気象と防災 マメ知識!

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気象と防災 マメ知識!

気象予報士・防災士の神山 浩樹(IBCアナウンサー)がお届けする5分間。

◆放送日時
毎週土曜日17:50~17:55
番組開始:2009年4月〜

◆出演
神山浩樹(IBCアナウンサー)

お便り・お問い合わせ

585回「令和2年7月豪雨」2020年8月1日OA

2020年08月01日 6:00 PM

今回は熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した「令和2年7月豪雨」についてです。梅雨前線が長期間停滞し、東シナ海から暖かく湿った大量の水蒸気が流れ込み続けた為、西日本から東日本にかけての広い範囲で記録的な大雨となりました。九州、四国、近畿南部、東海で降水量が増加し、7月3日から14日にかけての総雨量は、高知県馬路村1393.5ミリ、長野県王滝村1348ミリ、大分県日田市1302ミリ、熊本県湯前町(ゆのまえまち)1243.5ミリなど、1000ミリを超える地域がありました。盛岡の年間降水量の平均は1266ミリですので、10日余りで、盛岡で1年間に降る雨と雪を合わせた降水量と同じかそれ以上の雨が一気に降ったことになります。西日本全域で雨量が多かったわけではなく、特定の地域で長く降り続いたことが特徴でした。

日本気象協会の解析によりますと、九州地方では13事例の線状降水帯が発生しました。線状降水帯は次々と発生する発達した積乱雲が、長さ50~300キロ程度、幅が20~50キロ程度で列をなし、数時間にわたって、ほぼ同じ場所を通過又は停滞することで作り出されます。2年前の西日本豪雨では東海以西の広い範囲で15事例の線状降水帯が発生しましたが、今回は九州地方だけで西日本豪雨に匹敵する数の線状降水帯が確認されたことになります。又、熊本県内最大の河川である球磨川の氾濫をもたらした線状降水帯は11時間半継続という異例の長さとなりました。

河川整備では超えることがあってはならない計画降雨量が設定されていて、この規模の雨が降っても氾濫が発生しないよう治水対策が進められています。球磨川の場合、計画降雨量が12時間で262ミリなのに対し、7月3日午後11時半頃から4日午前11時前にかけて327ミリと、計画降雨量を大幅に超える雨量となりました。球磨川は度々、氾濫して水害をもたらしてきました。熊本県人吉市にある国宝・青井阿蘇(あおいあそ)神社脇の電柱には過去の浸水の深さが記されています。熊本大学の調査によりますと1965年の浸水では2.3m、1971年は1.1mでしたが、今回は3mの痕跡があったということです。これまでの記録を上回る豪雨が頻発しています。水害から命を守る為にはどうすれば良いのか、改めて家族や地域の人たちと確認することが大切です。

 

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584回「大雨特別警報」2020年7月25日OA

2020年08月01日 9:36 AM

滝沢のオルガンさんから質問を頂きました。ありがとうございます。「改めて大雨特別警報とは何ですか?経験したことのないような大雨が降り、甚大な被害が起こる、またはもう起こっているというようなことを言われますが、特別警報が出た時点でもう逃げられない状況になっているのでは?と思うことがあります。発表の指標があるとのことですが、早めに発表することはできないものなのでしょうか?警報との違いは、どこにあるのですか?これからの台風シ-ズンに向けても心配です」

大雨特別警報とは、予想される現象が特に異常であるため、重大な災害の起こる恐れが著しく大きい旨を警告する防災情報です。警報の発表基準をはるかに超える、数十年に一度の大雨が予想される場合に発表されます。発表基準となるのが市町村毎の50年に一度の値で、例えばお住まいの滝沢市の場合、3時間降水量104ミリ、48時間降水量260ミリが目安となっています。「もう逃げられない状況になっているのでは?」ということですが、その可能性は非常に高いです。道路が川のようになっていたり、土砂が崩れて通れなくなったりしている恐れがあります。それゆえ大雨特別警報が出る前、しかも明るい内に安全な場所に避難を完了していることが肝要です。避難が間に合わない場合、川や崖から少しでも離れた、近くの頑丈な建物の上の階などに避難し、それすら危険な場合には山と反対側の2階以上の部屋に移動するなど、少しでも命が助かる可能性の高い行動をとることが重要になります。

