気象と防災 マメ知識!

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気象と防災 マメ知識!

気象予報士・防災士の神山 浩樹(IBCアナウンサー)がお届けする5分間。

◆放送日時
毎週土曜日17:50~17:55
番組開始:2009年4月〜

◆出演
神山浩樹(IBCアナウンサー)

お便り・お問い合わせ

488回「台風21号の高潮」2018年9月15日OA

2018年09月15日 6:00 PM

9月4日、日本列島を襲った台風21号についてです。台風は正午頃、徳島県南部に上陸しました。台風の強さは中心付近の最大風速で階級が分けられています。風速33m以上44m未満が「強い」、44m以上54m未満が「非常に強い」、54m以上が「猛烈な」です。今回、海水温が高い為、中心付近の最大風速は45mと「非常に強い勢力」を保ったまま上陸しました。「非常に強い勢力」を保ったままの上陸は1993年の台風13号以来、25年ぶりです。台風は上陸後、近畿地方を縦断し、東日本から北日本の日本海を北上しました。県内は夜遅く、強風に見舞われ、最大瞬間風速は宮古市区界で30.2m、盛岡市で27.5mを記録し、県のまとめによりますと屋根が飛ばされるなどの建物被害はあわせて13件、延べおよそ8000戸で停電が発生しました。

今回の台風では、近畿地方や四国地方を中心に、高潮が発生しました。気象庁によると、大阪市で最大潮位329センチを観測し、1961(昭和36)年9月16日の第2室戸台風の時の過去最高潮位293センチを更新し、関西国際空港では滑走路やターミナル周辺が浸水しました。台風による高潮は「吹き寄せ効果」と「吸い上げ効果」の2つの要因が関係しています。「吹き寄せ効果」は、台風に伴う風が沖から海岸に吹き寄せられて、海岸付近の海面が上昇するものです。海面上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。特に奥ほど狭まっているV字型の湾の場合は更に海面が高くなります。「吸い上げ効果」は、台風が接近して気圧が低くなり海面が持ち上がる現象です。外洋では気圧が1ヘクトパスカル低いと海面は約1センチ上昇します。例えばそれまで1000ヘクトパスカルだった所へ、今回のように中心気圧955ヘクトパスカルの台風が来れば、台風の中心付近で海面は約45センチ高くなり、その周りでも気圧に応じて海面が高くなるのです。南にV字型に開いた大阪湾では、台風が西側を北上し南風が吹き続け、加えて強風によって発生した高い波浪が沖から打ち寄せ、吸い上げ効果も加わり、海面が一層高くなったのです。

台風による高潮は事前にある程度、予測できます。高潮によって海水が進入してくる時は、猛烈な勢いで流れ込んでくる為、発生してからでは避難が困難になります。早めの避難が必要です。

 

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487回「岩手のオーロラ」2018年9月8日OA

2018年09月08日 6:00 PM

もりおか歴史文化館のテーマ展「太陽と月、ときどき星」を拝見しました。江戸時代を中心とした天文現象の記録、描かれた太陽・月・星の姿を紹介しています。その中に今から約250年前、全国的に見えたとされる赤いオーロラの史料がありました。江戸時代後期の歴史書、盛岡藩士の「見聞随筆」で「1770(明和7)年秋、日にちは忘れたが、夜8時頃から空に突然『あかけ』が現れ、夜通し見えて、京の都では『北方の火事だ』と言い、江戸では『千葉や茨城のあたり』という人も多く、原因は分からず、日本国中、見えない所は無かった」と記述されています。

日本天文学会・天文月報1999年2月号によると、太陽活動の活発な時期には、日本のような低緯度地帯でもしばしば、北の空が暗い赤色に染まる巨大な幕のようなオーロラが観測されることがあり「低緯度オーロラ」と呼ばれているそうです。古い記録では、低緯度オーロラを赤い空気の気「赤気(せっき)」と表し、史料の中には「夜に北の空が火事のように赤くなり、白い大蛇のようなものが現れた」と書かれているそうです。興味深い話しです。

