気象と防災 マメ知識!

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気象と防災 マメ知識!

気象予報士・防災士の神山 浩樹(IBCアナウンサー)がお届けする5分間。

◆放送日時
毎週土曜日17:50~17:55
番組開始:2009年4月〜

◆出演
神山浩樹(IBCアナウンサー)

お便り・お問い合わせ

622回「生物季節観測の縮小」2021年4月17日OA

2021年04月17日 6:00 PM

生物季節観測とは、季節の移り変わりを把握する為、生物の動向を気象台・測候所で観測するものです。この結果は、季節の進み具合や、全国各地の気候の違いなどを把握したり、ラジオ・テレビなどを通じて生活情報の一つとして利用されたりしています。気象庁によりますと1953年から実施していて、今年の1月時点では全国の気象台・測候所58地点で植物34種目、動物23種目を対象に、開花や初鳴きなどを観測していました。しかし近年は気象台や測候所周辺の環境が変化しており、適切な場所に標本木を確保することが難しくなってきました。又、動物季節観測でも対象を見つけることが困難になってきていました。この為、地球温暖化などの気候の長期変化や、1年を通じた季節変化の把握に適した代表的な種目と現象のみを継続し、それ以外は廃止することになったものです。継続される生物季節観測は、「あじさいの開花」「いちょうの黄葉・落葉」「うめの開花」「かえでの紅葉・落葉」「さくらの開花・満開」「すすきの開花」以上、6種目9現象です。動物については全て廃止されました。

今回、盛岡地方気象台で廃止した種目は、植物ではスイセン、タンポポ、ツバキ、ヤマツツジ、ノダフジ、ヤマハギ、キキョウ、サルスベリの8種類。動物・昆虫は、ウグイス、ヒバリ、ツバメ、モンシロチョウ、カッコウ、キアゲハ、ホタル、ニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、モズの11種類です。観測は気象台構内、又はその付近、半径概ね5キロ以内の範囲で行っていましたが、例えば去年の例では、ウグイスは3月27日に八幡町で、ツバメは5月20日に開運橋で気象台職員が観測しました。これらの記録が途切れることになります。

しかし気象庁では、環境の変化や気候変動が生態系に与える影響の調査等に有用な基礎資料であり、又、四季を感じる文化的な価値があることから、これまでの観測データとの継続性を保った調査、広く市民が参加する形の調査を模索することにしています。まずは、環境省生物多様性センターが運営する生物の情報を収集・提供するシステム「いきものログ」を用いて、初鳴き等の情報収集が始まっています。

 

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610回「サンピラー」2021年1月23日OA

2021年01月23日 6:00 PM

今月10日、矢巾町の男性から「矢巾町に降臨 -15度の奇跡!」という件名でメールをいただきました。ありがとうございます。「昨日の朝7時頃です。あまりに冷えたのでダイヤモンドダストが見られるかもと近所を散歩した時に私の妻が出会ったそうです。サンピラーです!生まれて初めて見たそうです。もちろん私もありません。残念!私はまだ寝ていました」添付されていた写真を見ると、遠くの山々は昇ったばかりの太陽に照らされ金色に染まっています。写真手前に広がるのは白く雪に覆われたリンゴ畑。そのリンゴ畑に向かって太陽から1本の光の筋が下に垂直に伸びています。実に美しい光景です。光の中には氷の結晶でしょうか、キラキラ輝いているのがわかります。

これは「サンピラー=太陽柱(たいようちゅう)」、太陽の柱という気象現象でしょう。サンピラーはダイヤモンドダストが関係しています。前回、お伝えしたように、ダイヤモンドダストは風のない日に、空気中の水蒸気が凍って出来た非常に小さな氷の結晶がゆっくり落ちてくる現象です。明け方の気温が氷点下10度以下になると見られることがあります。明け方や夕方に太陽の光が、ダイヤモンドダストの氷の結晶や、上層の薄い雲に反射すると、光りの柱が伸びて輝いているように見えることがあります。それがサンピラーです。今回の写真のように太陽の下に垂直に伸びる他、太陽の上に伸びる場合もあります。どちらも太陽から伸びる光の柱というのがポイントになります。

