災意識向上を願っています。

553回「ヒアリ」2019年12月21日OA

2019年12月21日 6:00 PM

今日は南米原産の特定外来生物「ヒアリ」についてです。日本には2017年、神戸港を経由して運ばれてきたコンテナの中で初めて発見されました。その後、九州から関東にかけて次々発見され、東北では未確認ですが、北海道でも確認されました。刺されると火が付いたように痛むことからFireAnt(火蟻)と呼ばれるヒアリ。どんな生き物で、どんな点に注意したら良いのか、盛岡市の岩手県立博物館で紹介しています。

大きさは1センチぐらいと思っていましたが、標本は5ミリ程度で、その小ささに驚きました。色はツヤのある赤茶色で腹部は黒く、日当たりの良い砂地などに、土で高さ30センチ程の蟻塚を作るのが特徴とのことです。巣に近づいた人を集団で襲い毒針で刺すだけではなく、元からいたアリなど在来の生物を減少させたり、野外に置いた機械に侵入して壊したり、農作物を食い荒らしたりする等、様々な問題を引き起こします。ヒアリに刺されると、蜂に刺されたような強い痛みがあり、痒くなります。その後、腫れたり、蕁麻疹が出たり、更には動悸や目眩、意識を失うなどの強いアレルギー=アナフィラキシーショックを起こす恐れがあり、その場合は命の危険があるので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。ヒアリが岩手に侵入したとしても冬の寒さで死滅することが予想され定着はしないとみられています。ただ国内への侵入は地球温暖化の影響も考えられ、今後の環境変化が気がかりです。

もしヒアリの集団や巣を発見した場合、「環境省ヒアリ相談ダイヤル(0570-046-110)」や岩手県環境生活部自然保護課に連絡してほしいということです。岩手県立博物館の渡辺修二専門学芸調査員は『ヒアリと思ったとしてもアリの巣用の殺虫剤をかけないように』と注意を呼びかけています。ヒアリだった場合、駆除に失敗し巣の奥にいる女王アリが逃げ出すことがあり、又違った場合、元からいたアリや他の生物を殺してしまい、ヒアリが定着しやすい環境になるから、と言うことです。ヒアリに似た赤いアリの標本3種を見ながら渡辺さんは『ヒアリのように見えるアリはどこでも生息しています。しかし岩手ではそれがヒアリである可能性は殆どありません。むやみに殺さず、身近なアリをよく観察し確認しておくことが、将来侵入するかもしれない外来種の一番の備えになります』とアドバイスしています。ヒアリのトピック展は、来年2月2日まで、岩手県立博物館で開かれています。

533回「ラジオで救われた命(福島県相馬市)」2019年7月27日OA

2019年07月27日 6:00 PM

今日は先月上旬に訪れた、福島県浜通りの北部に位置する相馬市についてです。福島県などの資料によりますと、東日本大震災では震度6弱を記録。揺れの約1時間後、午後3時50分頃、9.3m以上の大津波が、海岸から4キロ内陸まで押し寄せました。関連死を含め486人の方が亡くなり、住宅被害は全壊1004棟を含む5234棟と甚大な被害となりました。

市内で被災した「いちご農家」にお聞きしました。「和田観光いちご園」の齋川一朗さん(71)です。海から500m程離れた和田地区は、相馬市の中でもいちご栽培が盛んな地域で、昭和30年頃から露地栽培が始まり、昭和50年代にはハウス栽培に移行しました。齋川さんは相馬市で生まれ育ち、印刷会社や相馬市観光協会に勤めた後、2010年夏、知り合いに誘われイチゴ栽培に取り組み始めました。震災前は13軒、130棟のビニールハウスがありました。しかし8年前の3月11日、海岸に壁のような津波が襲来し、ハウスの半分が呑み込まれました。防潮林も全て流され「暫く茫然自失でした」という齋川さん。3月末には関東などからボランティアが駆けつけ、ハウスに絡まった養殖海苔の網を取り除き、2011年夏にはガレキの撤去が終わりました。震災後、いちご園は、7軒78棟のハウスで再開しました。口当たりが柔らかく甘みの十分な「章姫(あきひめ)」や、糖度が高く香りの良い「さちのか」が人気です。

齋川さんは「ラジオを聞いていて助かったと思っている」とあの日を振り返ります。ハウスではポケットラジオを愛聴していて、大地震の後、軽トラックで避難する際もラジオからの大津波情報により逃げることができたからです。齋川さんは震災前「『相馬に被害があるような津波は来ない』という言い伝えがあった」と言います。確かに三陸に大きな被害をもたらした明治三陸地震津波、昭和三陸地震津波について内閣府や農水省の資料を調べましたが、福島県の人的被害の記録は見当たりませんでした。過去の経験が、このような相馬の伝承につながっていたようです。齋川さんは震災の語り部の活動もしていて、自分の体験から「津波の恐れがある場所では、地震があったら高台に避難する」という教訓を伝え続けます。

532回「観光で南相馬に元気を(福島県南相馬市)」2019年7月20日OA

2019年07月20日 6:00 PM

先月上旬に訪れた南相馬市についてです。福島県浜通りの北部にあり、いわき市と宮城県仙台市の中間に位置します。人口53831人の南相馬市は、1000年以上の歴史を経て今なお息づく戦国絵巻「相馬野馬追(そうまのまおい)」が有名です。甲冑に身を固めた500騎余りの騎馬武者が、腰に太刀、背中に戦場で目印となる旗を指し疾走する豪華絢爛、勇壮な伝統の祭りで、今年は7月27日(土)、28日(日)、29日(月)の3日間開催されます。

東日本大震災で、南相馬市では震度6弱を観測、関連死も含め1149人が犠牲になりました。高校1年生の時に震災に遭い、現在は南相馬観光協会に勤める藤原亮太さん(24)にお聞きしました。海から5-6キロ離れた自宅は原発事故の避難区域ではありませんでしたが、そのすぐ外側に位置していた為、放射能が気になり南相馬を離れます。福島市の避難所で過ごした後は、親戚の住む沖縄県の読谷村(よみたんそん)に身を寄せ、2年間、過ごしました。南相馬では地元の工業高校に在籍していた藤原さんは、将来、大学に進学し中学校の数学の教員になりたい、という思いがありました。しかし沖縄では普通高校で学ぶことになり、進路が見えなくなりました。沖縄に転校後、南相馬の同級生から「藤原君の席があるから」と連絡をもらったことがあり複雑な思いでした。沖縄の人たちによくしてもらい感謝する一方で「南相馬がどうなるのか」「自宅に帰れるのか」「バラバラになった友だちは、どこで何をしているのか」、故郷のことを気にかけながらの生活でした。2013年、沖縄の高校を卒業後、家族は南相馬に戻り、藤原さんは仙台の専門学校に通います。そしてIT関連の企業に就職しますが、震災を経て「何気なく生活していた南相馬が好きなことに気づき、大好きな地元を発信したい」という思いが強くなり、今年の4月から観光協会で復興支援員として働いています。

「野馬追が近くなると、祭りの練習の為、馬が公道を歩いているんですよ」と目を輝かせる藤原さん。「震災で元気がなくなった南相馬を、観光を通じて交流人口増加により盛り上げたい」と仕事にやりがいを感じる日々です。