実は17年前の2001年、IBC宛てで、オーロラに関する葉書をいただいたことがあります。「47歳になる主婦ですが、玉山村出身の私が小学低学年の頃、オーロラを見た記憶があるのです。人に話してもなかなか信じてもらえないのですが、是非調べてもらえないでしょうか」探したところ、お葉書を下さった方が見た時期とほぼ一致するオーロラに関する記事が、1958(昭和33)年2月12日の岩手日報夕刊に掲載されていました。その前日の2月11日午後6時半から8時半頃までの間に、新潟から北の、北海道、東北、北陸、信越、関東の東日本各地にわたってオーロラを観測。赤い弓のような形で、一部では線のようになって脈打つように見えたという事です。このオーロラは大変規模が大きく、広範囲で天候に恵まれた為よく見えました。ラジオをお聞きの方の中でも、ご覧になった方がいらっしゃるかもしれません。人々が天文に思いを寄せた一端を感じられる、もりおか歴史文化館のテーマ展「太陽と月、ときどき星」は今月17日まで開かれています。

486回「特別警報と大雨情報の違い」2018年9月1日OA

2018年09月01日 6:00 PM

紫波町の「今日は特命競馬女子さん」から質問をいただきました。ありがとうございます。「『特別警報』と『記録的短時間大雨情報』についてですが、ラジオではよく数十年に一度と言われているようですが、やはりどこか違いがあるんでしょうか」一言で言えば、特別警報は「予想により発表するもの」で、記録的短時間大雨情報は「観測された雨量をお知らせするもの」です。

特別警報は、大雨の他にも、大津波等が警報の発表基準をはるかに超えることが予想され、重大な災害の起こる恐れが著しく高まっている場合に発表され、最大級の警戒を呼び掛けます。大雨に関する特別警報は、「数十年に一度の大雨となる恐れ」とお伝えしますが、基準は市町村毎に「50年に一度の雨量」が設定されていて、例えば48時間降水量が盛岡市で225ミリ、宮古市で284ミリなどです。数十年に一度と言いながら、大雨特別警報は毎年のように見聞きします。しかし気象庁によりますと「数十年に一度とは地域毎に見てのものであり、全国的に見た場合には、年に1~2回程度有るか若しくは無いかの頻度になります」ということです。

「記録的短時間大雨情報」は、「数年に一度程度」しか発生しないような短時間の大雨を、地上の雨量計で観測したり、気象レーダーと地上の雨量計を組み合わせて解析したりした際、各地の気象台が発表します。発表基準は、1時間雨量の歴代1位、又は2位の記録を参考に決めていて、岩手県の場合は1時間に100ミリの雨量です。記録的短時間大雨情報は、大雨警報を発表中、現在、降っている雨がその地域で、土砂災害や浸水害、中小河川の洪水の発生につながる稀にしか観測しない雨量であるということをお知らせします。特に土砂災害警戒区域や浸水想定区域などにお住まいの方は、地元市町村の避難情報を確認し、避難勧告等が発令されている場合には速やかに避難を開始して下さい。但し情報が発表された時点で既に屋外は猛烈な雨となっていることも想定されます。予め決めておいた避難場所まで移動することが逆に危険な場合、近くのより安全な場所や建物へ移動して下さい。