大雨特別警報には主に3つの役割があります。1つ目は、土砂災害警戒区域や浸水想定区域など、災害の危険があるエリアから避難できていない住民に直ちに命を守る行動を徹底、2つ目は、災害が起きないと思われているような場所でも災害の危険度が高まっている異常事態であることの呼びかけ、3つ目は、速やかに対策を講じないと極めて甚大な被害が生じかねませんという危機感を防災関係者や住民等と共有することです。「早めに発表することはできないか」ということですが、大雨特別警報を出す可能性がある場合、気象庁、気象台では会見を行い周知します。ただ必ずしも特別警報レベルの大雨を予想できるわけではありません。大雨に関する警報が出された場合、どのような避難行動をとるのか、普段から想定しておくことが大切です。

583回「津波フラッグ」2020年7月18日OA

2020年07月18日 6:00 PM

気象庁がガイドラインを公表し、先月より運用が始まった「津波フラッグ」についてです。「津波フラッグ」とは、海水浴場で津波警報等の発表を知らせる「旗」です。長方形を四分割した、赤と白の格子模様のデザインになっています。縦横の長さや比率に決まりはありませんが、実際に見てわかるように、短い辺の長さが1m以上になります。

気象庁が津波警報等を発表すると、ラジオ、テレビ、緊急速報メール、防災無線、サイレン等、様々な手段で地域の人に伝達されます。一方で海水浴場等においては、耳で聞いてわかる伝達手段と比較して、目で見てわかる伝達手段が少ないことから、津波警報等の視覚による伝達手段について検討が行われました。背景にあったのは東日本大震災です。岩手、宮城、福島における聴覚障害者の死亡率が、聴覚障害の無い人の2倍に上った、というデータがあります。その原因として、「防災行政無線、サイレン、広報車による避難の呼びかけが聞こえなかった」「停電によりテレビの字幕や携帯メール等が使えなかった」点が挙げられています。海水浴場では、津波警報等が発表されたら直ちに避難する必要があります。しかしこのような場所では、携帯電話を持っていないことも多く、防災行政無線やサイレンでは、耳が聞こえにくい人に情報を伝えることができません。又、聴覚に障害が無くても、海に入っている場合等、波や風によりこれらの音が聞こえない場合も考えられます。このような際、津波警報等を伝達する手段として、旗による視覚的な伝達が提案されたのです。

この津波フラッグは、主に船舶間の通信に用いられ「進路に危険あり」を意味する国際信号旗(こくさいしんごうき)のUの旗と同様のデザインです。海外では海からの緊急避難を知らせる旗として多く用いられています。デザインは「視認性が高い」「色覚の差に影響しにくい」「国際的に認知されている」「遊泳禁止と混同しない」という点から選ばれました。海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら、速やかに避難を開始し、より高い所を目指して逃げましょう。

582回「コロナ対策からの火災」2020年7月11日OA

2020年07月11日 6:00 PM

多くの人が集まる店や施設で、新型コロナウイルス対策の飛沫防止シートを見かけるようになりました。このシートは燃えやすい性質があり、火災に注意が必要です。

大阪府の枚方寝屋川(ひらかたねやがわ)消防組合によりますと、管内にある店舗内のたばこ売り場で、レジに設置していた新型コロナウイルス感染症予防の飛沫防止シートが焼ける火災が発生しました。これは販売しているライターを試しに点火したことが原因で燃え移ったものです。ケガ人や延焼が拡大することはありませんでしたが、一歩間違えば大きな火災になったと考えられます。消防組合が行った燃焼実験では、ビニール製の飛沫防止シートに、一度火がつくと一気に拡大し、全体に燃え広がっていくのが確認できました。しかも飛沫防止シートは燃えた状態でポタポタと垂れていくことから、レジ付近にある商品等に延焼が拡大、もしくはケガをする恐れがある、としています。消防組合では、このような火災を防止する為に、「飛沫防止シート付近では火気の使用、喫煙は絶対にしない」「売場では、飛沫防止シート設置期間中はライター等を点火させないようにし、不特定多数の人が手に届く位置に置かないようにする」「ライター等は必ず店員の目の届く所で管理」するよう呼びかけています。

手指消毒の際に使用する消毒用アルコールも取り扱いに注意が必要です。蒸発しやすく、可燃性蒸気となるからです。ウォッカ等のアルコール濃度の高い酒類を使用して消毒する場合も含めて、喫煙やコンロを使用した調理等、近くで火気の使用は危険です。加えて詰替えを行う場所では換気を行いましょう。詰替えの際に発生する可燃性蒸気は空気より重く、低い所に溜まりやすい性質があるからです。又、保管場所も気を付けましょう。直射日光の当たる場所に保管すると、熱せられることで、やはり可燃性蒸気が発生するからです。消毒用アルコールは、お店だけではなく、一般家庭でも使用する機会があります。バーベキューの時や、台所での使用など、火の近くに置かないよう気を付けましょう。