太陽ではなく月の光が柱のように伸びる「ムーンピラー=月柱(げっちゅう)」、月の柱という珍しい現象もあります。一方、人口的な光が関係した現象もあります。夜間、街の光や車のライトのような地上の光が大気中の氷の結晶に反射して柱のように見える場合は「ライトピラー=光柱(こうちゅう)」、光の柱と言います。海上でイカ釣り漁船の漁火が光源になり、大気中の氷の結晶に反射して空中に光の柱が浮かぶように見えることが稀にあり、これもライトピラーの一種です。厳しい寒さの朝、早起きした人にしか見られない美しいサンピラー。自然からのご褒美のようですね。

 

609回「ダイヤモンドダスト」2021年1月16日OA

2021年01月16日 6:00 PM

今月9日、東北北部上空5000mに-44.5度と平年を10度以上、下回る強い寒気が入り、宮古市区界で氷点下24.1度まで下がるなど県内は、この冬一番の冷え込みとなりました。この日、各地からダイヤモンドダストに関するお便りが届きました。氷点下16.9度まで下がった紫波に住むオレンジペコちゃんからは、青空広がる中「朝、庭に出た主人が『キラキラしてきれいだよ』と声をかけてきました。ダイヤモンドダストだったでしょうか」。氷点下14.7度まで下がった北上に住む厚焼き玉子さんは「今朝は、朝日を浴びた時にダイヤモンドダストが見えたようにも思えました」と。ありがとうございます。

旭川地方気象台によりますと、ダイヤモンドダストは「風のない日に、空気中の水蒸気が凍って出来た非常に小さな氷の結晶がゆっくり落ちてくる現象です。氷の結晶が、ダイヤモンドの粉ようにきらきら輝いて見えることから名づけられました。明け方の気温が氷点下10度以下になる地域で見られる事があります」と解説しています。お便りをくださった各地の気象条件から、ダイヤモンドダストだった可能性があります。

さて北海道旭川市の北西にある幌加内町(ほろかないちょう)では、ダイヤモンドのような輝きは天使が囁いているようだということで「天使の囁き」と名付け、記念日を設けています。町によりますと「1902年(明治35年)、旭川市で日本最低気温の公式記録-41度を記録。しかし、その76年後、1978年(昭和53年)2月17日に、幌加内町母子里(もしり)でこれより0.2度低い-41.2度を記録しました。気象庁の公式記録の対象からはずれていたため、旭川の記録が公式記録になっていますが、実質的には幌加内町母子里の-41.2度が、誰もが認める日本一の最低気温となっており、2月17日はこの-41.2度を記録したことを記念し『天使の囁き記念日』として、日本記念日協会から正式に認定されています」ということです。母子里では毎年2月「天使の囁きを聴く集い」を開催、ダイヤモンドダストを見たり、寒さを体験したりして、マイナスイメージをプラスに変えていく試みを行っているそうです。ダイヤモンドダストを町おこしに利用している姿勢は、寒さ以上に情熱を感じました。

606回「日本の気候変動2020」2020年12月26日OA

2020年12月26日 6:00 PM

気象庁と文部科学省は、地球温暖化による将来の予測を「日本の気候変動2020」として取りまとめました。今世紀末の世界の平均気温について、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の目標を達成した場合の「2度上昇」、現時点を超える追加的な緩和策を取らなかった場合の「4度上昇」、この2つの想定を盛り込んでいます。

