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地震の記事一覧

642回「治水地形分類図」2021年9月4日OA

2021年09月04日 6:00 PM

国土地理院は、治水対策を進めることを目的に「治水地形分類図」を作成し、ホームページで公開しています。国・都道府県が管理する河川の流域の内、岩手では盛岡から一関にかけての北上川流域の平野部が対象です。詳細な地形分類により、その成り立ちを理解でき、起こり得る水害や地震災害などに対するリスクを推定できます。地理院地図トップページから「土地の成り立ち・土地利用」「治水地形分類図」をクリックすると、洪水になりやすい低い土地の地形がカラーで表示されます。

その内、過去の洪水によって作られた平野を「氾濫平野」と言い、薄緑で表しています。平野の多くは上流・中流から運ばれてきた土砂が溜まってできた地形です。何度も洪水が繰り返され、その度に土砂などが堆積した為、現在の平らな土地ができました。かつて氾濫平野は主に農地として利用されてきましたが、人口増加に伴い宅地や工場が拡大し、市街地になってきました。このような場所では、堤防が決壊しやすく、豪雨時の洪水による住宅の冠水が心配されます。

水田地帯が広がる氾濫平野では、カーブを描くようにして作られている水田を目にすることがあります。これは昔の川の流れた跡「旧河道(きゅうかどう)」という地形で、治水地形分類図では青い横縞模様で表しています。川は平地に出ると流れが遅くなり運搬能力が弱まり、土砂を川の底に堆積させていきます。土砂がたまると、川はそこを避けて流れるようになり、また次の場所で土砂の堆積が始まります。これが徐々に繰り返された結果、蛇行する川の形が出来上がるといわれています。洪水が発生すると、溢れた水は蛇行したカーブの部分をショートカットして、下流側へまっすぐ流れ込みます。やがて川は、洪水でできた道を流れるようになり、元々、川が流れていたカーブの部分が切り離されます。こうしてできたのが旧河道です。一方で洪水を避ける為、水路や堤防などを築いて人工的に川の流れを変えた結果、旧河道ができることもあります。旧河道は、周囲の氾濫平野より1m~2m低い為、地表水が集まりやすくなります。わずかな雨でも浸水しやすい為、浸水の深さ・時間とも大きくなります。また砂の層でできている軟弱地盤が多く、地震の揺れによる液状化などの被害に注意が必要です。

640回「車での避難」2021年8月21日OA

2021年08月21日 6:00 PM

東日本大震災が発生した際、東京では、皆が車で早く家に帰ろうとした結果、大渋滞が発生しました。発災から3時間後には、渋滞が通常時の約5倍に。又1キロをクルマで走行するのに約2時間かかり、大切な命を救う為の緊急車両が通れなくなってしまったのです。あれから10年。東京都では震度6弱以上が発生した場合、環状7号線から都心方向への車両の通行が禁止となるなど、大規模な交通規制が実施されます。警視庁では「車には乗らない」「乗っていたら駐車場など道路外に移動」を呼びかけています。

大規模災害発生時の渋滞は、東京だけの話でしょうか。TBC東北放送が取材した宮城県の例です。今年3月20日、宮城県内で最大震度5強を観測する地震が起き、沿岸部には4年4か月ぶりに津波注意報が出されました。この時、ある課題が浮き彫りになりました。多くの人が車で避難した為、各地で渋滞が起きたのです。震災の時にも同じことが起こっていました。石巻市で実施した市民アンケートでは、震災の際、約27%の人が「自動車で逃げた」と回答しています。渋滞が起きたことで、車で逃げざるを得ない人の命も失われました。東松島市の老人ホームの臨時職員男性は、地震が起きてすぐ、寝たきりの利用者4人を車に乗せました。しかし避難の途中で渋滞に巻き込まれ、車ごと津波に流されました。男性は助かりましたが、一緒に乗っていた利用者4人は亡くなりました。こうした教訓から沿岸部の自治体の多くは原則「徒歩」で避難するよう呼びかけています。津波避難タワーや津波避難ビルを整備している自治体もあります。一方、亘理町の地形は高台や高層建物がない平野です。その為、多くの住民が希望する、車を使った避難訓練を実施しています。亘理町に住む男性は、混雑が予想される県道を避け、信号が少ないルートを使うことにしています。

岩手県の地域防災計画では、避難手段は原則として「徒歩」としながらも「避難所までの距離や避難行動要支援者の存在など地域の実情に応じ、やむを得ず自動車により避難せざるを得ない場合においては、避難者が自動車で安全かつ確実に避難するための方策をあらかじめ検討する」としています。歩いて避難できる場所もあれば、車でしか逃げられないような場所もあります。又、支援が必要な人は、車を使うことでスムーズに安全な場所に逃げることができます。地震や津波の際、命を守る為、どこにどうやって避難するのか、日頃から想定しておくことが重要です。

 

632回「災害時の断水」2021年6月26日OA

2021年06月26日 6:00 PM

今日は、災害時の断水についてです。盛岡市上下水道局によりますと、盛岡市の水道水は、盛岡・都南地域は、米内川、中津川、雫石川、簗川の4つの川。玉山地域は岩手山と姫神山からの湧き水や地下水などを利用しています。取水後、市内7つの浄水場で、ゴミ、ニオイ、色を取り除き、薬品を入れて消毒しキレイにしてから、私達の家庭に届けられます。

10年前の東日本大震災の際、盛岡市は震度5強の揺れに見舞われ、約30時間に及ぶ大規模停電が発生し、約3万世帯が断水しました。断水の主な原因は、浄水場で水道水が作れなくなった為でした。水道水は、浄水場から「送水管」を通って、水を配る池と書く「配水池」に蓄えられ、「配水管」を通って各家庭に送られます。停電により水道水が作れなくなると、配水池や送水管などが空になります。復旧後、そのまま水を送ると、沈殿していた錆などを巻き上げ混濁する為、配水池や送水管の清掃が必要、ということです。盛岡市上下水道局では、震災の停電の教訓を踏まえ、各浄水場とも自家発電機など停電に備えた設備を整備しました。沿岸での断水は、盛岡市の停電とは違い、地震・津波により、取水場・浄水場・ポンプ場・配水池・配水管等が破損しことによるものでした。発災後、盛岡市上下水道局では、市内の給水の他、大阪市や神戸市など全国の応援隊と連携し、沿岸被災地の応急給水も行いました。ある職員は『釜石の小さな避難所で給水を終えて車に乗り込んだら、縁側に座っていた、おそらく足が不自由と思われる高齢女性が拝むようにして見送ってくれました』と当時を振り返ります。

盛岡市上下水道局では「災害に備えて日頃から浴槽などに生活用水を溜めておくことを心がけてください。溜めおきは、小さなお子さんの事故等に十分ご注意ください。又、受水槽を設置してポンプにより各戸に給水をしているマンションやアパートでは、発電機が無い場合、停電時に水道水を利用できなくなることが想定されます。普段から水のくみ置き等の対策をしてください。停電時に水が出る場合でも、受水槽内に残っている水しか使えないので、節水に努めてください。停電復旧後は、水道水に空気や錆などが混じり、濁る場合があります。しばらく水道水を流してからご使用ください」と呼びかけています。