485回「ハザードマップ確認」2018年8月25日OA

2018年08月25日 6:00 PM

西日本豪雨で堤防が決壊し、広い範囲が浸水した岡山県倉敷市真備町では、高齢者を中心に多くの犠牲者が出ました。浸水した地域は、市が作成した洪水・土砂災害ハザードマップの想定とほぼ重なっていました。ラジオ番組でハザードマップの確認を呼びかけたところ、宮古の男性からお便りをいただきました。ありがとうございます。「神山さんの一声で4月に配布された総合防災ハザードマップを確認してみました。津波は一応、セーフ。洪水は2m~5m。避難勧告、指示が出たら即行動するようにします」HPで「宮古市総合防災ハザードマップ」を拝見しました。地震・津波や洪水・土砂災害など、災害が発生したときの避難場所や避難所、浸水等の想定区域、避難や備えの基礎知識などについてまとめられています。洪水の条件は「100年に1回程度の大雨により河川が氾濫した場合に想定される最大の浸水深をシミュレーション」とあります。県土整備部河川課によりますと「閉伊川流域では2日間で212ミリ、津軽石川では24時間で325.3ミリの降雨を想定」しているとのことです。宮古市だけではなく、お住まいの地域のハザードマップの確認が大切です。

国土交通省では、洪水時の避難で気を付けるべき事として「ラジオなどでの正確な情報収集と早めの避難」の他、「動きやすい服装」を呼びかけています。持ち物はリュックに入れて手は自由にすること、そして水が入ると重くなる長靴ではなく運動靴で逃げることを勧めています。氾濫した水は勢いが強く、水深が膝程度で大人でも歩くのが困難になります。緊急避難として、高い堅牢な建物に留まることも選択肢の一つです。又氾濫した水は茶色く濁っていて、水路と道路の境や、蓋が開いているマンホールの穴は見えません。やむを得ず水の中を移動する時は、棒で足下を確認するよう注意を促しています。

避難の際、心配なのが移動に時間がかかる「高齢者」などです。逃げるよう促しても「他人に迷惑をかけたくない」と自宅から出ず、避難の遅れに繋がる例を耳にします。命を守る為、早めに「共に避難する関係」を平時から地域で作り上げる必要があります。

 

484回「今夏の異常気象」2018年8月18日OA

2018年08月18日 6:00 PM

この夏は異常気象の連鎖というべき状態が続きました。気象庁は7月の西日本豪雨と、7月中旬以降の猛暑の特徴と要因について今月10日、取りまとめました。西日本豪雨の総降水量は四国地方で1800ミリ、東海地方で1200ミリを超える等、7月の月降水量が平年の2倍から4倍の大雨となる所がありました。豪雨をもたらした大規模な大気の流れの特徴は、上層を流れる2つの強い偏西風=ジェット気流の持続的な蛇行が関係しています。日本の東海上では亜熱帯ジェット気流が北へ大きく蛇行し続け、太平洋高気圧の日本の南東側への張り出しの一因となりました。又、寒帯前線ジェット気流が非常に大きく蛇行し続け、オホーツク海高気圧が日本の西側で非常に発達しました。この2つのジェット気流の蛇行が影響し、梅雨前線は西日本付近に4日間に亘り停滞し続けたのです。そして朝鮮半島付近では、亜熱帯ジェット気流が南に蛇行し気圧の谷となり、水蒸気の流入が強化され大雨をもたらしました。夏のユーラシア大陸上空では、亜熱帯ジェット気流の大きな蛇行がしばしば現れ「シルクロードテレコネクション」と呼ばれています。この夏は「シルクロードテレコネクション」がたびたび現れていて、6月下旬頃に発生した特に大きな蛇行は、関東甲信地方の歴代1位6月29日頃の早い梅雨明けをもたらしました。

7月中旬以降は、猛暑日や真夏日となる地点が多く、特に7月23日は埼玉県熊谷市で国内の統計開始以来最高となる41.1度など、各地で40度を超える気温が観測されました。岩手でも猛暑となり、一関では35度以上の猛暑日が7月だけで4日、30度以上の真夏日が21日と3週間も。盛岡では30度以上の真夏日が平年の6日を大きく上回る20日ありました。又大船渡では7月22日の最低気温が27.2度と観測史上一番高い気温を記録しました。背景には日本付近に張り出した2つの高気圧、太平洋高気圧と上層のチベット高気圧があります。気象庁はチベット高気圧が日本付近に張り出した一因も「シルクロードテレコネクション」と指摘しています。亜熱帯ジェット気流の蛇行は台風12号が本州に上陸後、西向きに進んだ一因とも考えられています。