 

581回「雷から身を守る」2020年7月4日OA

2020年07月04日 6:00 PM

奥州市でご主人と2人で暮らしているという70歳の女性から質問をいただきました。ありがとうございます。「私は雷がとっても怖い人間です。ラジオで雷注意報や落雷にご注意ください、と言われると、心臓がバクバクして夜も眠れなくなります。雷が怖いので夏は嫌いです。雷はどういう所に落ちるのでしょうか。又、雷が鳴る時はどこにいたら安全なのでしょうか」。

雷が怖いので夏は嫌いです、という一文がありますが、確かに盛岡の雷日数の統計を見てみると、一番多い月は8月の3.3日、次に7月の2.3日です。夏は、日中の強い日射によって暖められた地面付近の空気が上昇し、背の高い積乱雲となって雷を発生させます。夏の雷は、広範囲に発生し長時間継続する特徴があります。

雷から身を守る為には、大きく3つのポイントがあります。1つ目は「雷鳴が聞こえたらすぐ避難」です。雷鳴が遠くても雷雲はすぐに近づいてきます。遠くで雷の音がしたら、自分のいる場所にいつ雷が落ちてもおかしくありません。気象庁によりますと、雷雲の位置次第で、海面、平野、山岳と所を選ばずに雷は落ちます。近くに高いものがあると、これを通って落ちる傾向があります。グラウンドやゴルフ場、屋外プール、堤防や砂浜、海上などの開けた場所や、山頂や尾根など高い所では人に落雷しやすくなります。屋外にいる場合は、雷注意報が出ていないか、気象情報を確認しましょう。落雷の危険がある場合、安全な場所に避難しましょう。2つ目のポイントは「建物の中や自動車に避難」です。比較的安全なのは、鉄筋コンクリートの建物、自動車、バス、列車の内部です。木造建築の室内も基本的に安全ですが、全ての電気器具、天井・壁から1m以上離れれば更に安全です。3つ目は「木や電柱から4m以上離れる」です。雷雨の際、木の下で雨宿りしたくなりますが、木に落ちた雷が人へ飛び移ることがあり危険です。日本大気電気学会によりますと、落雷による死亡原因で最も多いのが「開けた平地に立っていた」場合、次いで「木の下の雨宿り」、この2つのケースが半数以上を占めるということです。また、例え林や森の中にいたとしても、同様に危険なのです。

580回「グリーンインフラ」2020年6月27日OA

2020年06月30日 10:24 AM

桜が川の土手に植えられていることが多いのは、梅雨の増水の備えになるから、ということをご存じでしょうか。花見をすることが、冬場に凍結で緩んだ土手を踏み固めることになるからです。このような自然の力を防災・減災に活用する考え方を「グリーンインフラ」と言います。昨今、国内において取り組まれているグリーンインフラの具体例が、環境省の資料「自然の持つ機能の活用 その実践と事例」に掲載されています。

新潟市では「田んぼダム」の推進により洪水被害の軽減に繋がっています。田んぼダムとは、田んぼの排水ますに小さな穴を空けた板を設置し田んぼに降った雨水をゆっくり流すことにより、排水路から水が溢れることを防ぐ仕組みです。新潟大学の協力により計算を行い、30年に1回の確率の大雨の時でも水が畔を越流せずに、ピーク流出量の7割をカットできるよう穴のサイズを設定しました。新潟市は市内の約3割が海抜0mより低い地帯にあり、大雨時の浸水により、農地はもとより市街地にも多大な被害がもたらされていました。しかし田んぼダムにより、平成23年7月の新潟・福島豪雨や近年頻発する集中豪雨の際、浸水被害の軽減に繋がりました。又、農地を田んぼダムとして活用することで、農業生産の基盤が確保されると共に、良好な田園風景や生物多様性が維持されているということです。浸水被害の最小化を図り、雨に強いまちづくりを推進している京都市では「雨庭(あめにわ)」を整備しました。雨庭とは、道路のアスファルトや屋根等に降った雨水を一時的に溜め、ゆっくり地中に浸透させる構造を持った植栽空間のことです。雨庭が持つ機能は、京都に古くからある寺や神社、庭園にも見られ、京都の庭園文化を発信すると共に、都市防災の観点から注目されています。