629回「永訣」2021年6月5日OA

2021年06月05日 6:00 PM

今日は新曜社「永訣 あの日のわたしへ手紙をつづる」を紹介します。東北学院大学震災の記録プロジェクトの三回目の企画で、10年前の自らに記した過去への手紙31編が綴られています。

宮城県丸森町(まるもりまち)出身で、県外の大学に進学した20歳の男性は、小学4年生の時、福島県相馬市で働いていた父親が津波で犠牲になりました。彼は3月11日の朝、父親に「朝ごはんの目玉焼き、今までで一番おいしかったよ。行ってきます」、この言葉が言えなかったことを後悔しています。「被災地は復興してきています」「傷が癒えてきています」という報道に違和感があり「自分がどれだけ復興できたか、どれだけ立ち直ることができたのかは他人が決めることではなく、自分自身で決めることだと思っています」と復興途上の気持ちを打ち明けます。そして「残された家族で幸せな家族を作っていくことを約束します」と締めくくっています。福島県浪江町(なみえまち)出身の23歳の女性は、津波で父親が行方不明になりました。年月が経つと、「本当になってほしくないから」「お父さんが帰ってこないことを」願うようになりました。そして「行方不明と言いたくない時」「離婚や単身赴任、静かな人で会話がない」など嘘をつくようになりました。「嘘をつく度に、お父さんにも友達にも本当に申し訳なくなりました。でも、それ以上に怖いんです。どんな雰囲気になるか、同情か父親の会話がしにくくなってしまうのではないか」と吐露します。結びに「今のあなたは本当に幸せ者です」「嘘をつく人にならないでください。後悔なく、一分一秒を生きてください」と優しく語りかけます。宮城県雄勝町(おがつちょう)、現在の石巻市出身の23歳の女性は、震災で母親を喪い(うしない)ました。彼女は、今回の手紙を書く数週間前に聞いた『この子たちには幸せになる権利がある』という言葉を紹介しています。「震災をハンデと捉えず誰よりも幸せになれとストレートに言ってくれているように感じました。13歳の私にも、23歳の私にも幸せになる権利はあります」「これから先の人生も全力で幸せでいましょう」と誓っています。

編者で、去年3月まで東北学院大学教養学部で教鞭を執り、現在、関西学院大学社会学部の金菱清(かねびしきよし)教授は、「災害の恐ろしさや爪痕の深さを一番よく知っているはずの被災者・当事者が、それを知らない当の本人に対して直接伝えることの難しさ」を指摘しています。31編の手紙は、10年の歳月と向き合う中から、災害の教訓とは何かをも伝えています。

628回「津波避難 3つのS」2021年5月29日OA

2021年05月29日 6:00 PM

今日は、永野海(かい)さん著「みんなの津波避難22のルール 3つのSで生き残れ!」(合同出版)を取り上げます。東日本大震災の被災者支援をしている弁護士・防災士の永野さんが、津波から命を守る為に「これだけは知ってほしい!」ことをまとめたものです。マンガや写真が多く、漢字にはルビを振っていて、親子で防災について学べる本になっています。

さてタイトルにある「3つのS」とは「SWITCH(スイッチ)」「SAFE(セーフ)」「SAVE(セーブ)」の頭文字のことで、永野さんが東日本大震災を教訓に、津波の避難行動を分類したものです。スイッチとは「津波から逃げるスイッチ」。宮城県石巻市の大川小学校では、北上川を遡上してきた東日本大震災の津波に襲われ、多くの児童・教職員が犠牲になりました。大川小学校事故検証委員会がまとめた報告書では、事故の直接的な要因の一つに避難開始の意思決定=スイッチが遅かったことを挙げています。セーフとは「安全な避難場所とルート」。釜石市の鵜住居防災センターは、東日本大震災の津波に襲われ、避難した多くの住民が亡くなりました。釜石市がまとめた報告書によりますと、鵜住居防災センターは本来、津波の避難場所ではなかったにも関わらず、避難訓練の際に使用され、又、市は防災センターを「避難訓練のみのための避難場所」として容認し、危機管理体制の見直しを行っていませんでした。住民は、高台にある本来の津波避難場所=安全な避難場所を理解していなかったのです。セーブとは「最後までいのちを守り抜くこと」。私は震災後、取材で山田町を訪れました。そこで津波で命を落とした理由の一つに、高台に避難したものの、貴重品を取りに自宅に戻ったから、と聞きました。津波の危険がある場合、安全な場所を離れてはいけないのです。この本では、津波避難22のルールを3つのSに区分し、3つのSのどれかが欠けると被災すると警鐘を鳴らします。

永野さんはリスナーに『取材を重ね、津波訴訟なども分析し、東北での津波の教訓をまとめさせていただきました。津波避難のルールを、30年後も100年後も1000年後もしっかりと継承し、未来の命を津波から守ってほしいです』と訴えています。

 

625回「防災シミュレーター2」2021年5月8日OA

2021年05月08日 6:00 PM

前回に続いて内閣府の防災情報HP内「震度6強体験シミュレーション」を取り上げます。震度6強とは、はわないと動くことができない、飛ばされることもあるような揺れです。「どんな予防対策を取らなくてはいけないか?」「どんな避難行動をとるべきか?」ゲーム形式で疑似体験ができます。

震度6強の揺れの後、散らかった家の中を移動しなければなりません。選択肢は『A.スリッパを履いて移動 B.とりあえず散乱している物の上に新聞紙などを敷いてその上を移動 C.靴下を履いて移動 D.裸足で移動』。ここで靴下を履いて移動を選ぶと、『-10』と表示され生き残りレベルゲージが減ります。取るべき行動はA、スリッパを履いて移動です。足の裏の保護が大切です。何も保護しないと、散乱したガラスの破片で足の裏を切り、全く避難できなくなってしまいます。スリッパを履くことが最も安全ですが、無い場合には、雑誌や新聞などを床に敷いたり、靴下を2枚履いたり、タオルやシャツなどで足の裏をカバーしたりして、ケガをしないように養生しましょう。次の質問『Q.ライフラインが止まり飲料水も確保できません。その為、家族で一時避難場所へ行くことにしました。どうしますか』『A.電気はつけたままにし、ガスはいつでも使えるようにしておく B.電気のブレーカーを落とし、大元のガスの元栓を閉める』。取るべき行動は『B』です。勝手口などにある分電盤のアンペアブレーカーをオフにしてブレーカーを落とし、通電火災を防ぎましょう。通電火災とは、地震後の停電を経て再び電気が通じた時に電源が入ったままの電化製品から出火する火災です。

