気象と防災 マメ知識!

気象と防災 マメ知識!

気象予報士・防災士の神山 浩樹(IBCアナウンサー)がお届けする5分間。

◆放送日時
毎週土曜日17:50~17:55 【再放送】毎週日曜日18:50~18:55
番組開始:2009年4月〜

◆出演
神山浩樹(IBCアナウンサー)

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437回「夏の天候振り返り」2017年9月16日OA

2017年09月16日 6:00 PM

この夏の天候について振り返ります。ギラギラした陽射しを感じることがほとんどなく、気が付くと秋風が吹いていた県内。「今年は夏が無かった」という声を耳にしますが、確かに結果として梅雨明けが特定されませんでした。気象庁は6月21日ごろの梅雨入り後、8月2日「東北地方は梅雨明けしたとみられる」と発表しました。しかし発表とは裏腹にオホーツク海高気圧が発生、県内は低温と日照不足が続きました。盛岡地方気象台によりますと、8月の県内の日照時間は釜石、千厩、大船渡、山田、岩泉町小本の5地点で観測史上最低を記録しました。釜石の51.7時間は平年の33.7%、大船渡の57.5時間は平年の38.6%しかありませんでした。又、8月の平年の真夏日日数、盛岡10.9日、宮古6.5日に対して、今年は盛岡が3日、宮古は1日しかありませんでした。そして9月になり気象庁は東北地方の梅雨入りについて「7月1日ごろ」、又梅雨明けについては「時期を特定できなかった」と発表しました。東北地方で梅雨明けが特定できなかったのは2009年以来で、1951年の統計開始以来、東北北部では6回目です。

それでも6月から8月の夏の3か月で見ると、統計上、冷夏だったわけではありません。この夏の盛岡の平均気温は21.5度、宮古は19.6度と共に「平年並み」でした。又、真夏日日数は盛岡18日、宮古9日、とこちらもほぼ「平年並み」でした。8月の不順な天候が印象に強かったので、夏をまとめて「平年並み」と聞くと不可解かもしれませんが、6月は中旬以降「日照時間が多く」、7月は上旬から中旬は「高温」で「日照時間が多かった」為、8月の不順な天候をカバーした形です。

今年のような8月のヤマセについて気になる資料があります。仙台管区気象台「東北地方の気候の変化」によりますと、本来、6月から7月を中心としたヤマセについて、今世紀末は「地球温暖化の進行により7月から8月のヤマセ発生頻度が大きくなる可能性が示されている」とのことです。現在進行形の温暖化の影響が懸念されます。

 

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436回「身近な動物による火災」2017年9月9日OA

2017年09月09日 6:00 PM

今日は身近な動物が引き起こす火災についてです。NITE(ナイト)=製品評価技術基盤機構によりますと、平成24年度から28年度の製品事故情報の内、ペットによるものが26件、ネズミやゴキブリなど小動物や害虫の事故52件、計78件ありました。その内、約7割の56件が火災に至っています。ペットが引き起こした事故の中には、去年4月、埼玉県で、飼い主が不在時に、室内で飼っていた猫がガスこんろのスイッチに触れ、こんろが点火し、製品とその周辺を焼いたという例があります。また害虫の事故では、平成25年3月、神奈川県で、エアコンの中に侵入したゴキブリが内部の電気部品に接触しトラッキングを起こし火災が発生。使用者はやけどをして重傷となりました。

東北地方でも5件の事故が報告されています。岩手県ではありませんが、火災が2件、軽傷が1件です。この内、平成26年10月、青森県で起きた事例では、80代女性宅でLPガス用のゴム管をネズミがかじったことによりガスが漏洩、使用中のガスこんろの火に引火して出火しました。平成26年12月、福島県では、20代女性宅で、電気脱臭装置を使用中、室内で飼っていた犬が電源コードを噛んだ為、被覆が損傷してスパークし出火しました。又、平成27年6月、宮城県ではシャワーを使用したところ、異音がし、ガスふろがまが変形しました。機器内にクモの死骸や巣が確認されたことから、クモの巣により給排気不良となり、点火スパークが異常燃焼し、天板が変形したものと推定されます。