具体的に見てみると、世界の平均気温「2度上昇」では、日本の平均気温は1.4度上昇、北日本ではそれより高い1.5度上昇。1日の最高気温が35度以上の「猛暑日」は全国平均で2.8日増加、北日本では0.7日増加。夜間の最低気温が25度未満の「熱帯夜」は全国平均で9.0日増加、北日本の太平洋側で1.4日増加。最低気温が0度未満の「冬日」は全国平均で16.7日減少、北日本の太平洋側では19.2日減少する予測です。世界の平均気温「4度上昇」では、日本の平均気温は4.5度上昇、北日本の太平洋側ではそれより高く4.9度上昇。猛暑日は全国平均で19.1日増加、北日本の太平洋側では6.6日増加。熱帯夜は全国平均で40.6日増加、北日本の太平洋側では18.3日増加。冬日は全国平均で46.8日減少、北日本の太平洋側では62.8日減少する予測です。つまり猛暑日や熱帯夜はますます増え、冬日は減るのです。

降水に関しては、雨の降る日数は減少するものの、大雨や短時間強雨の発生頻度や強さは増加すると予測されています。1日の降水量が200ミリ以上の日数は「2度上昇」では1.5倍に増加、「4度上昇」で2.3倍に増加するという予測です。つまり激しい雨が増えるのです。又、地球温暖化に伴い、雪ではなく雨が増えることから、降雪量、積雪量共に「2度上昇」では現在の7割から8割弱に、「4度上昇」では現在の3割から4割に減る予測です。ただ気温の上昇により大気中の水蒸気量が増え降水量が増加します。そもそも雪が融けないような寒冷な地域であれば、大雪のリスクはあるとしています。そして水蒸気量増加は台風のエネルギー源が増えることに繋がるので、強い台風の割合が増加し、台風に伴う雨と風は強まりそうです。温暖化を緩やかにする為に、私たちの暮らしの中の省エネをより進めることが必要です。

 

604回「虹と暈(かさ)」2020年12月12日OA

2020年12月12日 6:00 PM

虹は「太陽と反対側」に、空気中の「水滴」に当たった光により出現します。英語のレインボー、レイン=雨で作られたボー=弓は、現象をよく表しています。日光ではなく、稀に月の光によっても現れるようです。倉嶋厚著「季節ほのぼの事典」(東京堂出版)には、昭和8年7月4日に北海道の寿都(すっつ)測候所で夜の虹を観測した、という記述があります。「その夜は月齢が11.1の弓張り月だった。朝から晴れていたが、夜になると霧が現れ南東の強風とともに切れ切れに飛び、霧雨のように降った。月は夜の8時半ごろに南中し、次第に南西の空に移った。そのころ、北東の空に白い虹が淡く現れ、次第に濃くなった。虹の上の方は純白だったが内部は少し青かった」ということです。月光の虹とは、何とも神秘的な光景です。

虹と似た現象で「暈(かさ)」があります。漢字で日曜日の「日」の下に軍隊の「軍」と書きます。暈は虹と違い、「太陽と同じ方向」に現れ、空気中の「小さな氷の結晶」に当たった光により出現します。氷の結晶でできた薄い雲が広がっている時、その雲を通して太陽や月が見え、その周りに光の輪ができることがありますが、それが「日暈(ひがさ)」「月暈(つきがさ)」です。

さて盛岡のルンルンさんからお便りをいただきました。ありがとうございます。「11月27日午後4時半過ぎに近くのスーパーに出かけました。太陽が沈む前でしたがお天気も良く明るかったです。風もなく穏やかでした。でも虹がありました。輪になった方は消えていましたが、太陽を挟んで両側に虹の太い柱が立っていました。太陽と同じ側に虹があったのです。普通太陽と反対側に虹ができますよね。そしてお天気なのに。虹の上にはうろこ雲のような雲がありました。虹もくっきりでした。しばらく虹は消えませんでした。この現象をお聞きしたいです」。ルンルンさんが御覧になった現象は、太陽と同じ方向ということなので、虹ではなく日暈の一種で、しかも幻の日と書く「幻日(げんじつ)」と思われます。風もなく穏やかだったということから、氷の結晶が浮かびやすい条件だったのでしょう。幻日は、日暈の光の輪の、太陽の両側にあたる部分が特に光った現象です。珍しい自然現象を見られて、何か良いことがあるかもしれませんね。