続いて避難について整理します。あなたはまず家族と近くの一時避難場所へ向かいました。そこで近所の人々から情報を得、避難所へ向かいました。「一時避難場所」とは、地震直後の情報交換の場所です。近くの公園や小・中学校のグラウンドなどで、近所の方々が集まって地域の防災情報を共有したり、安全を確認したりします。「避難所」とは、地震によって住む家を失った方々が一定の期間、生活をするための場所です。防災知識を身につけ、災害への備えを見直す機会になるこのHPは「防災シミュレーター」で検索すると御覧になれます。

624回「防災シミュレーター1」2021年5月1日OA

2021年05月01日 6:00 PM

内閣府の防災情報HPに「震度6強体験シミュレーション」があります。震度6強とは、固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる揺れです。「どんな予防対策を取らなくてはいけないか?」「どんな避難行動をとるべきか?」ゲーム形式で疑似体験ができます。

スタートをクリックすると、リビングでテレビを見ている設定から始まります。突然テレビから『強い揺れに警戒してください。身の安全を確保してください』と緊急地震速報が流れました。最初の質問は『Q.他の部屋には家族がいます。どうしますか?』『A.速報を大声で伝える B.家族がいる部屋へ走る』。ここで『家族がいる部屋へ走る』を選ぶと『-5』と表示され生き残りレベルが減ります。取るべき行動はA、家族全体に知らせることです。緊急地震速報が出た後、地震が到達するまでわずかな時間に、何を言うか、何をするのか、事前に家族と話し合っておくことが大切です。又、全ての部屋で安全を確保できる場所がどこか、確認しておきましょう。続いての質問『Q.あなたはコンロのすぐ近くにいます。コンロを見るとグツグツ煮立っている鍋があります。どうしますか?』『A.流しに鍋を入れる B.コンロの火を消す C.何もせず熱湯の危険がおよばない場所へ避難する』。ここで『コンロの火を消す』を選ぶと『-15』、生き残りレベルが減ります。取るべき行動は、鍋の中の熱湯や熱い油から遠ざかることです。緊急地震速報の後、揺れが来るまでに、煮込んでいる鍋が落ちてきても影響がない場所まで避難することが、もっとも危険度が低いのです。尚、コンロの火がついたままでも震度5以上の揺れを感知すれば、自動的にガスは止まり火も消えます。もし火が出たならば、慌てず初期消火につとめましょう。

続いての質問『Q.あなたは自分の身の安全を確保しなければなりません。どうしますか?A.家から外に飛び出す B.強度のあるテーブルの下などに入る C.その場にしゃがみ込み手で頭を覆う』。ここで『家から外に飛び出す』を選ぶと『-20』、生き残りレベルが減ります。まず頭と目を守ることが大切で、ダイニングではテーブルの下に潜ります。家から飛び出すのは大変、危険です。もし外にいる場合は、かばんなどで頭を守ることを意識しましょう。

623回「倉庫内の防災」2021年4月24日OA

2021年04月24日 6:00 PM

今日は、倉庫内の荷崩れの危険についてです。厚生労働省によりますと、陸上貨物運送事業では、荷役作業時の死亡災害の約8割を占めるのが「墜落・転落」「フォークリフト使用時の事故」「無人暴走」及び「トラック後退時の事故」そして「荷崩れ」で、荷役5大災害と位置付けられているそうです。

「職場のあんぜんサイト」から労働災害の2つの事例を見てみます。1例目は、米穀店の倉庫です。保管している玄米はフォークリフト用のパレット=荷台に乗せられ3段に積み上げられていました。玄米の積み下ろしをしていた作業員は、玄米袋が不安定だったことから、フォークリフトを降りて様子を見に行ったところ、上2段のパレットが玄米袋ごと崩れ下敷きになり、死亡したものです。米袋が不安定な状態になることは予測されていたものの、安全対策がなされていなかったのです。2例目は自動車部品の倉庫です。フォークリフトに乗った作業員が、部品が入っているパレットを取り出す作業をしていた際、フォークの先端が隣の4段積みの木箱に接し全体が倒れそうになりました。フォークリフトを降り木箱を支えようとしたところ、木箱が倒れ下敷きになり、死亡したものです。運転席から離れる時は必ずエンジンを停止し、ブレーキをかける等の措置を取らなければなりません。しかしこのケースではフォークの先端が接触したままでギアが前進に入っており、エンジンが動き続け、振動を与え続けたことが事故原因の一つでした。もしも大地震が発生したら、多くの倉庫で荷物が崩れ落ち、直接作業員にぶつかったり、落下した荷物により避難経路が確保できず、逃げ遅れたりする場合も考えられます。加えて倉庫の機能が維持できなくなり、物流に多大な影響が出るでしょう。

2016年4月の熊本地震をきっかけに、積荷の落下によるけがや破損を防ぐ仕組みを検討し、荷物の転落防止柵が付いたフォークリフト専用収納ラックを開発したのが、以前もお伝えした愛知県に本社があるウェイト東海です。テコの原理を利用して可動するため、電源は必要ありません。積荷を置くとゲートが閉まり、積荷を上げるとゲートが開きます。設置場所を選ばず、停電時も可動します。ウェイト東海の片山和洋社長は『職場の危険を認識してほしい。救える命、減らせる災害はあると信じています』と、安全を最優先する社会実現を訴えています。

 

621回「大地震の確率」2021年4月10日OA

2021年04月10日 6:00 PM

先月26日、政府の地震調査委員会は全国地震動予測地図2020年版を公表しました。前回まで除外していた東日本大震災後の地震を考慮した形で、太平洋側の東北地方では強い揺れに襲われる確率が、軒並み増加しました。今後30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率について、全国を250m四方の小さな区画に分けて揺れを推定したものです。県内の市役所・町村役場周辺について見てみると、大槌町が前回18年版を12.8ポイント上回る58.3%の他、宮古市56.1%、野田村48.0%、久慈市45.9%、普代村36.0%と沿岸を中心に高くなっています。釜石市役所は31.5%ですが、釜石駅周辺が前回18年版を14.4ポイント上回る59.1%です。地震による揺れは、地表付近の地盤=表層地盤によって増幅されます。増幅の度合いは表層地盤によって大きく異なり、数百m離れた2地点間で揺れの確率が数倍違うことも珍しくないのです。内陸部は沿岸より低い傾向です。しかし役所・役場周辺以外で、一ノ関駅44.5%、水沢江刺駅周辺41.3%、矢巾町の岩手医大周辺30.1%など高くなったエリアもありました。平野部や河川沿いなどは、地盤が軟らかく揺れやすいのです。

地震動予測地図は最新の知見に基づいて作成されていますが、使用できるデータには限りがあるため、結果には不確実さが残ります。例えば、地震計が設置されたのは明治以降の100年少々ですから、近代的観測データがあるのは、これまで地震が起こってきた長い歴史の内のごくわずかな期間です。又、国内にはまだ活断層調査等が十分でない地域があります。こうした理由から、例えば、現時点では確率が低くても、今後の調査によってこれまで知られていなかった過去の地震や活断層の存在が明らかにされ、確率が上がる可能性があります。