先日、政府が閣議決定した令和2年版「環境白書」では、国の内外で多発する深刻な気象災害について「気候変動」から「気候危機」が起きていると強調しています。地球温暖化で、気象災害のリスクが今後更に高まっていきます。人口減少・高齢化が進み、社会資本の老朽化が懸念される中、今回紹介したような災害に強く自然と調和した「グリーンインフラ」が、巨大構造物に過度に依存しない国土整備の新しい手法として進みそうです。

 

579回「新型コロナ感染リスクと避難」2020年6月20日OA

2020年06月20日 6:00 PM

日本災害情報学会は先月、新型コロナウイルスの感染リスクを考慮した災害時の避難について提言をHPで公表しました。その中では3つのポイントを挙げています。1つ目は「避難所以外の避難」です。災害から身を守る為には避難所に避難しなければ、と思いがちです。しかし大事なことは「避難=難を避ける」行動です。例えば台風や大雨で災害が発生しそうな状況とします。自宅が洪水で浸水する恐れが無い場所や、土砂災害の危険が無い場所であれば、「在宅避難」つまり自宅に留まる選択もあります。又「垂直避難」、建物の2階以上に避難することで身を守ることもできます。自宅が危険な場合、「立ち退き避難」、すなわち躊躇せず家の外へ逃げましょう。そして「分散避難」と言って安全な場所にあるホテルや親戚、知人宅も選択肢の一つです。避難所以外の避難は、密閉・密集・密接といった3密を避ける為にも有効です。ただ災害の危険が迫ってきたら、感染リスクを避けることよりも、災害から命を守ることを優先して下さい。どのような避難を選ぶのか、予め家族で話し合っておくことが大切です。そして自宅外へ避難する場合は、新型コロナウイルス感染防止対策として、マスクや体温計、消毒液なども持って行きましょう。

2つ目は「ハザードマップの確認」です。自宅や知人宅、避難所などが安全かどうか、事前に確認しておきましょう。小学校の体育館が地震の避難所に指定されていても、洪水の避難所には指定されていない等、避難所開設は災害の種類によって異なります。近くの避難所がどんな災害の際に開設されるのか、注意が必要です。

3つ目は「大雨警戒レベルの意味」を正しく理解しておきましょう。風水害の危険が迫ってきた場合、その危険度に応じた「警戒レベル」が発表されます。レベル3は「危険な場所から高齢者とその支援者などは避難開始」、レベル4は「危険な場所から全員が速やかに避難」を意味しています。去年夏、鹿児島市が市内全域にレベル4の避難指示を出した際、大勢の住民が避難場所・避難所に集まり入りきれない人がいた、というケースがありました。「全員避難」と言っても、全ての人が避難所に行くことを示したわけではなく、土砂災害警戒区域や浸水想定区域など危険な場所からの避難を呼びかけているのです。

 

578回「『新しい生活様式』の熱中症予防」

2020年06月13日 6:00 PM

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為に、一人一人が感染防止の基本である「人との間隔はできるだけ2m、最低1m空ける」「マスクの着用や手洗い」「密集・密接・密閉といった3密を避ける」等の対策が求められています。このような「新しい生活様式」における熱中症予防のポイントが厚生労働省のHPで公開されています。

ポイントは大きく4つあります。1つ目は「マスクの着用について」です。マスクは着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。従って高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなる恐れがあります。屋外で人と十分な距離が少なくとも2m以上確保できる場合には、マスクを適宜外すようにしましょう。マスク着用の場合は、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。2つ目は「エアコンの使用について」です。一般的な家庭用エアコンは、空気を循環させるだけで換気を行っていません。新型コロナウイルス対策の為には、冷房時でも窓を開ける等、換気を行う必要があります。換気により室内温度が高くなりがちなので、エアコンの温度設定を調整しましょう。3つ目は「涼しい場所への移動について」です。少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動しましょう。一方で、人数制限により屋内の店舗等にすぐに入ることができない場合は、屋外でも日陰や風通しの良い場所に移動してください。4つ目は「日頃の健康管理について」です。体温測定、健康チェックは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、熱中症を予防する上でも有効です。体調が悪いと感じた時は、無理せず自宅で静養するようにしましょう。

又、熱中症というと屋外のイメージがありますが、消防庁の資料によりますと発生場所の約4割は屋内です。家の中でじっとしていても室温や湿度が高いと、体から熱が逃げずに熱中症になる場合があるのです。特にのどの乾きや暑さを感じにくく、汗をかきにくい高齢者や、体温調節機能が未熟な子どもは、より注意する必要があります。周囲の方からも積極的な声かけが必要です。