NITEでは「出かける際はペットをケージに入れておく、スイッチが入らないようロックをかける、ガスの元栓を閉める、電気製品はプラグを抜く」「小動物や害虫の侵入する恐れがある製品の周りはこまめに清掃し、動作不良や焦げ臭いなどの異常が見られた際は点検を受ける」など注意を促しています。

 

435回「震災を伝える仙台の施設」2017年9月2日OA

2017年09月02日 6:00 PM

今日は仙台の震災を知り、学ぶ場「せんだい3.11メモリアル交流館」についてです。仙台市の南東部、若林区にあり、1階は交流スペース、2階は展示室・スタジオ、3階は屋上庭園になっています。宮城県によると、東日本大震災では、宮城野区で震度6強、若林区などで震度6弱を観測、9mの大津波などにより950人が亡くなりました。

建物1階で目を引くのは縦3m、横5m程の壁一面にある「仙台市東部沿岸メモリアル立体地図」です。仙台平野周辺の地形と東日本大震災における津波浸水域の関係を表しています。太平洋を下にした地図で、壁面の上から山並み、仙台平野、松島湾・仙台港から真っ直ぐな海岸線となっています。立体地図のほぼ中央に仙台東部道路が横断していて、その海側が薄い水色・ベージュで浸水域を表しています。平野を広範囲に亘り津波が襲ったことが見て取れます。

2階の展示室では、震災被害や復旧復興の状況などを写真やパネルで伝えています。床と机の天板には、津波により被災した小学校の体育館の床材が使われています。パネルで目に留まったのは、2011年3月11日午後4時9分に上空から撮影された荒浜小学校の写真でした。海から約700mに位置する4階建ての校舎、その2階部分まで灰色の海に浸っています。緑の屋上に小さく映っているのは、孤立した児童・近隣住民320名で、助けを求める叫び声が聞こえてくるようです。見入っていると「小学校に避難した後、家にカギをかけに行ったり、荷物を取りに戻ったりして亡くなった人がいたんです」と、静かに教えてくれた女性がいました。荒浜地区で自宅を失い、仮設住宅暮らしの経験があるというフロア常駐のスタッフでした。家族は無事でした。震災当初、同じ地区で亡くなった192名を思い、生き残った罪悪感で精神的に辛かった時期もあったと言います。しかし今は「亡くなった方の分まで生きる」と考え「津波で2度と自分のような思いをしてほしくない」と経験を伝え続けています。「せんだい3.11メモリアル交流館」は、仙台駅から地下鉄東西線で13分、荒井駅の構内にあります。

434回「高性能レーダー」2017年8月26日OA

2017年08月26日 6:00 PM

今日は、集中豪雨や局所的な大雨による災害の防止に役立てようと国土交通省が設置した高性能レーダ雨量計「XバンドMP(マルチパラメータ)レーダ」についてです。盛岡市下厨川の北上川ダム統合管理事務所に備えられ、今月15日から運用が開始されました。

レーダは簡単に言えば、電波を利用して雨の強さと範囲を観測する装置です。従来のレーダでは「水平」の電波のみを送受信していました。新しいレーダでは「水平」と「垂直」の2種類の電波を送受信することで、上空の雨粒の形状などを把握することができます。例えば集中豪雨の場合、落下する雨粒は大きくなり、空気抵抗を受けつぶれた形になります。その様子から雨量を推定し、高精度な観測が可能になるのです。加えて、改良された従来のレーダと組み合わせることで、雨の様子をこれまでよりきめ細かく、短い時間間隔で観測できるようになりました。従来は1キロ四方で、5分毎の観測データを5~10分後に配信していました。今後は250m四方で、1分毎の観測データを1~2分後に配信することが可能になります。急激に発達する雨雲を捉えることができ、防災や避難行動に役立つことが期待されます。XバンドMPレーダの観測範囲は、盛岡市を中心に南は北上市、北は二戸市まで半径80キロで、去年、台風10号で甚大な被害を受けた岩泉町の雨量もつぶさにキャッチします。その他の県内のエリアも、半径300キロを観測する北海道や山形の従来のレーダの改良型でカバーしています。

インターネットで公開されているこの情報を私も拝見しました。リアルタイムの雨の状況を市町村別で確認でき、しかも役場や幹線道路、鉄道などランドマークが透けて見えるので知りたい場所の様子がよくわかり、使いやすい画面だと感じました。「XバンドMPレーダ」による国土交通省の雨量の情報は、アルファベットで「XRAIN」と検索し、各家庭でも御覧になれます。