大震災から10年が過ぎた東北をはじめ、日本列島が全体的に大地震の危険が高いことを示す結果となり、地震調査委員会の平田直(ひらたなおし)委員長は『改めて地震に備えほしい』と呼びかけています。詳細は防災科学技術研究所のウェブサイト「地震ハザードステーション」で公開していますので、自宅や勤務先、通学先などについて調べてみてはいかがでしょうか。建物の耐震化や家具の転倒防止など、まず出来るところから事前の備えを始めることが大切です。

 

620回「宮城県沖地震」2021年4月3日OA

2021年04月03日 6:00 PM

先月20日午後6時9分、宮城県沖を震源とする地震では、仙台市や石巻市など宮城県で震度5強、県内でも最大震度5弱を観測。宮城県沿岸には一時、津波注意報が出されましたが、津波は観測されませんでした。総務省消防庁によりますと、けがをした人は、宮城県9人、岩手県1人、福島県1人、計11人です。県によりますと盛岡市で40代の女性が転倒して口の中を切る軽いけがをした他、遠野市で住宅の外壁が一部崩落する被害などがありました。気象庁はこの地震について東日本大震災の余震とみられるとしています。

今回の地震について津波工学を専門に研究している東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長は『地震の発生した場所が沿岸部に非常に近い。地震の真上で津波が発生して、津波の到達も揺れと同時ぐらいに起きた』と解説します。県内では過去に、揺れの後すぐ津波が来襲し被害があったというデータは無いとのことですが、同様の条件で津波が来る可能性があり、岩手も例外ではないと指摘します。今回、県内には津波に関する発表はありませんでした。隣の県で津波の注意報や警報が出された場合、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。今村所長は、2016年の福島県沖地震を例に挙げます。11月22日午前5時59分、福島県沖の深さ25キロでマグニチュード7.4の地震が発生しました。午前6時3分、福島県に津波警報、宮城県には津波注意報が出されました。その後、午前8時9分、宮城県の津波注意報は津波警報に切り替わりました。今村所長は『津波が大きくなり宮城でも警報に変わった。こういう状況もあるので岩手の南側では宮城県の情報を、北側では青森での情報を得るようにしていただきたい』とアドバイスします。

今後の地震について、今村所長は『震災から10年が経った。余震の活動は少なくなっていたが、今年から少し多くなり、2月13日以降、活発化している。大きな地震、又は余震が一定の大きさで起こると、海底で力のバランスが少しずつ、ずれてしまい、そういう所では地震が誘発されやすくなる。今までの状況ではなく、活発化しているということを頭に入れて頂きたい。又、全体の揺れで地盤が緩くなっている。揺れに対する備えの他、土砂災害への備えも頭に入れておいてほしい』と、備えの継続を呼びかけています。

619回「三鉄の物語」2021年3月27日OA

2021年03月27日 6:00 PM

東日本大震災で被災し、復興するまでの三陸鉄道と沿岸各地の街並みを描いた絵本「リアスのうみべ さんてつがゆく」が先月、岩崎書店から出版されました。作者は野田村出身で久慈市在住の詩人、宇部京子さんです。三陸鉄道が陸中野田駅から久慈駅の間を力強く走り出したのは、震災発生からわずか5日後のことでした。宇部さんは『水がない、電気がない、ガソリンがない、灯油がない、国道を車1台も走っていない。そんな時に走れるわけがないだろうと。だけど走ってきたんです』と当時を振り返ります。宇部さんは支援物資の仕分けや民家の泥出し、そして野田村図書館の再建とふるさとの復興のために尽力しました。震災から2年が経った頃、『ガレキは少しずつなくなっていくけれど、三鉄がその上を毎回ちっちゃい体で走っていく。一生懸命つぶさに見ていると、5日後に走った三鉄もすごいけれど、その後の三鉄のこともやっぱり書きたくなりました』と筆を執った思いを語ります。

宇部さんの方言を使った温かい語り口の文章に、優しいタッチの絵を添えたのが、盛岡市在住のイラストレーター、さいとうゆきこさんです。震災後映画の上映会などのボランティアで被災地を回り、その活動から『生きた芸術は人々の心をほぐす力があると感じた』と言います。絵本の制作に携わるのは今回が初めてだった、さいとうさんは、宇部さんが紡いだ物語を丁寧に読み解くことで、絵の世界観を広げていきました。海辺の松林に鮮やかな草花が描かれたシーンは、津波によって失われた、宇部さんの心の中にいつまでも残るふるさとの風景。一番力が入った場面だと振り返ります。

宇部さんは『現場にいた人間は、後世にこういうことがあったと伝えなければならない使命がある。そして子ども達に、色々なことがあるけれど、打開策を考えて行動する勇気や決断力を伝えていけたら』と、絵本に託した思いを語ります。絵本は、こんな言葉で締めくくります。「みんながげんきになれば あっちも こっちも つながって あだらしいせかいが はじまるんだ。ほれ、ポッポー!!」被災地で暮らす人達を励まし、力強く走り続ける三鉄。この絵本を親子で読むことで、震災を見つめ、復興のその先を考えるきっかけになりそうです。

 

618回「震災10年」2021年3月20日OA

2021年03月20日 6:00 PM

震災から10年。私は3月11日、県と市の合同追悼式が行われた陸前高田市に参りました。陸前高田では県内で最も多い1606人が亡くなり、202人が行方不明。総世帯数の半数にあたるおよそ4000棟の住宅が全半壊したほか、市役所などの公共施設も全壊するなど壊滅的な被害を受けました。去年4月11日に開館した高田町にある市民文化会館「奇跡の一本松ホール」は、一般参加の献花会場でした。大船渡から献花に訪れた50代夫婦は、奥様のお父様が高田町で津波に呑まれ、5日後、変わり果てた姿で見つかりました。ガンの手術が成功し、1年経った頃でした。彼女はこの10年を『時間の感覚が無い』と振り返っていました。そして当時、中学生の娘さんは東京で看護師になり『花嫁姿を見せたかった』と無念を口にしていました。

陸前高田市の人口は震災前、2万3000人を超えていましたが、今年1月末現在1万8000人余り。震災以降、減少が続いています。市内に住む60代女性は『広報を見ていると、誕生より亡くなっていく人が多い。生まれる人が少ない。悲しくなる。子ども達が少なくなっている。周りに子どもの声がない』と寂しさを滲ませます。市の中心部周辺は、津波の浸水地で10mかさ上げされました。背後の北側の山は削られ、高台団地の造成が行われ住宅が立ち並びます。今年5月に業務開始予定の市役所の新庁舎は濃い灰色の7階建てで、この日もバックホーやトラックが行き来していました。かさ上げ地は、新しい商店や住宅がまだ少なく、空き地が広がり、草が生い茂っています。まち作りは緒に就いたばかりです。