 

603回「地震時計」2020年12月5日OA

2020年12月05日 6:00 PM

遠野の70代男性からお便りをいただきました。ありがとうございます。「小生が子どもの頃(昭和30年代)家に『地震時計』らしきものが貼ってあり、祖母が地震の度に『雨が降るぞ』とか言っていました。B4版ぐらいの紙に時計が書いてあり、文言は記憶していませんが祖母は『4・6の雨に・・・』とか言っていました。天気予報の歴史の一端にあるか気になりました。何だか富山の家庭の置き薬屋が紙風船とか一緒に配ったような気がします」とのことです。

盛岡市教育委員会事務局歴史文化課に問い合わせましたが、残念ながら地震時計そのものは所管する博物館施設にありませんでした。ただ地震の時刻で天気を予想する言い伝えは、県内の民族関連の書籍に記されていました。その内、岩手県教育委員会が昭和57年3月に発行した「岩手の俗信 第二集 天文気象に関する俗信」には、「地震による天気予察」という記述がありました。『往時、地震の事や天気の事等が不可思議であった事から、この間には何か関係があるかと推量し、次のような歌が生まれています』として、胆沢、江刺、釜石、東磐井、盛岡に伝わる『九は病、五、七が雨に四つ旱、六つ八つは風とこそ知れ(くはやまい、ごしちがあめによつひでり、むっつやつはかぜとこそしれ』と紹介しています。

これらの数字は昔の時刻の表し方です。日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 大衆芸能編 寄席」のHPでは、江戸時代の庶民の時刻の表し方について「午前0時が九つで、約2時間ごとに八つ(やつ)、七つと数が減り、四つ(よつ)まで行くと再び九つになります。9は1桁の中で一番大きい数字なので縁起がよいという考え方があり、九つから始まっています。本来、次はその2倍の18、その次は3倍の27なのですが、数字が大きくなって数えるのが大変なので10の位を取り除き八つ、七つと表しています」と解説しています。つまり先程の歌であれば、0時(九)に揺れが来れば病気がはやる前兆、8時(五)と4時(七)なら雨が降り、十時(四)は日照り、六時(六)と二時(八)に揺れれば大風の吹くしるしだ、と言うことです。これらは迷信ですが、先人の残した言葉に触れると、自然を理解しようという探究心は今も昔も変わらない、ということを実感します。

602回「台風の上陸ゼロか」2020年11月28日OA

2020年11月28日 6:00 PM

今年は台風が日本へ上陸していません。気象庁は1951年から台風に関する統計をとっています。台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「上陸」、国内のいずれかの気象台などから300キロ以内に入った場合を「接近」、小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出た場合は「通過」として扱っています。沖縄は台風の上陸とは言わず通過になります。台風の平年値である1981年~2010年の平均は、発生数が25.6個、接近数は11.4個、上陸数は2.7個。今年は11月16日現在、発生数22個、接近数7個、上陸数は0です。これまで上陸しなかった年は1984年、1986年、2000年、2008年で、このまま上陸しないと12年ぶりになります。

今年は1号の発生が5月12日と遅く、7月は統計史上初めて発生数がゼロでした。8月は7個発生しましたが、日本列島上空に太平洋高気圧が張り出し、台風は周縁部の風に流されて進路が日本の西よりになりやすい気圧配置でした。日本に接近した台風の内、9月の10号は気象庁が台風特別警報を予告しましたが上陸せず、九州西岸をかすめて朝鮮半島から大陸に向かいました。同じく9月の12号はオホーツク海から張り出した高気圧の影響で北上のペースが鈍り、その後は偏西風に流されました。10月の14号は大陸からの高気圧に北上を阻まれ、紀伊半島から東に進みました。今後、冬にかけて台風が発生したとしても偏西風が南下する為、日本に近づく前に東に進んだり、フィリピン近海で貿易風に乗ってインドネシア半島に向かったりする傾向があります。今後、発生する台風が上陸しないとは言い切れませんが、11月以降に上陸したのは1990年11月30日の28号だけということを考えると、台風が上陸しない年になる可能性が高いと言えます。