 

433回「活断層の地震に備える」2017年8月19日OA

2017年08月19日 6:00 PM

今日は文部科学省と気象庁が合同で作成した「活断層の地震に備える~東北地方版」についてです。地球の表面は十数枚の巨大な板状の岩盤(プレート)で覆われており、それぞれが別々の方向に年間数センチの速度で動いています。日本列島周辺では、複数のプレートがぶつかりあっていて、岩盤の中に大きなひずみが蓄えられています。その為、海のプレート境界やプレート内の他、深さ約20キロより浅い所でも多くの地震が発生します。過去に繰り返し地震を起こし、将来も地震を起こすと考えられている断層を「活断層」と言います。日本の周辺には約2000もの活断層があり、それ以外にもまだ見つかっていない活断層が多数あると言われています。

県内の主要な活断層は、矢巾町西部から奥州市胆沢区南部にかけてほぼ南北に延びる、最大M7.8程度が予想される「北上低地西縁断層帯」。更に西側にあり、同時に活動した場合M7.5程度の「雫石盆地西縁-真昼山地東縁断層帯」。青森県五戸町から葛巻町北部にかけて、最大M7.6程度の「折爪断層」があります。

陸域の浅い地震では、緊急地震速報が間に合わないことがあります。突然の揺れに備えて、自宅や学校・職場など建物内で、なるべく物を置かない安全なスペースを作っておくことが大切です。もし活断層の地震が起きたら、揺れの大きかった場所ではその後の大きな揺れに警戒が必要です。地震によって傾いたり倒壊したりした建物や塀など、危険な所には近づかないで下さい。一般的には、規模の大きい地震ほど余震は長く続きます。地震の活動は盛衰を繰り返すことが多いので、地震回数が一時的に減っても油断できません。規模の大きな余震が発生すると、再び地震回数が増える場合が多く、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震でも余震の発生がやや落ち着いてきた後に、再び地震回数が増加しました。「活断層の地震に備える~東北地方版」は気象庁のHPで御覧になれます。

 

432回「増加する大雨」2017年8月12日OA

2017年08月12日 6:00 PM

「最近、雨の降り方が変わってきた。降らない時は全然降らない、降る時は一度に大量に降るような印象だ」という声を耳にします。実際はどうなのでしょう。気象庁が1901年から集計している全国51地点の降水量データの内、1日の降水量100ミリ以上及び200ミリ以上の日数について見てみます。20世紀初頭の30年間と最近30年間を比較すると、100ミリ以上の日数は約1.2倍、200ミリ以上の日数は約1.4倍に増えています。一方、1日の降水量1ミリ以上の日数は減っていて、大雨の頻度が増える反面、弱い降水も含めた雨の日数は減少する特徴を示しています。また1976年から全国約1300か所のアメダスで観測された1時間降水量50ミリの「非常に激しい雨」及び80ミリ以上「猛烈な雨」の発生回数も長期的には増加傾向です。先ほどの実感に近い結果と言えます。

しかしエリアを絞ると、変化傾向が見えない点もあります。仙台管区気象台がまとめた「東北地方の気候の変化」によりますと、120年以上の観測記録が残る青森、秋田、宮古、石巻、山形、福島の6地点の日降水量70ミリ以上の年間日数について、20世紀初頭の30年間には平均1.1日でしたが、最近30年間は平均1.5日に増えています。ただ年毎の変動が大きく有意な変化傾向は見られませんでした。東北地方のアメダス164地点の1時間降水量50ミリ以上の「非常に激しい雨」の年間発生回数は増加傾向が明瞭に現れています。1979年から1988年には平均5.2回でしたが、2007年から2016年には10.2回と倍増しています。また日降水量100ミリ以上の大雨については、1979年から1988年には平均68.6回が2007年から2016年には96.1回に増えていました。ただこちらも年毎のばらつきが大きく、ここ30年あまり統計的に有意な変化傾向は見られませんでした。

気象庁では「これらの変化は地球温暖化の影響の可能性があります。しかしアメダスの観測期間は約40年と短いことから、地球温暖化との関連性をより確実に評価する為には更なるデータの蓄積が必要」としています。