新型コロナ禍の中、県外からのお墓参りの姿は減っています。又、人との接触の制限は、被災地の高齢者の孤立感に拍車をかけています。震災で妻、義理の母親、長男が帰らぬ人になった大槌町の80代男性は、仮設住宅を出て3年前に自宅を再建し1人暮らしです。彼は『仮設の頃は支援の人が来てくれた。今は家にただいるだけ。テレビとにらめっこ。退屈でしょうがない。1人でいるのが辛い。とにかく健康が不安』と語っていました。心の安定に繋がる地域のサポートが必要と感じました。あれから10年は、終わりという意味の区切りではなく、震災は続いています。

617回「停電の要因」2021年3月13日OA

2021年03月13日 6:00 PM

先月、県内で発生した停電についてお伝えします。東北電力ネットワーク岩手支社によりますと、先月13日(土)の福島県沖の大地震では、一関市で2万1165戸が停電しました。又、先月16日(火)、急速に発達した低気圧による暴風では、盛岡市や八幡平市など内陸を中心に13市町村で延べ3339戸が停電しました。

この2つの停電の要因は異なります。13日の地震では、東北エリアで約9万戸、東京エリアで約86万戸、併せて約95万戸が停電しました。地震の影響で東北・東京エリアに接続している複数の発電所が安全のため停止し、東北電力管内では宮城県仙台市にある2基の火力発電所が自動停止しました。そのままでは電力の需給バランスを維持できず大規模停電になってしまうことから、県内では一関市の需要を遮断、つまり停電になったのです。尚、その後の点検により設備の破損などが無いことが確認され、約1時間後、一関市の停電は解消されました。一方16日は、暴風によって倒れた樹木が電線に接触し漏電=つまり大地に流れてしまったり、電線が切れてしまったりしたことが停電の主な原因でした。倒木の接触のみで電線が切れていない場合は樹木を除去し復旧。電線が切れている場合は、樹木を除去し、電線を張り替えるなどして復旧する、とのことです。

各家庭の停電対策は、防災の備えの一つと言えます。内閣府の調査によりますと、照明確保のために停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備していると回答した世帯は約43%と半数に満たない状態でした。夜間の停電は、出口がわからない、床の段差やガラスの破片が見えないなど危険です。寝室などに懐中電灯や足元灯を備えましょう。我が家では停電した際、自動で点灯する懐中電灯と足元灯を備えたタイプを1階の廊下、階段、2階の寝室に設置しています。又、インターネットや携帯電話が利用できない場合に備え、ラジオや予備の電池を常備しておきましょう。避難の為に自宅を離れる時は、停電状態でもブレーカーを切りましょう。地震の揺れで電気ストーブやヒーターの上に布などが落下してしまった場合、不在中に電気が復旧すると通電火災の恐れがあるからです。

※スマートフォンアプリ「東北電力ネットワーク 停電情報」は県全域や市町村単位などで通知設定が可能で、停電情報収集に役立ちます。

615回「福島県沖地震の教訓」2021年2月27日OA

2021年02月27日 6:00 PM

今月13日午後11時7分ごろ、福島沖を震源とする大地震があり、宮城県と福島県で震度6強を、県内では一関市と矢巾町で震度5弱を観測しました。この地震による津波はありませんでした。これほど大きな揺れなのに、なぜ津波が発生しなかったのでしょう。今回、地震の規模を示すマグニチュードは7.3で、震度7を記録した1995年の阪神・淡路大震災、同じく震度7を記録した2016年の熊本地震と同じでしたが、2011年の東日本大震災の9.0程ではありませんでした。一方で震源の深さは東日本大震災の約24キロに対して今回は更に31キロ深い約55キロでした。一般的に震源が深いと海底のずれが起こりにくいことから、今回の地震では津波が発生しなかったと考えられます。

この地震で、県内では、奥州市内に住む60代の女性が自宅で転倒し、右手首を負傷しました。県内のけが人は1人です。総務省消防庁によりますと、2月25日現在、福島市で1人が亡くなった他、福島県や宮城県を中心に全国で186人がけがをし、その内、12人が重傷です。けがをした状況を検証することで、地震で負傷しない為の対策が立てられます。福島県では100人がけがをしました。県によりますと、二本松市の73歳の男性は、壊れた階段を下りる際に散乱していたガラスを踏んで足を切るケガをする等、割れたガラスで負傷した方が5人います。足元の安全の為、枕元に懐中電灯とスリッパ等の履物を準備しましょう。又、矢吹町の68歳の女性は、仏壇が落下し頭にけがをし、白河市の79歳の女性はタンスが倒れ、足にけがをしました。建物が無事だったとしても、家具類の転倒により、下敷きになってけがをしたり、逃げ道が塞がれたりする恐れがあります。転倒防止金具を活用して固定する他、就寝中に倒れても人に当たったり逃げ道を塞いだりする位置には置かないようにする等、対策を講じましょう。

その他の被害で、福島県では、相馬市内の常磐自動車道上と、二本松市内の自動車レース場で土砂崩れが発生しましたが、どちらもけが人はいませんでした。もしこれが自宅の裏山だった場合、死傷者が出た恐れがあります。土砂災害危険区域にお住まいの方は、夜間に土砂崩れが発生した場合に備え、斜面とは反対側、建物の2階以上の部屋で休むようにしましょう。

 

613回「盛岡藩 災害の記憶」2021年2月13日OA

2021年02月13日 6:00 PM

盛岡市内丸にある「もりおか歴史文化館」では、江戸時代の盛岡藩で起きた災害を振り返る企画展が開かれています。盛岡城を中心とする盛岡藩は、現在の岩手県・青森県・秋田県にまたがるエリアで、長い海岸線を持つ大きな藩でした。もりおか歴史文化館には盛岡藩の家老が江戸時代を通じて書き続けた政務日記などの貴重な記録類が保管されています。その内、地震と津波、岩手山の噴火、城下町盛岡での洪水や火災について、絵図や文献資料など30点を展示し、発生時の様子や被害状況ついて紹介しています。

幕府に提出する為に盛岡藩全域を描いた「盛岡藩国絵図(くにえず)」は、縦2m、横3mと大きな地図で、企画展にあわせ、江戸時代に地震、津波の被害があった場所にシールを貼り示しています。盛岡、花巻、三戸などには青いシールが貼られ、1772年=明和9年の地震で被害があったことを示しています。記録によりますと「明和9年5月3日、晴れ。大地震あり。地割れ発生。盛岡城の石垣2か所膨らむ。武家屋敷など所々破損。盛岡城以外では遠野、大槌、宮古で被害。特に崖崩れによる被害が各地で多発し、男性5人、女性6人、馬21頭、牛1頭が死亡」とあります。陸域の震源の浅い地震で、内陸の被害が目立ちます。一方、沿岸部には黄色いシールや濃いピンク色のシールが貼られています。それぞれ1793年=寛政5年、1856年=安政3年の海溝型地震を表していて、三陸が繰り返し津波に襲われていることがわかります。