台風が上陸しなかったとしても、今年は大雨による被害が無かったというわけではありません。「令和2年7月豪雨」では、日本付近に停滞した梅雨前線の影響で西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨となりました。特に4日から7日にかけて九州で記録的な雨量となり、球磨川など大河川で氾濫が相次ぎました。県内では11日から12日に種市で180ミリ、27日から28日に区界で177ミリと大雨となり、住宅や道路の被害が発生しました。豪雨災害は台風だけではない、ということを理解しておきましょう。

601回「小春」2020年11月21日OA

2020年11月21日 6:00 PM

陰暦10月の別名は前回お伝えした「時雨月」の他「小春月」という呼び方もあります。今日は「小春」についてです。11月は平地でも雪が降り出し、近づく冬の足音を実感しますが、そんな中にも、一時的に、穏やかに晴れて暖かくなる日があります。晩秋から初冬に、大陸から進んできた移動性高気圧に覆われ、まるで春を思わせるような暖かさになる日を「小春日和」と言います。

倉嶋厚著「季節おもしろ事典」(東京堂出版)には、小春日和のことをアメリカで『インディアン・サマー』と表現すると解説しています。アメリカ先住民が、思いがけず現れた暖かい日を利用して、冬ごもりの支度をしたり、南に移動するため平原に姿を現したりするため、とのこと。この言葉はヨーロッパにも伝わって用いられていて、日本の春や秋のように快適な気候のようです。しかしこぼれ話として、日本の気候学者が知らずに『インドの夏』と訳してしまったため、「外国の小春日和はよほど暑いのだろう」と誤解を生んだエピソードも紹介されています。同じく倉島厚著「季節つれづれ事典」(東京堂出版)には、小春日和に相当する各国の言葉として、ドイツ語の「老婦人の夏」、ロシア語の「女の夏」を挙げています。理由として「小春日和の青空の下、キラキラ光りながら飛ぶクモの糸が、白髪に見え女性を連想させた」という説は美しく、興味深い話です。

冬の季語「小春」は「春」の字が使われているため、「春先の暖かい日」のことと誤解されることがあります。文化庁が行っている国語に関する世論調査で「小春日和」について尋ねた際、本来の意味である「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は51.7%、又、本来の意味とは異なる「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人は41.7%と、僅差でした。年齢別に見ると「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は50~60代で他の年代より高く6割前後でした。一方、「春先の頃の穏やかで暖かな天気」と答えた人の割合は、16~19歳で66.1%、20代で54.5%と他の年代より高く5割を超えていました。言葉は変化していきますので、今後、本来の意味ではない「春先の暖かい日」に使う人の方が大勢を占める日が来るかもしれません。

600回「時雨」2020年11月14日OA

2020年11月14日 6:00 PM

旧暦10月、今年は現行暦で明日11月15日から始まります。旧暦10月の別名を時の雨と書く「時雨月」と言います。今日はこの「時雨」についてです。時雨は、晩秋から初冬にかけ、空が曇り、急にぱらぱらと降ってはやみ、数時間で通り過ぎてゆく雨のことです。広辞苑には「『過ぐる』から出た語で、通り雨の意」とあります。大陸からの寒気が日本海の海面で暖められ、積雲や積乱雲が次々と通る為に起こります。通り過ぎた雲と、次に来る雲の間に日光が差し込んでできる虹を「時雨虹」と言います。虹は太陽の光が斜めに差し込む朝や夕方に多いのですが、太陽高度が低い晩秋から初冬に南が晴れて北が降っているような時、日中でも北の空に虹が現れることがあります。夏の鮮やかな虹とは違う、淡い日差しでできる儚い虹です。通り雨の意味の他、細かく切ったショウガなどと一緒に煮たハマグリなどのつくだ煮である「時雨煮」の意味もあります。その語源は、時雨月のハマグリは味が良いという説があるようです。