431回「紫外線とオゾン層」2017年8月5日OA

2017年08月05日 6:00 PM

気象庁や環境省の資料によりますと、太陽からの紫外線の内、UV-Aは多くが地表に到達します。UV-Bほど有害ではありませんが、長時間浴びた場合の健康被害が懸念されています。UV-Bは、ほとんどがオゾン層に遮られますが、一部は地表へ到達し皮膚や眼に有害です。紫外線の季節変化について「5月に最も多い」「5月の紫外線は真夏とほぼ同じ」と言われますが、これはUV-Aと考えられます。UV-Bは7月から8月が最も多くなります。UV-Bを吸収する上空のオゾン量が日本付近では春に多く、夏から秋にかけて少なくなるからです。気象庁では、オゾン層と密接な関係があり生物に有害なUV-B領域の紫外線を観測しています。

さて昔と比べて紫外線量は増え、オゾン量は減っているのでしょうか。札幌、つくば、那覇の国内3地点の地表に到達する紫外線量は、1990年代はじめの観測開始以降いずれも増加傾向。一方、この期間のオゾン量は、1990年代半ば以降、緩やかに増加しています。オゾン量が増えれば紫外線量は減るはずですが、増加傾向を示すのは、紫外線を散乱・吸収する大気中の微粒子の減少などの影響が考えらます。1989年発効のモントリオール議定書によりフロン等のオゾン層破壊物質の生産と消費が規制された結果、1990年代半ば以降、大気中のフロン等の濃度はほぼ横ばいかゆっくりと減っています。WMO(世界気象機関)などが発表した科学的評価によると、現在の規制が守られた場合、オゾン層の破壊が少なかった1980年のレベルまでオゾン層が回復する時期は、中緯度帯と北極では2040年代、南極ではそれよりいくらか後になると予測されています。

紫外線の浴びすぎは、日焼け、しわ、シミ等の原因となるだけではなく、長年浴び続けていると、皮膚がんや白内障等を引き起こすことがあります。しかし紫外線は悪い影響ばかりではなく、カルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンDを皮膚で合成する手助けもします。正しい知識を持ち、紫外線を浴びすぎないよう、上手に付き合っていくことが大切です。

430回「線状降水帯」2017年7月29日OA

2017年07月29日 6:00 PM

ラジオネーム蜂巣歌州平(はちすかくにへい)さんから質問をいただきました。ありがとうございます。「九州北部豪雨の原因は、線状降水帯と言われています。広島土砂災害や関東・東北豪雨も原因は『線状降水帯です』と説明されていますが疑問があります。広島土砂災害や関東・東北豪雨や平成25年8月秋田・岩手豪雨は以前『バックビルディング現象』と言っていた筈。バックビルディング現象と線状降水帯は、同じですか?それとも違うものなのか?教えてほしいです」。

一言で言えば「『線状降水帯』の形成過程の一つが『バックビルディング型』」です。気象研究所や防災科学技術研究所によりますと、線状降水帯の形成過程は、線が切れたような「破線型」ビルが林立するように積乱雲が形成される「バックビルディング型」面が割れたような「破面型」「埋め込み型」の4つのタイプがあり、日本での集中豪雨をもたらす線状降水帯の大半はバックビルディング型と言われています。バックビルディング型は線状降水帯の移動方向に対して、後方に新しい積乱雲が次々と形成され、線状降水帯と一緒になることで長時間維持されます。

「平成29年7月九州北部豪雨」では5日から6日、対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって、大気下層に大量の暖かく湿った空気が流入しました。又、上空には平年よりも気温が低い寒気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となっていました。冷たい空気と暖かく湿った空気の境界付近で積乱雲が次々と発生。上空の寒気の影響でそれらが猛烈に発達し、東へ移動することで細長い線のような降水帯が形成・維持され、同じ場所に強い雨を継続して降らせました。福岡県朝倉市では1時間に129.5ミリの雨量を観測し、24時間降水量は516ミリに、大分県日田市では1時間に87.5ミリ、24時間降水量は336ミリに達しました。線状降水帯は発生する時刻と場所を事前に予測するのは難しいのが現状です。自分の住まいが土砂災害や洪水の危険が無いか確認し、避難行動について想定しておくことが必要です。