又、岩手山の噴火に関するコーナーもあります。1686年=貞享(じょうきょう)3年の噴火の際、江戸幕府への報告には「盛岡城下において三月二日は、空は曇り雪が少し降る中、明け方ごろ落雷のような音が鳴り、盛岡城下の南を流れる北上川が濁り、魚などが流れ込んだ。午後4時頃から空が晴れると、盛岡城下の西方にある岩手山という山から煙が上がっており、日が暮れると、およそ幅2m、長さ1キロメートルの火柱が確認され、城下まで火山灰が降り注いだ」と記されています。この記録から、もし岩手山が噴火したら、私達の生活にどんな影響が出るのか、想定するヒントになります。過去に起こった「災害の記憶」を見つめることで、現代を生きる我々が次の災害に備えるきっかけになるこの企画展は3月15日まで開かれています。

 

608回「日本海溝・千島海溝沿い巨大地震3」2021年1月9日OA

2021年01月09日 6:00 PM

東日本大震災の発生から9年半を迎えた去年9月、内閣府があるデータを公表しました。三陸沖から房総沖にかけての日本海溝沿いで巨大地震が発生した場合の津波の浸水想定です。マグニチュード9クラスの巨大地震に伴い、東日本の太平洋岸の広い範囲に津波が到達するとされていて、水門や防潮堤などのインフラが破壊された場合、県内の沿岸12市町村全てで広い範囲が浸水するとされています。今回の想定の検討にあたった、津波工学を専門とする東北大学の今村文彦教授は「同じような規模の地震が1600年代に起きていた可能性があり、400年前に起きている。400年というのが一つのサイクルである可能性があるので、実はそう遠くない状況でこの最大クラスの地震が起こる可能性がある」として、この巨大地震はいつ起きてもおかしくないと警鐘を鳴らしています。

津波が遡上する高さが29.7メートルで、県内で最も高い想定の宮古市。日本海溝版の浸水想定では、東日本大震災で被災しなかったエリアでも浸水するとされた場所が多くあります。その為、新たな浸水想定を書き加えた形でハザードマップを更新し、2月1日号の「広報みやこ」と共に配布するということです。策定した新たなハザードマップではこれまで指定していた避難場所のうち浸水の可能性のある箇所を削除。さらに高台に新たな避難場所を25か所指定しました。例えば津軽石川の河口にあたる赤前地区では、当初、赤前コミュニティ消防センターも避難場所に指定されていましたが、新たな浸水想定の公表で浸水する可能性があるということで、さらに高台にある赤前小学校に避難場所が統一されました。この他、市内中心部の宮古消防署前とつつじヶ丘公園の高台は、標高が高い小沢地区の2つの高台に変更される他、上村修道場付近の高台も廃止され、磯鶏小学校の高台が新たな避難場所となります。宮古市危機管理課の芳賀直樹危機管理監は「山に登りさえすればとりあえず命は守ることができますので、日本海溝の大きな地震が来ても犠牲者を出さないということを最大の目標に防災の活動を続けていきたい」としています。

一次避難場所だけではなく、更に安全な二次・三次避難場所も訓練で確認するなど、浸水エリアに関わらず逃げることが命を守ることに繋がります。

605回「復興研究会が制作した絵本」2020年12月19日OA

2020年12月19日 6:00 PM

今日は大槌高校復興研究会の取り組みについてです。148名の生徒が学ぶ岩手県立大槌高校。2011年3月11日に起きた東日本大震災の津波は、高台にある校舎に続く坂のすぐ下まで押し寄せましたが被害を免れ、学校は震災当日の夜から8月上旬まで地域の避難所として利用されました。避難所運営に携わった経験などから、生徒は2013年、新たなまちづくりに貢献する為「復興研究会」を立ち上げました。部活と並行した活動で、毎年、復興過程を写真で記録するなど定点観測を行っています。その復興研究会では今年度、東日本大震災の教訓を絵本にまとめました。タイトルは「伝えたいこと あの日、私は小学2年生だった」。A4横72ページで、避難途中『見てはいけない』と視界を遮る大人たちの間から見えた津波に呑まれる町の光景や、避難した体育館でカーテンを布団代わりに寝た体験などが描かれていて、不安や悲しみが伝わってきます。又、地震の後の取るべき行動についてクイズ形式でも取り上げていて、震災を経験したからこそ伝えられる『未来の命を守りたい』という想いを発信しています。

制作に取り組んだのは、津波に追われながらも高台に避難して助かった当時小学2年生だった女子生徒3人です。その内の1人、大槌高校3年の佐々木結菜(ゆいな)さんに聞きました。昭和三陸津波の経験を親や祖父母たちから聞いた人が、今回の津波から逃げて助かったということを耳にし、『震災体験を伝承することで、正しい行動を取るきっかけになれば』と作成したということです。この絵本にはDVDが付属しています。美術部員の協力を得た絵の画像と共に、『文字だけより感情を込めた方が伝わると考えた』と、自分たちの声で文章を読み上げた約22分の音声が収録されています。

東日本大震災復興支援財団の助成を受け200冊印刷された絵本は、県内沿岸の70の小学校に寄贈した他、全国の学校や図書館などに配布しました。新型コロナウイルス感染症の影響で伝承機会が限られる中、今回の絵本は何度でも手軽に読めることで、新たな伝承ツールになっています。復興研究会顧問の松橋郁子先生は『月日が経つと記憶が薄れる中、生徒の体験談、気持ちの他、震災時、周りの大人たちがどう支えてきたかも理解していただければ』と被災地発の絵本の役割に期待を込めていました。

 

603回「地震時計」2020年12月5日OA

2020年12月05日 6:00 PM

遠野の70代男性からお便りをいただきました。ありがとうございます。「小生が子どもの頃(昭和30年代)家に『地震時計』らしきものが貼ってあり、祖母が地震の度に『雨が降るぞ』とか言っていました。B4版ぐらいの紙に時計が書いてあり、文言は記憶していませんが祖母は『4・6の雨に・・・』とか言っていました。天気予報の歴史の一端にあるか気になりました。何だか富山の家庭の置き薬屋が紙風船とか一緒に配ったような気がします」とのことです。

盛岡市教育委員会事務局歴史文化課に問い合わせましたが、残念ながら地震時計そのものは所管する博物館施設にありませんでした。ただ地震の時刻で天気を予想する言い伝えは、県内の民族関連の書籍に記されていました。その内、岩手県教育委員会が昭和57年3月に発行した「岩手の俗信 第二集 天文気象に関する俗信」には、「地震による天気予察」という記述がありました。『往時、地震の事や天気の事等が不可思議であった事から、この間には何か関係があるかと推量し、次のような歌が生まれています』として、胆沢、江刺、釜石、東磐井、盛岡に伝わる『九は病、五、七が雨に四つ旱、六つ八つは風とこそ知れ(くはやまい、ごしちがあめによつひでり、むっつやつはかぜとこそしれ』と紹介しています。