互いに関連している豪雨と猛暑。今後も起こり得る為、岩手でも備えがますます重要になります。

483回「声かけで熱中症予防」2018年8月11日OA

2018年08月11日 6:00 PM

今日は環境省などが行っている「熱中症予防声かけプロジェクト」についてです。熱中症に特に注意が必要なのは、お年寄りです。患者のおよそ半数が65歳以上の高齢者です。炎天下だけではなく、室内でも夜でも多く発生しています。なぜ年配の方が患者になるのでしょうか。HPでは4つの要因を指摘しています。1つ目は「体内の水分不足」。水分量が若者と比べ低い為、脱水状態に陥りやすいのです。又、体の老廃物を排出する際、多くの尿を必要とします。2つ目は「暑さに対する調整機能の低下」。暑い時、体に熱がたまりやすく、若年者よりも循環系への負担が大きくなります。3つ目は「暑さを感じにくい」。体が出しているSOS信号に気づきにくくなっています。4つ目は「頑固・無理をする」。これは「周りに迷惑を掛けたくない」「体が冷えるのが嫌」「夏は暑いのが当たり前」等、無理をしたり、自分の生活スタイルを変えたりしないことが挙げられます。しかし身体が加齢で変化しているように、真夏日や熱帯夜の増加等、以前より夏は暑くなっています。今までと同じ夏の過ごし方では、対処しきれないことを理解する必要があります。

加えて子どもへの配慮も大切です。子どもの熱中症の特徴は大きく5つあります。1つ目は「大人より暑さに弱い」。特に乳幼児は汗をかく機能が未熟で、体に熱がこもりやすく、体温が上昇しやすくなります。気温が体温より高いと熱を逃がすことができず、反対に周りの熱を吸収する恐れがあります。2つ目は「照り返しの影響を受けやすい」。大人よりも身長が低い為、大人の顔の高さで32度の時、子どもの顔の高さでは35度ぐらいあります。3つ目は「自分では予防策が取れない」。特に乳幼児は、自分で水分を補給したり、服を脱いだりする等の暑さ対策ができないことも熱中症への危険を高めます。遊びに夢中になり暑さを忘れ、熱中症になる場合もあります。4つ目は「車内への置き去り」。冷房をつけていても、何かの拍子で切れることがあります。季節を問わず、わずかな間であっても車内に子どもだけを残さないで下さい。5つ目は「学校」。体育や部活動中だけではなく、遠足・登山等、スポーツではない学校行事でも発生します。

熱中症予防の為、家族や友人、近所同士で「水分を摂っていますか」「少し休んだらどうですか」等、声を掛け合うコミュニケーションが命を救います。

 

482回「西日本豪雨2」2018年8月4日OA

2018年08月04日 6:00 PM

岡山県は年間の降水量1ミリ未満の日数が多い、つまり傘の出番が少ない「晴れの国おかやま」として有名です。その地を先月、豪雨が襲いました。系列の取材団の一員として岡山県で取材にあたった佐藤将幸記者に現地の状況について聞きました。佐藤記者は、先月10日に岡山県倉敷市真備町(まびちょう)に入り、3日間、取材しました。

真備町内は岡山三大河川の一つ「高梁川(たかはしがわ)」とその支流である「小田川(おだがわ)」が合流する場所に位置しています。今回の豪雨災害では町の面積の4分の1にも及ぶ広範囲で浸水しました。小田川を中心に8か所で堤防が決壊していて、水が溢れたエリアは2つの川の合流点付近でした。なぜ合流点で大きな被害となったのか、河川工学が専門の前野詩朗(まえのしろう)岡山大学教授の現地調査に同行させていただきました。堤防上の叢は本来の川の流れとは逆方向、上流側を向いて倒れていました。前野教授はその様子から「小田川のバックウォーターにより、非常に危険な状態になった」と指摘します。「バックウォーター」とは川の合流する場所で一方の川が逆流する現象です。真備町の場合、高梁川の支流である小田川は流れが緩やかで、しかも合流点が湾曲している為、水が溜まりやすい地形になっています。大雨が降って水の量が多くなると緩やかな流れは行き場を失い逆流を始めます。逆流した水は段々と溜まっていき、溢れたり堤防を破壊したりします。これがバックウォーター現象です。土木学会のメンバーが住宅の壁や窓に残る泥の痕跡などの高さを測定。その結果、真備支所などがある町の中心部付近では深さ5メートルを超えた場所が東西3・5キロに及んでいました。このうち箭田(やた)地区では最も深い5・38メートルを観測した地点もあったということです。これは2階の軒下に達する高さで、浸水時、在宅の場合、屋根の上に逃げるしかありません。