時雨は昔から詩歌に最もよく詠まれた雨の一つのようです。平安の都、京都の北側を囲む山地から降る雨を「北山時雨」と呼ぶように、時雨といえば北山が有名です。厳しい冬が来る前に、降ったり照ったりする空模様と人生を重ね合わせたのでしょう。時雨は冬の季語です。種田山頭火の自由律の句「うしろすがたのしぐれてゆくか」。時雨が降る中をとぼとぼ歩み去って行く、わびしい後ろ姿を見つめるもう一人の自分を詠んだものです。時雨には小さな夜と書く「小夜(さよ)時雨」という言葉もあります。夜に降るしぐれのことです。志田野波(やば)の句「小夜しぐれ隣の臼は挽きやみぬ」。旅の宿で時雨が通り過ぎると、さっきまで聞こえていた近くの民家の石臼を挽く音はもう鳴り止んでいた、という静かな冬の夜の趣を表しています。

演歌には、都はるみさんの「大阪しぐれ」、同じく都はるみさんと岡千秋さんの「浪花恋しぐれ」のようにタイトルに使われている曲があります。大阪では、冬型の気圧配置になると日本海側の雨雲の一部が流れ込み、しぐれることがあります。その時雨の比喩的な意味である「涙ぐむ」を、人生の涙になぞらえたものと思われます。

599回「初雪の平年日更新」2020年11月7日OA

2020年11月07日 6:00 PM

県北や山沿いから初雪の便りが聞こえてくるようになりました。盛岡地方気象台では10月から2月までの寒候期に、盛岡で初めて雪が降った日を「初雪」として記録しています。雨と雪が混じる「みぞれ」が降った場合も「雪」として統計をとっています。さて盛岡の初雪の平年日は昨シーズンまで「11月8日」でしたが、今シーズは統計期間が変わらないのに「11月6日」に更新されました。更新された、とはどういう意味でしょうか。

初雪は気象台の職員が目視、つまり目で見て確認し記録していました。平年値は10年毎に更新され、現在使用されている平年値は1981年から2010年の30年間の観測値の平均値で、目視による盛岡の初雪の平年日は「11月8日」です。しかし今年、観測方法の高度化により、初雪は目視から自動観測に移行。盛岡地方気象台によりますと『降水があったかどうかを判別する機器があり、降水があったと判別された場合に気温と湿度から雨・雪・みぞれなどを判別し観測します。自動観測では10秒ごとに常時観測を行っており、一瞬雨が雪に変わった場合、見落とす可能性がほぼ無くなります』と自動観測のメリットを挙げています。気象庁では、自動観測に併せ、過去の初雪観測日も見直しを行い、降水、気温、湿度のデータを自動観測の計算式に入力し再計算したところ、盛岡の初雪の平年日は11月8日より2日早く「11月6日」と算出されたのです。この他、盛岡で最後に雪が降った平年日も、再計算の結果、これまでの「4月16日」から「4月23日」に更新されました。

去年、盛岡の初雪の観測は11月19日。日中は雨でしたが、この日の夜、上空1500mには-6度と12月中旬並みの冬の寒気が入り、午後10時過ぎにはみぞれに、午後11時20分には雪に変わったのです。職員が初雪を見逃さないよう、昼夜を問わず目で見て確認していたことを思うと、業務とは言え頭が下がります。今回の自動観測移行は、職員の負担が減る意味で働き方改革と言えそうです。ただ雨が一瞬、雪に変わるような気象状態は、深夜が多いことを考えると、市民が実感できない初雪観測発表の機会が、今後、ますます増えるかもしれません。

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