これらの数字は昔の時刻の表し方です。日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 大衆芸能編 寄席」のHPでは、江戸時代の庶民の時刻の表し方について「午前0時が九つで、約2時間ごとに八つ(やつ)、七つと数が減り、四つ(よつ)まで行くと再び九つになります。9は1桁の中で一番大きい数字なので縁起がよいという考え方があり、九つから始まっています。本来、次はその2倍の18、その次は3倍の27なのですが、数字が大きくなって数えるのが大変なので10の位を取り除き八つ、七つと表しています」と解説しています。つまり先程の歌であれば、0時(九)に揺れが来れば病気がはやる前兆、8時(五)と4時(七)なら雨が降り、十時(四)は日照り、六時(六)と二時(八)に揺れれば大風の吹くしるしだ、と言うことです。これらは迷信ですが、先人の残した言葉に触れると、自然を理解しようという探究心は今も昔も変わらない、ということを実感します。

594回「警視庁ツイッター2」2020年10月3日OA

2020年10月03日 6:00 PM

今日は、以前も取り上げた警視庁警備部災害対策課のツイッターについてです。いざという時に役立つ防災情報を発信していて、2013年から始め、今ではフォロワーと呼ばれる登録者が85万人を突破する人気ぶりです。最近の情報からいくつかピックアップします。

まずはアンダーパス=立体交差で掘り下げた道路をキレイにする投稿です。交番に勤務しているその警察官は、台風などによる大雨が予想される前に、必ずアンダーパスに行って排水路のゴミを取り除くようにしている、という内容です。これは「落ち葉」や「吸い殻」などのゴミが排水溝に詰まることにより、道路冠水の原因になるからです。もし避難経路だったら、非常に危険です。災害に強い街づくりに加えて、街の美化にもなる地道な取り組みです。避難経路に雑草が生えていると通行の妨げになり、草取りが必要になります。意外な道具を使った草取りのアイデアが掲載されていました。工具の「ペンチ」を用いる、というものです。手強いタンポポも根元から簡単に抜くことができる、とのこと。大工道具ではない、発想を転換した工具の用途に感心しました。発想の転換といえば、急に暴風雨が強まり、家の内側から窓ガラスの飛散防止措置を取る際の方法も紹介されていました。段ボールやカーテンを利用するというものです。段ボールは、窓ガラスに養生テープで隙間ができないよう貼り付けます。カーテンは閉めるだけではなく、洗濯ばさみでしっかり補強する、というものです。これはあくまでも緊急的な対処です。事前に飛散防止フィルムを貼ったり、台風が接近している時は雨や風が強まる前に、早めに外側から対策しておいたりすることが大切です。災害の発生を想定し、自宅マンションで、電気、ガス、水道を使わずに、午前8時~翌日午前8時まで24時間、生活してみたという体験談もありました。ご家族は、本人の他、奥様、10歳、8歳、6歳、2歳の子供たち、計6人です。終了後にお子さんから出された「夜は真っ暗なのでライトを探すのも難しい」といった感想が掲載されていて、興味深い内容です。

防災のプロが発信する警視庁のツイッターは「警視庁警備部 災害」で検索すると御覧になれます。

592回「地震10秒診断」2020年9月19日OA

2020年09月19日 6:00 PM

今日は「地震10秒診断」についてです。あなたの住む場所で30年以内に大地震が起きる確率と、大地震が起こった場合の建物全壊の確率、停電や断水の予測期間などがすぐにわかるもので、防災科学技術研究所と日本損害保険協会がウェブ上で公開しているものです。住所を入力すれば、国内各地の予測が表示される仕組みです。地震の確率は防災科学技術研究所の研究から、ライフラインの復旧日数は過去の事例から算出しています。

例えばIBC岩手放送がある「岩手県盛岡市志家町6-1」を入力すると、震度6弱が30年以内に起こる確率が4%と出てきます。「日本における自然災害・事故等の年発生確率に関する統計資料」と照らし合わせますと、1年間の確率で参考程度になりますが、大雨による罹災が0.5%、台風による罹災が0.48%、事故や病死、犯罪ですと、火災で罹災が1.9%、心疾患での死亡と空き巣狙いが共に3.4%です。盛岡で震度6弱が30年以内に起こる確率4%は、それらの事象よりも高い確率ということになります。又、木造の建物全壊の確率は0.6%、出火の確率は冬の午後6時に起きたと仮定して0.1%です。共に1000棟の内、6棟全壊、1棟から出火という計算になります。停電は2日間、ガス停止は5日間、断水は9日間という予測です。停電の場合、テレビやスマホから情報を得られなくなり、電化製品が使えません。ラジオから情報を得たり、懐中電灯を用意したり、又、冬場は車のエアコンや、反射式ストーブなどで暖を取ったりすることを想定した方が良さそうです。そしてガスが使えない場合を想定して、缶詰など、火を使わない食品を常備。断水に備え、飲料水や、給水車が来た場合の水を確保する容器を準備すると安心です。

県内では場所によって大地震の確率に差があり、沿岸南部の海岸沿いでは、震度6強が30年以内に起こる確率が8%の地域もあります。その場合、停電が4日間、ガス停止が21日間、断水が32日間、又、建物全壊の確率が24.2%、出火確率が0.8%です。大地震で、どんな被害が出るのか、ライフラインの支障がどれぐらいの期間続き、その為にはどんな備えをすれば良いのか、具体的に考えるきっかけになるこのページは「地震10秒診断」で検索すると、御覧になれます。

 

589回「発達障害と避難」2020年8月29日OA

2020年08月29日 6:00 PM

SVDさんから質問を頂きました。ありがとうございます。「ここ最近、水害にコロナ、後は間接的な地震などの話題に頭が痛いと感じる私。先日、私が住んでいる一関市の避難所のリストを見ていた時、水害、地震の時は・・・と書いてあるのは良いけれど、私は発達障害があるし、避難所ではどうやって居るのが正しいのかわからないし、会話もできないし、寝ているのが良いのか、手伝ってと言われた時にどうやって対処するのが正しいのかよくわからないし、本当に頭が痛い話だと感じるので」。

この件について、岩手県と一関市にお聞きしました。避難所運営を担当する一関市まちづくり推進部まちづくり推進課によりますと、市では新型コロナウイルス感染症への対策として、多くの人が避難所に密集しないよう「分散避難」を推奨しているとのことです。分散避難とは、安全な地域に住む親戚や知り合いの家などに避難することです。自宅が安全な地域にあれば、無理に避難するのではなく自宅に留まる選択肢もあります。市が設置する避難所に避難する際、配慮が必要な場合は、避難所スタッフに相談していただければ、別室やテントといった個別の配慮スペースを確保するなど、避難された方の状態に応じた対応を行うとしています。また保健師等による健康調査を行い、障害者支援施設や高齢者福祉施設などの福祉避難所への避難が必要な場合は、避難された方の状態に対応した施設との調整を行い、避難体制を整えるということです。