岡山県では8月2日現在、死亡が確認された61人の内、51人が真備町で犠牲になりました。前野教授は、「バックウォーター現象は、川が合流する場所なら、どこでも起こり得る」と警告しています。県内にも川が合流するポイントは数多くあります。大雨が降った際は、このバックウォーター現象を思い出して、川の様子に注意することが大切です。

 

481回「西日本豪雨1」2018年7月28日OA

2018年07月28日 6:00 PM

今日は平成で最悪の被害となった、西日本を中心とした豪雨についてです。6月28日から7月8日までの総降水量が四国地方で1800ミリ、東海地方で1200ミリを超える所がありました。盛岡の雨と雪を合計した1年間の平均降水量は1266ミリですから、それを上回る雨が11日間で降った地域がある、ということになります。気象庁はこの要因について「多量の水蒸気が、東シナ海からと、太平洋高気圧を回り込む形で、西日本付近で合流し集中したこと」「梅雨前線による上昇流が例年に比べ強くかつ長時間持続したこと」更に一部では「線状降水帯による大雨もあったことによるものであった」と分析しています。

気象庁は岐阜県、京都府、兵庫県、岡山県、鳥取県、広島県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県の1府10県に「特別警報」を発表し最大限の警戒を呼びかけました。「特別警報」は、予想される現象が特に異常である為、重大な災害の起こる恐れが、著しく大きい旨を警告する防災情報です。しかし今回200人以上が犠牲になってしまいました。命を落とした方の多くは「高齢者」でした。岡山県によりますと22日現在、身元が確認された死亡者61人の内8割、49人が65歳以上でした。自力での避難が困難だったり、自治体の情報が十分伝わらなかったりして、逃げ遅れた可能性があるのです。

今回の豪雨を受けて岩手大学の齋藤徳美名誉教授は「気象庁が多種多様な情報を出しているが、受け手側に伝わらないと意味が無い」と指摘。また、避難に関する課題として「7万人、8万人に避難を呼びかけても収容する場所が果たしてあるのか。しかも中山間地では、危険な山道、加えて夜間に移動するのは無理。集落の中で、一番、安全な家に身を寄せるしかないのでは」と具体的な避難行動を提言しています。又「災害弱者はお年寄り世帯だけではない。家族と生活しているものの、仕事等に出かけ、日中は1人で暮らすお年寄りのような『隠れ災害弱者』の命を守る為の方策も重要だ」と課題を挙げています。適切な場所に、適切に避難するにはどうすれば良いのか、自然災害から命を守る為に、危険を共有し、家族や地域で話し合うことが急務です。

 

480回「いいたて雪っ娘」2018年7月21日OA

2018年07月21日 6:00 PM

先月14日に訪れた福島県飯舘村についてです。去年3月31日、放射線量が高い一部地域を除いて避難指示が解除されました。人口5777人の内、6月1日現在、村内に住んでいるのは419世帯、832人で、その他の村民は県の内外に避難したままです。去年春には、主要野菜の出荷制限が解除され、村の農業は復活への第一歩を踏み出しました。