577回「日本海溝・千島海溝沿い巨大地震」2020年6月6日OA

2020年06月06日 6:00 PM

東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝と千島海溝沿いを震源とする大地震の想定を内閣府の有識者会議が公表しました。津波想定の対象は北海道と青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県で、マグニチュード9クラスの巨大地震が発生すれば太平洋沿岸の広い範囲に大津波が到達するとしています。このうち日本海溝での地震はマグニチュード9.1と想定されていて、県内では大槌町、釜石市、大船渡市、それに陸前高田市で震度6強の強い揺れに見舞われるとされました。津波の高さは宮古市が29.7メートルで全体で最も高い想定です。その他は岩泉町が26.6m、山田町が21.9m、田野畑村が20.9m、釜石市が18.5m、大船渡市が16.2m、陸前高田市が12.5mなどとなっていて、県内の沿岸市町村に10m以上の津波が到達すると想定されています。宮古から北では地点によって東日本大震災の時よりも高い津波が到達する予想となっています。

各道県の具体的な浸水想定エリアも図面で示されましたが岩手県については今回公表が見送られました。内閣府は「沿岸市町村の復興まちづくりへの影響や住民に不安を与えるといった懸念を考慮した」と説明していて、県からも公表について慎重な判断をするよう要請があったということです。これについて武田良太防災担当大臣は会見で「できるだけ早く公表できるよう丁寧に説明したい」と述べ、県内の浸水想定エリアの公表に向け地元自治体と調整を進める考えを示しました。県内の浸水想定の公表が見送られたことについて達増知事は「国の検討の目的や浸水想定の前提条件に対する市町村の理解が得られていない中での公表は見送るべきではないかとの声が挙げられている。今後とも地元に十分な理解が得られるよう求めていく」とコメントを発表しました。

有識者会議では、最大クラスの地震の発生確率を求めることは困難であるが、過去に巨大な津波が約300年から400年間隔で発生していて、直近の17世紀の津波からの経過時間を考えると、「最大クラスの津波の発生が切迫している状況にあると考えられる」としています。東日本大震災の教訓は、防潮堤のようなハードだけで命を守るには限界があるということです。今回、県内の具体的な浸水想定エリアの公表は見送られましたが、津波から命を守る為には何よりも「逃げることが大事」ということを決して忘れてはいけません。

 

576回「フクシマの社会運動」2020年5月30日OA

2020年05月30日 6:00 PM

今日は福島大学・後藤康夫(やすお)名誉教授と、基礎経済科学研究所・後藤宣代(のぶよ)副理事長の2人が、福島などに暮らす執筆者と共に、原発事故後の社会運動について著し編集した、八朔社「21世紀の新しい社会運動とフクシマ」についてです。

スタンフォード大学科学・技術と社会プログラム副ディレクターの佐藤恭子さんは「低線量被ばくの問題をどう考えるか」という章で「トランス・サイエンス」という概念を取り上げています。提唱したアメリカの核物理学者ワインバーグは低線量被ばくの遺伝的影響をあげ、動物実験で「統計的に信頼できるレベルで確認するには80億匹のマウスが必要だ」として、「理論的には科学的に答えられるはずではあるが、現実には不可能であり、科学を超えるということでトランス・サイエンス的な問題」としています。そして「被ばくは無ければ無い方がよく、全く無害な閾値(いきち=最小の値)は無い、という見方が科学者の間の広いコンセンサス(=合意)にも拘らず、実害の可能性を否定し、不安の表明を『風評被害』や『福島の復興を妨げる』と批判するのも民主的議論の圧迫・抑圧である」と指摘しています。又、後藤宣代さんは「科学者間でも見解が異なる外部被ばく、内部被ばく、そして低線量問題が、許容線量をめぐる対抗として展開している。『フクシマの運動』は、政府や行政の一方的な許容線量設定に対して、住民サイドが自主学習を重ねて、声を上げ、行動し、その設定を覆しているというところに特徴がある」と考察しています。

NPO法人コモンズの中里知永(としのり)理事長は、フクシマの運動の一つ、「いわき放射能市民測定室たらちね」について取材しています。この認定NPO法人は、原発事故による被ばくの被害から子どもたちと地域の人々の健康と暮らしを守る為、地域住民が2011年11月に開所しました。食品、水、海水、土壌、資材、人体の放射線量を測定して公開したり、2017年には内科と小児科のあるクリニックを開設し、甲状腺エコー検査や尿中のセシウムの測定なども実施したりしています。不安を感じる人たちに寄り添い、正しい情報=放射線の数値を提供する住民サイドの活動は、これからも続きます。

 

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