加えて岩手県保健福祉部障がい保健福祉課では、ご家族の協力を求めています。避難所スタッフに対して「本人の心身の状態や障がいの特性をお伝えいただくとともに、併せて、本人が必要とする薬、食品などの物品や、落ち着ける場所、話しかけ方など、特に配慮する事項もお伝えいただきたい」としています。そして大規模災害時は、岩手県災害派遣福祉チームが、避難所の要支援者の福祉・介護等のニーズ把握や応急支援などを行う体制を構築する、ということです。県や市の支援体制をお伝えしましたが、それでも不安がある場合は、平時にSVDさんのご家族から、市に相談しておくことが、災害が起きた時の備えになりそうです。

 

583回「津波フラッグ」2020年7月18日OA

2020年07月18日 6:00 PM

気象庁がガイドラインを公表し、先月より運用が始まった「津波フラッグ」についてです。「津波フラッグ」とは、海水浴場で津波警報等の発表を知らせる「旗」です。長方形を四分割した、赤と白の格子模様のデザインになっています。縦横の長さや比率に決まりはありませんが、実際に見てわかるように、短い辺の長さが1m以上になります。

気象庁が津波警報等を発表すると、ラジオ、テレビ、緊急速報メール、防災無線、サイレン等、様々な手段で地域の人に伝達されます。一方で海水浴場等においては、耳で聞いてわかる伝達手段と比較して、目で見てわかる伝達手段が少ないことから、津波警報等の視覚による伝達手段について検討が行われました。背景にあったのは東日本大震災です。岩手、宮城、福島における聴覚障害者の死亡率が、聴覚障害の無い人の2倍に上った、というデータがあります。その原因として、「防災行政無線、サイレン、広報車による避難の呼びかけが聞こえなかった」「停電によりテレビの字幕や携帯メール等が使えなかった」点が挙げられています。海水浴場では、津波警報等が発表されたら直ちに避難する必要があります。しかしこのような場所では、携帯電話を持っていないことも多く、防災行政無線やサイレンでは、耳が聞こえにくい人に情報を伝えることができません。又、聴覚に障害が無くても、海に入っている場合等、波や風によりこれらの音が聞こえない場合も考えられます。このような際、津波警報等を伝達する手段として、旗による視覚的な伝達が提案されたのです。

この津波フラッグは、主に船舶間の通信に用いられ「進路に危険あり」を意味する国際信号旗(こくさいしんごうき)のUの旗と同様のデザインです。海外では海からの緊急避難を知らせる旗として多く用いられています。デザインは「視認性が高い」「色覚の差に影響しにくい」「国際的に認知されている」「遊泳禁止と混同しない」という点から選ばれました。海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら、速やかに避難を開始し、より高い所を目指して逃げましょう。

577回「日本海溝・千島海溝沿い巨大地震」2020年6月6日OA

2020年06月06日 6:00 PM

東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝と千島海溝沿いを震源とする大地震の想定を内閣府の有識者会議が公表しました。津波想定の対象は北海道と青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県で、マグニチュード9クラスの巨大地震が発生すれば太平洋沿岸の広い範囲に大津波が到達するとしています。このうち日本海溝での地震はマグニチュード9.1と想定されていて、県内では大槌町、釜石市、大船渡市、それに陸前高田市で震度6強の強い揺れに見舞われるとされました。津波の高さは宮古市が29.7メートルで全体で最も高い想定です。その他は岩泉町が26.6m、山田町が21.9m、田野畑村が20.9m、釜石市が18.5m、大船渡市が16.2m、陸前高田市が12.5mなどとなっていて、県内の沿岸市町村に10m以上の津波が到達すると想定されています。宮古から北では地点によって東日本大震災の時よりも高い津波が到達する予想となっています。

各道県の具体的な浸水想定エリアも図面で示されましたが岩手県については今回公表が見送られました。内閣府は「沿岸市町村の復興まちづくりへの影響や住民に不安を与えるといった懸念を考慮した」と説明していて、県からも公表について慎重な判断をするよう要請があったということです。これについて武田良太防災担当大臣は会見で「できるだけ早く公表できるよう丁寧に説明したい」と述べ、県内の浸水想定エリアの公表に向け地元自治体と調整を進める考えを示しました。県内の浸水想定の公表が見送られたことについて達増知事は「国の検討の目的や浸水想定の前提条件に対する市町村の理解が得られていない中での公表は見送るべきではないかとの声が挙げられている。今後とも地元に十分な理解が得られるよう求めていく」とコメントを発表しました。

有識者会議では、最大クラスの地震の発生確率を求めることは困難であるが、過去に巨大な津波が約300年から400年間隔で発生していて、直近の17世紀の津波からの経過時間を考えると、「最大クラスの津波の発生が切迫している状況にあると考えられる」としています。東日本大震災の教訓は、防潮堤のようなハードだけで命を守るには限界があるということです。今回、県内の具体的な浸水想定エリアの公表は見送られましたが、津波から命を守る為には何よりも「逃げることが大事」ということを決して忘れてはいけません。

 

576回「フクシマの社会運動」2020年5月30日OA

2020年05月30日 6:00 PM

今日は福島大学・後藤康夫(やすお)名誉教授と、基礎経済科学研究所・後藤宣代(のぶよ)副理事長の2人が、福島などに暮らす執筆者と共に、原発事故後の社会運動について著し編集した、八朔社「21世紀の新しい社会運動とフクシマ」についてです。

スタンフォード大学科学・技術と社会プログラム副ディレクターの佐藤恭子さんは「低線量被ばくの問題をどう考えるか」という章で「トランス・サイエンス」という概念を取り上げています。提唱したアメリカの核物理学者ワインバーグは低線量被ばくの遺伝的影響をあげ、動物実験で「統計的に信頼できるレベルで確認するには80億匹のマウスが必要だ」として、「理論的には科学的に答えられるはずではあるが、現実には不可能であり、科学を超えるということでトランス・サイエンス的な問題」としています。そして「被ばくは無ければ無い方がよく、全く無害な閾値(いきち=最小の値)は無い、という見方が科学者の間の広いコンセンサス(=合意)にも拘らず、実害の可能性を否定し、不安の表明を『風評被害』や『福島の復興を妨げる』と批判するのも民主的議論の圧迫・抑圧である」と指摘しています。又、後藤宣代さんは「科学者間でも見解が異なる外部被ばく、内部被ばく、そして低線量問題が、許容線量をめぐる対抗として展開している。『フクシマの運動』は、政府や行政の一方的な許容線量設定に対して、住民サイドが自主学習を重ねて、声を上げ、行動し、その設定を覆しているというところに特徴がある」と考察しています。

NPO法人コモンズの中里知永(としのり)理事長は、フクシマの運動の一つ、「いわき放射能市民測定室たらちね」について取材しています。この認定NPO法人は、原発事故による被ばくの被害から子どもたちと地域の人々の健康と暮らしを守る為、地域住民が2011年11月に開所しました。食品、水、海水、土壌、資材、人体の放射線量を測定して公開したり、2017年には内科と小児科のあるクリニックを開設し、甲状腺エコー検査や尿中のセシウムの測定なども実施したりしています。不安を感じる人たちに寄り添い、正しい情報=放射線の数値を提供する住民サイドの活動は、これからも続きます。