 

 

429回「やや強い風」2017年7月22日OA

2017年07月22日 6:00 PM

陸前高田の方から気象に関して質問をいただきました。ありがとうございます。「今日(6月22日)の天気予報は『風がやや強く』との事でありますが、『やや』はどの程度の風なのでしょうか。沿岸南部の今日の風は、とても強いのです。通常は何メートルの風が吹くと警報になるのでしょうか。今日は通常でも10m以上は吹いていると思いますが」ということです。

気象庁の風の強さに関する用語によりますと、やや強い風は「風速10m以上15m未満」です。風に向かって歩きにくく、樹木全体が揺れ始める吹き方です。この日は全域に強風注意報が出されていました。平均風速が10m以上の際に出されます。陸前高田市高田町内に設置されているアメダスの観測記録では、この日、西北西の風、最大風速7.3m、最大瞬間風速15.4mでした。実際は、土地の高低差、遮る物の有無などによっては、もっと風の強い場所もあったと思われます。基準通りに強風注意報が出され、実際、それだけの強さの風が吹いていました。しかし「やや強い風」の「やや:いくらか、少し」という言葉のニュアンスと体感とでは違和感があったのかもしれません。

続いて警報に関してですが、強風注意報よりも更に強い風が予想される場合、暴風警報が出されます。その基準は平均風速20m以上で、何かにつかまっていないと立っていられず、飛来物によってケガをする恐れもある非常に強い風です。風向・風速は絶えず変化していて、一般的には観測時刻の前10分間の測定値を平均し、その時刻の平均風向・平均風速としています。瞬間的には、予想される風速の1.5倍から2倍ぐらいの突風が吹くことがあります。例えば台風等で最大風速20mと発表された場合はその2倍の40m程度の走行中のトラックが横転するような突風が吹く恐れがあります。警報が出るような際は、家の周りで飛ばされそうな物がないか、チェックし早めに備えることが必要です。

428回「飯舘村」2017年7月15日OA

2017年07月15日 6:00 PM

今日は福島県飯舘村について取り上げます。阿武隈山系北部の高原に開けた、飯舘牛やトルコギキョウなど花卉が特産の村です。東日本大震災では震度6弱の揺れに見舞われ、その後、原発事故で計画的避難区域に指定。それまでの暮らしが断ち切られ震災関連などで43人が亡くなりました。

今年3月31日、帰還困難区域となっている一部地域を除いて避難指示が解除されました。村の人口6000人の内、224世帯437人が戻り暮らしています。村民の約9割は県内、それ以外は県外に避難したままです。村民の半分3300人余りが生活している福島市。工業団地の一角にある松川仮設第一住宅を訪れました。最大117世帯が住んでいましたが、復興公営住宅に入居したり、自宅を再建したりして、現在40世帯にまで減りました。アスファルトの広場では、70代80代を中心に約30人がボッチャというスポーツに興じていました。赤いボールを転がし、笑い声が絶えません。

この日、広報に掲載する住民の笑顔を撮影する為、カメラマンと共に訪れていたのは飯舘村役場の木幡貴彦(こわたたかひこ)さんです。南相馬市出身、33歳の木幡さんは、盛岡大学を卒業後、飯舘村の幼稚園教諭になりました。震災後2014年までは仮設の幼稚園で働いていましたが、その後は広報を担当しています。4年程前、木幡さんがショックだったことがあります。園で初めて担任し小学生になった男の子に「先生の子どもの頃は放射線量を気にして生活しなくて良かったね」と言われたことでした。故郷からの避難を余儀なくされた子ども達の心理的負担は相当なものだったのでしょう。先月24日にはふるさと教育の一環で、村外の仮設小学校に通う全児童が、村の3校それぞれの校舎を見学しました。震災後、静まり返った学校に子ども達がいる当たり前の光景に、木幡さんは胸が熱くなったと言います。来年度には村内で学校が再開します。子育て世代がどれだけ村に戻るのか、避難を続ける家庭が多い中での苦渋の決断です。「元通りの復旧ではなく、新しい一歩を踏み出してほしい」、木幡さんは新しく整備される学校と、村の未来に期待を寄せています。

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