この日、「いいたて雪っ娘(こ)かぼちゃプロジェクト協議会」会長の渡邊とみ子さん(64)を訪ねました。福島市出身で結婚を機に飯舘村に住みました。村で特産品を作る話が持ち上がった際、飯舘村出身の菅野元一(かんのもといち)さんが品種改良したかぼちゃが素材として取り上げられ、その研究会の会長に就任。栽培から加工、販売までの6次産業化を目指し2007年に加工施設を作りました。「いいたて雪っ娘」と名付けられ品種登録が決まる直前の2011年、東日本大震災の原発事故が発生、全村避難となってしまいました。活動を休止せざるを得ない状況でしたが、ここまで育んできた「いいたて雪っ娘」を守る為に、避難先の福島市で土作りから栽培を再開。先が見えない状況の中「かぼちゃが文句も言わずに芽を出す姿に励まされ、泣きながら作業した。負けちゃいられないと思った」と当時を振り返ります。全国から支援を受け継続的な生産環境が整い、仲間と共に福島市内に農産物加工所を作り、又、去年からは復興のシンボルとして飯舘村での栽培を再開しました。

リフォーム中の飯舘村の自宅と福島市を往復する現在は、福島市で75アール、飯舘村で80アールの畑で育てています。渡邊さんは、飯舘での栽培を通して、逞しく成長するのは先人達が作った肥沃な土地があるからだ、と改めて気付きました。冬越しできる「いいたて雪っ娘」は、白く輝く薄皮に包まれ、濃い黄色の果肉で、ほっくりした食感から生まれる、やさしく濃厚な甘さが特徴です。現在、マドレーヌ、カレー、スープなどにも加工し販売しています。渡邊さんは「営農が再開され、復興の歩みを実感できるようになった。自然豊かな飯舘村を見てほしい」と、マルチの間から顔を出した「いいたて雪っ娘」の双葉に目を細めていました。

 

479回「震災遺産」2018年7月14日OA

2018年07月14日 6:00 PM

今日は福島県の「震災遺産」についてです。福島県立博物館を事務局としたプロジェクトでは、震災が産み出したものを、次世代に伝え遺すべき歴史的資料、すなわち震災遺産と位置付け、その保全を目的に2014年度からフィールド調査や資料収集に取り組んでいます。「震災の時刻で止まった時計」「安定ヨウ素剤」「配達されなかった新聞包み」など登録された2036件は、原則として福島県立博物館に運ばれ保存処置されました。その内、現地保存された震災遺産が、先月13日に訪れた福島県富岡町に展示されていました。双葉警察署脇、児童公園の一角にあったのは津波で被災した一台のパトロールカーです。ベース車両はトヨタ・クラウン。上部はすっかり無くなり、赤茶けたフレームはへし曲がり剥き出しで、水の力でここまで車が破壊されるのかと身震いします。花や飲み物が捧げられた隣には、展示された経緯がパネルに記されていました。

車両は2003年に双葉警察署に配属後、富岡町や双葉郡内の住民や地域の安全を守る多くの業務に携わり、走行距離は29万2000キロを超えました。2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震発生後、双葉警察署から増子洋一警視(当時41歳)と佐藤雄太警部補(当時24歳)がこのパトカーで富岡町仏浜地内に急行し、町民らの避難誘導を行いました。避難した住民の中には、駆け付けたこのパトカーと冷静に避難誘導をしていた2人の姿を鮮明に覚えている人が多くいました。その後パトカーは2人の警察官と共に津波に遭い、多量の土砂が流入した車両は子安橋のたもと付近で見つかりました。増子警視は地震から約1か月後に陸地から30キロ離れた沖合で発見されましたが、佐藤警部補は行方不明のままです。

富岡町ではあの日、震度6強の揺れを観測、21.1mを超える津波が襲い、町内で直接亡くなった人が18人、震災後、体調を崩すなど関連して亡くなった人は425人に上ります。カーポートの下に設置されたこのパトカーは、津波が近づく中、使命感と勇気を胸に多くの住民を守る為に職務を全うした人達がいたこと、そして平穏な町を襲った地震や津波の威力の凄まじさを、静かに語り続けます。

 

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